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第一章 ― 優 ―

イケメンと美形は違う①

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 そのあと、急いで体育館に向かった私はチャイムと同時に滑り込む。

「あー、よかった。間に合った」

 私が脱力して座り込むと、菜摘ちゃんとさやちゃんが近寄ってきた。

「遅かったねー」
「全然戻ってこないから、心配したわ」
「ごめんね。ちょっといろいろあって……」

 顔を上げると、菜摘ちゃんたちが驚いた顔をした。
 なんだろうと首を傾げると、二人は「ちょっとー、優、泣いた?」「先輩となんかあったの?」と詰め寄ってきた。

 あ、そういえば、私、号泣しちゃったから、瞼が腫れているのかも。
 鏡を見てないからわからないけど、二人の慌てようを見ると、相当ひどい顔をしているっぽい。

「ううん、先輩とではなくて……」

 そう言いかけたとき、先生が来て、集合と号令をかけた。

「あとでね」
「うん」

 私たちは、先生の下に集合した。




「で、なにがあったのよ?」

 体育のあと、更衣室で着替えながら、菜摘ちゃんが聞いてくる。

「う……ん、ここではちょっと……」

 更衣室では、遥斗先輩のことを話すには、他の人との距離が近過ぎる。
 
「そっかぁ。じゃあ、放課後ね。とりあえず、優はハンカチ濡らして、目を冷やした方がいいよ」
「ほんと、その顔で部室にいくのはヤバいよ?」
「えー、そんなに?」
「うん、そんなに」

 菜摘ちゃんもさやちゃんも頷く。

 うー、鏡を見るのが怖いな。

 そう思いながら、壁の鏡をチラッと見たら、うわぁ、確かにひどい顔……。

「……放課後までに治るかな?」
「うーん、無理かもね」

 着替え終わって、ハンカチで目を冷やしながら聞いてみると、菜摘ちゃんはあっさり言う。

「えぇー、どうしよう。お弁当箱を取りに行かないといけないのに」
 
 この顔で部室に行ったら、きっと遥斗先輩にばれちゃう。泣いたのも。泣いた原因も。それは困る。

「いいこと考えた! なっちゃん、私たちで取りに行ってあげない? 生の先輩を見てみたいし」
「おー、いいねー! 私も美形を直に見てみたい!」

 さやちゃんの提案に菜摘ちゃんがノリノリで答える。

「場所どこだっけ?」
「え、いいの?」
「別にお弁当箱をささっと取ってくるだけだからね」
「ありがとう! 助かる! 場所は部室が並んでいるところあるでしょ? そこの一番奥でドアに『写真部』って書いてあるところなの」
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