全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第二章 ― 遥斗 ―

知られたくなかった事実①

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 ゴールデンウィーク直前の水曜日、夕方早くに真奈美が来て、唐突に「抱いて」と言ってきた。
 俺は……動揺した。
 そのために真奈美は弁当を毎日用意してくれているのだから、当然俺には拒否権はない。

 ドアに鍵をかけて、壁際のマットのところに連れて行く。
 押し倒して服を脱がせ、その身体を撫で回し、淡々と愛撫する。
 俺にとってはこれは作業だ。

 真奈美が俺のシャツに手を伸ばした。

「遥斗も脱いでよ」
「いやだ」

 いつも俺は脱がない。貧相な身体を晒したくないし、肌が触れ合う部分は最小限でいい。
 その手を払うとズボンを下着ごとずらして、真奈美が用意したゴムをつける。
 すでに潤っていたところに身を沈めると、すぐ動き始めた。
 真奈美が嬌声をあげる。
 彼女は喘ぎながらも、ふっと笑って言った。

「あっ……ふふっ、遥斗、ん……早く終わらせようと、してるでしょ? んっ……あの子が、来るから?」

 ……くそっ。

 図星を刺されて、顔をしかめる。
 きっと優は俺の噂は知っているだろう。
 それでも、こんな俺を見られたくない気持ちがあった。
 優が来るようになって、おかしくなっていた感覚がすっかりまともに戻されてしまったようだ。
 つらくなるだけだというのに。

「……余裕だな、真奈美」
「え、あっ、あんっ、ちょ……あっ、あ、あ、……」

 八つ当たりするように、真奈美に腰を打ちつけた。



 真奈美が帰ってしばらくして、優が来た。

「お疲れ様でーす。写真を撮っていたら、こんな時間になっちゃった」と明るく言うが、目を合わせない様子から、バレたと思い、気持ちが沈む。

「明日はお休みですね。また明後日来ますね! さようなら」

 一方的に告げると、優は帰っていった。

(終わった……)

 俺の頭に浮かんだのはその言葉だった。
 優は俺を軽蔑して、もう来なくなるだろう。
 あの健全極まりないやつがこんなこと許さないだろうから。
 でも、自分がなんでこんなにショックを受けているのかわからなかった。
 たかが数週間前に出会ったばかりのやつに、なぜここまで動揺させられているのか。

(……あいつがぐいぐい入り込んでくるのが悪い)

 心の中に居座って、強ばっていたところを解きほぐした。まともな感覚を取り戻しても痛いだけなのに。
 なんてことをしてくれたんだ。麻痺したままでよかったのに。
 これからの日々を俺はどう耐えればいい?

 結論の出ない思考をぐるぐる繰り返しながら、休みの日を過ごした。
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