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第二章 ― 遥斗 ―
味わう①
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翌朝も優は巨大な弁当箱を持ってきた。
朝、昼食べられて有難い。
昨日は、久しぶりに1日3食食べた。
木炭で手が汚れていたから、そこに置いといてくれと言うと、優は頬を膨らませて言った。
「先輩! 誰かになにかをしてもらったら、お礼を言うのが礼儀です」
虚を衝かれて、目を瞬く。
そう言われるとその通りだ。普通の感覚に引き戻された気がした。
「あ、あぁ……ありがとう」
とても自然にその言葉が出た。
優は満足そうに微笑んで頷いた。
そして、さらに要求してくる。
「それとちゃんと感想を言ってくださいね。言ってくれないと作る張り合いがないです」
「感想……?」
「うまいとか、おいしかったとか、最高とか」
「褒めるの一択か?」
ちょっとおかしくなって突っこむと、優は
「褒められて伸びるタイプなんで」と堂々と言い切った。
なるほど。
「あとどれが気に入ったかも教えてくださいね」
「いろいろ注文がうるさいな」
好き嫌いはない。というか、そんなことを言っている余裕もないから、考えたこともない。
優の要求は、俺にはなかなかハードルが高かった。
「だって、気に入ったのを教えてもらったら、それが入る頻度が多くなるんですよ? 気がつくと、お弁当が好きなものばっかり入っているって幸せじゃないですか?」
ニコニコとそう言ってくる優に、幸せだという弁当を思い浮かべるが、好きなものがないから、まったく中身が入らない。空っぽだ。
そういえば、誰かに好きなものを聞かれて弁当を作ってもらうのは初めてだな。
いつも一方的だったから。
「とにかくよく味わって食べてくださいね! また放課後に来ますから」
言うだけ言って、優は去っていった。
味わって食べる……?
手を洗って、弁当箱を開けてみる。
昨日と同じ、ぎっしり詰め込まれた中身に笑みがこぼれる。
おかずは昨日とは違っていて、魚の照り焼きに煮物、唐揚げなどが入っていた。和食中心だからか、全体的に茶色い。
この甘辛い味付け、美味しいな。
味わって食べるように言われると、不思議なもので、味が鮮明になった気がした。
一通り食べてみて、自分が魚の照り焼きが好きだったことを思い出す。中学のときの給食で食べたなぁ。
腹がいっぱいになったのに、まだ弁当はたっぷり残っていて、昼にも食べられる。
好きなものばかりの弁当じゃなくても、十分幸せだ。
朝、昼食べられて有難い。
昨日は、久しぶりに1日3食食べた。
木炭で手が汚れていたから、そこに置いといてくれと言うと、優は頬を膨らませて言った。
「先輩! 誰かになにかをしてもらったら、お礼を言うのが礼儀です」
虚を衝かれて、目を瞬く。
そう言われるとその通りだ。普通の感覚に引き戻された気がした。
「あ、あぁ……ありがとう」
とても自然にその言葉が出た。
優は満足そうに微笑んで頷いた。
そして、さらに要求してくる。
「それとちゃんと感想を言ってくださいね。言ってくれないと作る張り合いがないです」
「感想……?」
「うまいとか、おいしかったとか、最高とか」
「褒めるの一択か?」
ちょっとおかしくなって突っこむと、優は
「褒められて伸びるタイプなんで」と堂々と言い切った。
なるほど。
「あとどれが気に入ったかも教えてくださいね」
「いろいろ注文がうるさいな」
好き嫌いはない。というか、そんなことを言っている余裕もないから、考えたこともない。
優の要求は、俺にはなかなかハードルが高かった。
「だって、気に入ったのを教えてもらったら、それが入る頻度が多くなるんですよ? 気がつくと、お弁当が好きなものばっかり入っているって幸せじゃないですか?」
ニコニコとそう言ってくる優に、幸せだという弁当を思い浮かべるが、好きなものがないから、まったく中身が入らない。空っぽだ。
そういえば、誰かに好きなものを聞かれて弁当を作ってもらうのは初めてだな。
いつも一方的だったから。
「とにかくよく味わって食べてくださいね! また放課後に来ますから」
言うだけ言って、優は去っていった。
味わって食べる……?
手を洗って、弁当箱を開けてみる。
昨日と同じ、ぎっしり詰め込まれた中身に笑みがこぼれる。
おかずは昨日とは違っていて、魚の照り焼きに煮物、唐揚げなどが入っていた。和食中心だからか、全体的に茶色い。
この甘辛い味付け、美味しいな。
味わって食べるように言われると、不思議なもので、味が鮮明になった気がした。
一通り食べてみて、自分が魚の照り焼きが好きだったことを思い出す。中学のときの給食で食べたなぁ。
腹がいっぱいになったのに、まだ弁当はたっぷり残っていて、昼にも食べられる。
好きなものばかりの弁当じゃなくても、十分幸せだ。
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