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第二章 ― 遥斗 ―

味わう②

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「遥斗先輩、同好会できましたよ!」

 夕方になり、優が元気よく入ってきた。

 もうできたのかと驚いていたが、顔には出てなかったようで、「もー、すごいとか早いとか言ってくださいよー」と優は膨れた。

「それで、たまにこのプリンターを使いに来ますが、大丈夫ですか?」

 心配そうに「お邪魔じゃないですか?」と聞いてくる優に、「今さらそれを聞くか?」と返したら、見るからにしおれて「すみません……」と謝られた。
 さっきまでのテンションが嘘のように、優はショボンと俯く。
 突っ走りすぎたと反省しているらしい。

「勝手にすればいい。これから写真同好会の部屋になるらしいし」

 昨日、真奈美に言いかけたように、別に放課後の1、2時間にぎやかになるだけだ。気にならない。

 そう言うと、優はパアっと顔を輝かせて、「ありがとうございます!」と弾んだ声をあげた。

 笑ったり落ち込んだり、また笑ったり、忙しいやつだな。
 なんとはなしに優を見ていると、そのまま、鼻唄でも歌いそうなほどご機嫌で、パソコンを立ち上げた。

「もしかしてもうパスワードを入手したのか?」
「はい!」 
「本当にすごい行動力だな…」 

 普通に感心する。
 優が作業を始めたので、俺もまた絵を描き始めた。

 機械音がして、ふと優の方を見ると、プリンターで写真を印刷していた。
 彼女の撮った写真はどんなんだろうと気になって、そばに行ってみる。

 朝焼けの写真、街を眺める俺の横顔の写真、屋上からの街並み、桜吹雪が舞う写真、この部屋で絵を描いている俺の写真。

「へぇ、なかなかいいじゃん」

 特に朝焼けの写真は、空から全面でそこに俺の影が伸びているおもしろい構図だ。
 でも、あの輝きを写し取れたらもっとよかったのにと言うと、優はパソコンを操作して、画像を調整した。
 一瞬で鮮やかな色が蘇る。

 写真ってそんなことができるんだな。
 絵と全然違う。
 そんなことを思っていると、「奥が深いんです」と優が笑った。

 桜の花びらが舞う写真を眺めていると、「きっと新緑の頃も綺麗ですよ。遥斗先輩、行きません?」と唐突に誘われた。

「ここの新緑を絵に収めたくありませんか?」

 青々とした新緑の色は好きだ。
 もう一度桜の写真を見た。
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