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第一章 ― 優 ―
またやっちゃった①
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お母さんは画面を変える度に声をあげて、騒いでいた。
「言っとくけど、実物の方がずっといいからね」
「あぁもうっ、欲しくなっちゃうじゃない!」
「毎度あり~」
私は笑って手を出した。
月曜日の朝、部室に行くと、水彩画がさらに増えていた。
花だけでなく、静物画やこの部屋の絵もあった。
「おはようございます。ずいぶん描きましたねー」
「あぁ、おはよう。水彩画はすぐ描けるからな」
「パステル画も描いたんですね」
「パステルは初めて使ったから勝手がわからないな」
「それでも十分綺麗です。使い方はネットで検索してみたら? 水彩や色鉛筆とあわせて使うやり方とかも出てますよ」
「なるほど。あとで見てみる」
新しい画材に興味津々のようで、遥斗先輩が目を輝かせて楽しそう。
新しいオモチャを手に入れた子どもみたいで、なんだか微笑ましい。
「あ、そうだ。お母さんが薔薇の絵と花束の絵を買うって。はい、お代」
「はっ?」
封筒を差し出すと、先輩は戸惑っていた。
「勝手に2000円と4000円にしちゃいました」
「……それは受け取れない」
「なんでですか?」
先輩の拒否の言葉に、私はキョトンとする。
喜んでくれるかと思ったのに。
遥斗先輩は見たことがないほど硬い表情をして、首を振った。
「お前が持ってきた画材だ。俺のものじゃない」
「でも、絵は遥斗先輩のものですよ? 先輩が絵を描かなければ、ただの白い紙です」
「……お前はそうやって、絵を売りさばくつもりか? 俺に施すために?」
暗い瞳をした先輩にそう言われて、誤解を招いてしまったことに気がついた。
「違います! 施すなんて思っていません! ネットで売ったらいいと思ったんです」
「ネット?」
不審な顔をして、先輩が聞き返す。
硬い声に、硬い表情。
最近ちょっとは打ち解けてきたと思っていたのに、完全に心を閉ざされてしまった気がする。
慌てて説明をする。
「今、個人で作ったものを売るサイトがいろいろあるでしょ?」
「そうなのか?」
「知らないですか? テレビでいろいろCMやってる……」
と言って、ここにはテレビがないのを思い出す。
スマホもないし、パソコンも使ってなかったから、もしかして先輩って、情報から隔離されてる?
「……とにかく、個人がネットでいろんな物を簡単に売れるようになっているんです。そこに出したら、遥斗先輩も定期収入が得られるんじゃないかなって思ったんです」
「ふーん」
あまり信じていない顔で先輩が言った。私がさらに言葉を足そうとしたとき、予鈴が鳴った。
「言っとくけど、実物の方がずっといいからね」
「あぁもうっ、欲しくなっちゃうじゃない!」
「毎度あり~」
私は笑って手を出した。
月曜日の朝、部室に行くと、水彩画がさらに増えていた。
花だけでなく、静物画やこの部屋の絵もあった。
「おはようございます。ずいぶん描きましたねー」
「あぁ、おはよう。水彩画はすぐ描けるからな」
「パステル画も描いたんですね」
「パステルは初めて使ったから勝手がわからないな」
「それでも十分綺麗です。使い方はネットで検索してみたら? 水彩や色鉛筆とあわせて使うやり方とかも出てますよ」
「なるほど。あとで見てみる」
新しい画材に興味津々のようで、遥斗先輩が目を輝かせて楽しそう。
新しいオモチャを手に入れた子どもみたいで、なんだか微笑ましい。
「あ、そうだ。お母さんが薔薇の絵と花束の絵を買うって。はい、お代」
「はっ?」
封筒を差し出すと、先輩は戸惑っていた。
「勝手に2000円と4000円にしちゃいました」
「……それは受け取れない」
「なんでですか?」
先輩の拒否の言葉に、私はキョトンとする。
喜んでくれるかと思ったのに。
遥斗先輩は見たことがないほど硬い表情をして、首を振った。
「お前が持ってきた画材だ。俺のものじゃない」
「でも、絵は遥斗先輩のものですよ? 先輩が絵を描かなければ、ただの白い紙です」
「……お前はそうやって、絵を売りさばくつもりか? 俺に施すために?」
暗い瞳をした先輩にそう言われて、誤解を招いてしまったことに気がついた。
「違います! 施すなんて思っていません! ネットで売ったらいいと思ったんです」
「ネット?」
不審な顔をして、先輩が聞き返す。
硬い声に、硬い表情。
最近ちょっとは打ち解けてきたと思っていたのに、完全に心を閉ざされてしまった気がする。
慌てて説明をする。
「今、個人で作ったものを売るサイトがいろいろあるでしょ?」
「そうなのか?」
「知らないですか? テレビでいろいろCMやってる……」
と言って、ここにはテレビがないのを思い出す。
スマホもないし、パソコンも使ってなかったから、もしかして先輩って、情報から隔離されてる?
「……とにかく、個人がネットでいろんな物を簡単に売れるようになっているんです。そこに出したら、遥斗先輩も定期収入が得られるんじゃないかなって思ったんです」
「ふーん」
あまり信じていない顔で先輩が言った。私がさらに言葉を足そうとしたとき、予鈴が鳴った。
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