全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

第一章 ― 優 ―

おせっかいの出番①

「ただいまー」
「おかえり。お弁当どうだった？」
「んー、たぶん、喜んでた」
「たぶんなの？」

　あいまいな私の言葉にお母さんは苦笑した。
　それどころじゃなかったんたってば。

「それより遥斗先輩は夜ごはんもないんだって。それどころか、家にも帰っていないみたいで」

　それを聞いて、お母さんはショックを受けていた。

「本当なの？」

　そうよね。信じられないよね。
　そんな人がいるなんて想像さえしたことなかったし。

「そうみたい。夜ごはんは別の人にもらってて、学校に住んでいるんだって」
「それを先生は知っているの？」

　和田先生はあそこを遥斗先輩が使っているのを知っていた。住んでいるのも知っているのかも。っていうか、先生が知らないまま住めないよね？

「……知ってそうな気がする」
「それならなにか事情があるんでしょうね。とりあえず、先生が知っているならちょっと安心したわ」
「本当に知っているかどうかわからないから、明日聞いてみる」
「あまり興味本位で聞いちゃダメよ？」
「でも気になるよ！　それに私の約束は1ヶ月間だけなんだけど、そのあと遥斗先輩はどうするんだろう？」

　別の先輩が卒業してお昼担当がいなくなって困ってたって言ってた。今日までどうしていたんだろう？　まさか食べてなかったとか？
　『あんなに腹いっぱい食べたの初めてだ』って言っていた。食べ過ぎたって意味だと思っていたけど、本当にお腹いっぱい食べたことがなかったとしたらどうしよう……？

「お母さん……」

　涙が出てきて、お母さんに抱きついた。
　お母さんは私の頭をなでてくれながら言った。

「そこは優のおせっかいの出番じゃない？　遥斗先輩の力になってあげれば？」
「うん、私になにかできるかな？」
「できるわよ。とりあえず、お腹は満たしてあげたいわね。休みの日はどうしているのかしら？　なんなら家に連れてきてもいいのよ？　お母さんもリアル美形を見たいし」

　お母さんは明るく言う。
　私にはこうして相談できる親がいて、安心できる家がある。遥斗先輩にはないの？

「そんないきなり男の人を家に呼べないけど、仲良くなってみるわ」
「優だったら、大丈夫よ。勢いでいける」
「勢いって……」

　二人で顔を見合わせて笑った。

「勢いで頑張ってみる」
「それじゃあ、お弁当は栄養が偏らないように考えないとね。作戦会議よ」
「うん」

　お母さん、大好き。