上 下
44 / 171
第一章 ― 優 ―

おせっかいは迷惑なものです①

しおりを挟む
 翌日は土曜日だったけど、私はいつもの時間に起きて、お弁当を作った。
 いつもの重箱弁当ではなく、使い捨て容器に入れる。

「お母さん、古いポットってまだ捨ててない?」
「うん、物置にあるんじゃないかしら?」
「壊れてなかったよね? 古いだけで」
「そうね。古いからお湯が沸くのに時間がかかるから買い替えたの」
「じゃあ、部室に持っていっていい? このカップスープの素と」
「いいわよ」

 ポットを探し出して洗って紙袋に入れる。
 そして、食パンを切って、卵液に浸ける。フレンチトーストを作るのだ。
 浸している間に、ベーコンとブロッコリーを炒めて、つけあわせを作る。
 フライパンにバターをたっぷり敷いて、パンを焼くといい匂いが立ちこめた。
 それをまた容器に入れると、自転車で学校に向かった。



 トントン

「おはようございまーす!」

 一応ノックして、ドアを開けると、いつも通り遥斗先輩が絵を描いていた。
 でも、私が来るとは思っていなかったみたいで、振り向いて目を見開いていた。

「……どうしたんだ? 忘れ物か?」
「ふふっ、いろいろいいもの持ってきました!」

 私は荷物を置くと、キョロキョロとコンセントを探した。

「ここ以外にコンセントってないですか?」
「こっちにあるが……」

 パソコンと反対側を指して、遥斗先輩が教えてくれる。
 あ、本当だ。

 ポットをコンセントに繋いで、ポットに水を入れてお湯を沸かす。
 お湯を沸かしている間に、隅っこに寄せてあった机と椅子を2個ずつ引っ張り出す。

 「なにをするんだ?」と言いながら、遥斗先輩が手伝ってくれる。
 机を向かい合わせに並べると、その上にランチョンマットを敷いた。
 紙コップにスープの素を入れるとちょうどお湯が沸いた。スープを作って、紙皿の上にフレンチトーストとカリカリベーコンとブロッコリーを乗せると立派な朝食のできあがり。

「遥斗先輩、朝ご飯食べましょう」

 そう言うと、先輩はゆっくり瞬いた。

「ほら、座ってください。温かいうちに食べましょ?」

 家から熱々を持ってきたから、フレンチトーストからはまだ湯気が出ている。
 先輩を強引に座らせて、「いただきまーす」と手を合わせる。

「あ、ハチミツも持ってきたから、よかったら使ってください」

 私はフレンチトーストにたっぷりハチミツをかけて、頬張る。

「うー、我ながらおいしい!」

 私に促されて、先輩もようやくフォークに手を伸ばす。
 一口食べて「うまい」と言ってくれた。

「ハチミツをかけたフレンチトーストとベーコンを一緒に食べると、甘じょぱくって好きなんです」

 先輩もハチミツをかけて、おすすめ通りベーコンと一緒に食べた。

「なるほどうまいな」

 目を細めた先輩に、「でしょでしょ!」と微笑む。
 共感が得られるとうれしい。
 遥斗先輩がおいしいものでお腹いっぱいになってくれるとうれしい。

 でも、先輩はぺろりと食べてしまった。

「足りなかったですか?」

 心配になって聞くと、「いや、十分だ」と微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音
青春
 交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※第7回ライト文芸大賞奨励賞受賞作品です。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです

珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。 それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。

先輩に振られた。でも、いとこと幼馴染が結婚したいという想いを伝えてくる。俺を振った先輩は、間に合わない。恋、デレデレ、甘々でラブラブな青春。

のんびりとゆっくり
青春
俺、海春夢海(うみはるゆめうみ)。俺は高校一年生の時、先輩に振られた。高校二年生の始業式の日、俺は、いとこの春島紗緒里(はるしまさおり)ちゃんと再会を果たす。彼女は、幼い頃もかわいかったが、より一層かわいくなっていた。彼女は、俺に恋している。そして、婚約して結婚したい、と言ってきている。戸惑いながらも、彼女の熱い想いに、次第に彼女に傾いていく俺の心。そして、かわいい子で幼馴染の夏森寿々子(なつもりすずこ)ちゃんも、俺と婚約して結婚してほしい、という気持ちを伝えてきた。先輩は、その後、付き合ってほしいと言ってきたが、間に合わない。俺のデレデレ、甘々でラブラブな青春が、今始まろうとしている。この作品は、「小説家になろう」様「カクヨム」様にも投稿しています。「小説家になろう」様「カクヨム」様への投稿は、「先輩に振られた俺。でも、その後、いとこと幼馴染が婚約して結婚したい、という想いを一生懸命伝えてくる。俺を振った先輩が付き合ってほしいと言ってきても、間に合わない。恋、デレデレ、甘々でラブラブな青春。」という題名でしています。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...