全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

文字の大きさ
上 下
95 / 171
第二章 ― 遥斗 ―

連休明け①

しおりを挟む
 月曜日、早くに目が覚めてしまって、仕方なく起きる。
 着替えて、壁際のマットに座ってスケッチをしていたら、元気溌剌の優がやってきた。

「おはよーございます!」
「おはよう」

 挨拶を返したが、優は俺を探してキョロキョロしたあと、見つけると、はっと目を見開いた。
 慌てて駆け寄ってきて、俺のそばにしゃがむと泣きそうな顔をした。
 俺はよっぽどひどい顔をしていたのだろう。見てわかるほどに。

「……遥斗先輩、連休はバイトって言ってませんでした?」
「初日にクビになった」

 投げやりに言うと、優は目を瞬いた。

「え、どうして?」
「俺目当ての女同士でトラブルがあったんだ。もう何度も同じようなことがあるから、店としても限界だと言われて」
「そんな……! 遥斗先輩は悪くないじゃないですか!」
「店長も謝ってくれたけどな。まぁ、よくあることだ」

 感情を消して言うと、優は自分のことのように怒ってくれる。
 しかも、罪悪感を抱いてしまったようで、瞳を揺らした。
 様子を見に来ればよかったなんて、思っているんだろう。
 優がそんなことを思う必要はないのに。
 お前は十分よくしてくれている。

「俺も油断していたのが悪い。いつもはもっと対策を立てていたのに」

 そうなんだ。いつもだともうちょっとこうなった場合どうするかとか、考えていたはずなのに、余計なことで頭がいっぱいになっていた。

 そういう意味ではお前のせいだ、優。

「先輩、お弁当です。食べてください」

 優が差し出した弁当に目が吸い寄せられる。

「ありがとう」

 お礼を言って受け取ると、さらに優はカラフルな紙袋を差し出してきた。

「あと、おみやげです。デザートに食べてくださいね」

 デザートというからにはお菓子なんだろう。
 お菓子は日持ちがするものが多くて助かる。

 優はにっこり笑って「じゃあまた帰りに来ますね」と部屋を出ていった。


 俺は震えそうになる手で弁当の蓋を取る。
 まずは胃がびっくりしないように、おにぎりに手を伸ばす。
 一口食べて、じっくり噛む。

「甘い……」

 米がやけに甘く感じた。
 次は豚の生姜焼き。
 肉が食べたかった。
 甘辛いタレがとても美味しい。おにぎりに合う。

 俺は弁当を少しずつ食べた。
 量はあまり食べられない。
 胃が満たされると猛烈に眠くなった。
 俺は食べては寝て食べては寝てを繰り返し、ようやく夕方に完食した。




 栄養が行き渡ると身体のだるさは少し取れて、俺はいつもの場所で絵を描いて優を待つことにした。
 あまり心配をかけたくないから。
 さすがに、立っているのはしんどいから座りながらだが。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...