全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

第一章 ― 優 ―

遥斗先輩の事情⑤

　私がじっと見てしまっていたのを汲み取ったのか、真奈美先輩が言った。
　私って、やっぱり顔に出るのね。

「遥斗先輩の絵をネットで売ろうと思っているんです。先輩に一番必要なのはお金だから、そうやって自分で稼げるようになったら、ちゃんとご飯が食べられて、嫌なこともしないで済むかなと思って」
「ふーん。さすがの行動力ね。知り合って1ヶ月も経たないのに、もうそこまで考えてるんだ」

　真奈美先輩はどこかさみしそうな表情で頷いた。

「いろんな人に相談して出てきたアイディアなんです。でも、まだ実現できるか、本当に売れるかどうかわからないので、夜のお弁当は引き続きお願いしますね」

　私が頭を下げると、真奈美先輩は苦笑した。

「あなたに頼まれるまでもないわよ。ここまで関わったら……っていうか、私が元凶なんだから、遥斗がもういいって言うまで続けるわよ」

　そう言うと真奈美先輩は手をつけてなかったリンゴジュースをぐびっと飲み干した。

「あー、スッキリした！　今まで誰にも言えなかったのよねー。このまま私が卒業したら、どうなっちゃうんだろうとも思ってたし」

　晴れ晴れとした顔をして真奈美先輩が微笑むけど、私は逆にプレッシャーだわ。
　でも、私にはお母さん、お兄ちゃん、叔父さんたちアドバイザーがいる。
　みんなの力を借りて、遥斗先輩が望む形に持っていけたらいいなー。

　ふと窓の外を見ると真っ暗になっていて、私は慌てた。

「あ、ヤバい。今、何時だろう？」
「１８時半ね」
「帰んなきゃ！　真奈美先輩、ありがとうございます。また、いろいろお話を聞かせてくださいね」
「うん。引き止めて、ごめんね。またね」

　私はバタバタと荷物をまとめて、走って家に帰った。