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第一章 ― 優 ―
嫌だ!嫌だ!嫌だ!③
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二人とも私がお弁当箱を取りに来るのをわかっているはずだから。
いつも放課後すぐに部室に行っているわけじゃないから、この時間に行っても不自然じゃないよね?
足取り重く部室に向かう。
トントン
ノックしても制止する声はなかったから、思い切ってドアを開ける。
「お疲れ様でーす。写真を撮っていたら、こんな時間になっちゃった」
明るく振る舞いながら中に入ると、絵を描く遥斗先輩しかいなくてほっとする。
「明日はお休みですね。また明後日来ますね! さようなら」
私はお弁当箱を引っ掴むと、さっと部室を出た。
遥斗先輩と目を合わせなかったのも、お弁当箱の感想を聞き忘れたのも、気がついたのは家に帰ってからだった。
きっとバレバレだ……。
私のバカバカ!
明後日、どんな顔して遥斗先輩に会えばいいのよ!
悶々と過ごした休日を終え、金曜日の朝学校に行く。
お弁当を持って、部室の前で立ち止まる。
思わず聞き耳を立ててしまう。
こんな朝からやってないか……。
そんなことを思って赤面する。
大きく息を吸って吐いて、明るい表情を作って、ドアを開ける。
「おはよーございます!」
いつものように絵を描いていた遥斗先輩は、振り返って驚いた顔をしていた。
私が来るのが意外だったように。
やっぱりバレているみたい。
でも、約束したんだから、ちゃんとお弁当は作ってきますよ!
たぶん、約束の日を過ぎても……。
だって、おせっかい優が放っておけないから。
心の中でぼやく。
「お弁当です。また帰りに取りに来ますね」
「あぁ、ありがとう」
その言葉がいつもより感情がこもっていた気がして、胸がつかえた。
そして、その放課後、お弁当箱を取りに行った私は、お母さんから渡されていたクッキーを先輩に手渡した。
朝渡そうと思っていたのに、すっかり忘れていたのだ。
「明日から5連休ですねー。これ、ゴールデンウィーク中のオヤツにでもしてください」
「……ありがとう」
遥斗先輩は、なにか言いたげだったけど、結局なにも言わずに絵に戻った。
お弁当の感想もなかった。
いつも放課後すぐに部室に行っているわけじゃないから、この時間に行っても不自然じゃないよね?
足取り重く部室に向かう。
トントン
ノックしても制止する声はなかったから、思い切ってドアを開ける。
「お疲れ様でーす。写真を撮っていたら、こんな時間になっちゃった」
明るく振る舞いながら中に入ると、絵を描く遥斗先輩しかいなくてほっとする。
「明日はお休みですね。また明後日来ますね! さようなら」
私はお弁当箱を引っ掴むと、さっと部室を出た。
遥斗先輩と目を合わせなかったのも、お弁当箱の感想を聞き忘れたのも、気がついたのは家に帰ってからだった。
きっとバレバレだ……。
私のバカバカ!
明後日、どんな顔して遥斗先輩に会えばいいのよ!
悶々と過ごした休日を終え、金曜日の朝学校に行く。
お弁当を持って、部室の前で立ち止まる。
思わず聞き耳を立ててしまう。
こんな朝からやってないか……。
そんなことを思って赤面する。
大きく息を吸って吐いて、明るい表情を作って、ドアを開ける。
「おはよーございます!」
いつものように絵を描いていた遥斗先輩は、振り返って驚いた顔をしていた。
私が来るのが意外だったように。
やっぱりバレているみたい。
でも、約束したんだから、ちゃんとお弁当は作ってきますよ!
たぶん、約束の日を過ぎても……。
だって、おせっかい優が放っておけないから。
心の中でぼやく。
「お弁当です。また帰りに取りに来ますね」
「あぁ、ありがとう」
その言葉がいつもより感情がこもっていた気がして、胸がつかえた。
そして、その放課後、お弁当箱を取りに行った私は、お母さんから渡されていたクッキーを先輩に手渡した。
朝渡そうと思っていたのに、すっかり忘れていたのだ。
「明日から5連休ですねー。これ、ゴールデンウィーク中のオヤツにでもしてください」
「……ありがとう」
遥斗先輩は、なにか言いたげだったけど、結局なにも言わずに絵に戻った。
お弁当の感想もなかった。
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