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京都へ③

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 そんな話をしているうちに、望晴の両親もやってきた。

「こんにちは、由井さん。お招きいただいて、ありがとうございます。で、望晴、結婚なんて聞いてないわよ」

 入ってくるなり、母に言われ、望晴は首をすくめた。

「えっと、あとで言おうかと……」

 しどろもどろに言い訳をする。
 拓斗が立ち上がり、挨拶した。

「初めまして。由井拓斗と申します」
「やぁ、初めまして、望晴の父です」
「母です。望晴がお世話になっています。望晴が結婚できるなんて、本当になんと感謝していいのやら……」

 涙ぐむ母は望晴の大学時代のことを思い出しているのだろう。そこから男性恐怖症になっていたのを知っていたので、結婚は無理だと考えていたようだ。なにも具体的に話したことはなかったが、心配をかけていたのだなと望晴も目が潤んできた。
 でも、いよいよ本格的に結婚相手の親への挨拶の様相になってきて、望晴の手のひらに汗がにじむ。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。結婚を決めたばかりで、まだなにも予定が立っておらず……」

 拓斗がそれとなく結婚するのは先だとほのめかした。
 すると、祖父が血相を変えた。

「それはいかん! もうすでに一緒に住んでいるんだろう? ちゃんとけじめをつけなくては、西原さんに申し訳が立たん! 結婚式は先にしても入籍したらどうだ?」
「見て、ちょうど結婚情報誌のおまけに婚姻届がついてたのよ。これを使ったら?」
「もう同棲してるの、望晴? もう聞いてないことばかりよ。でも、それなら入籍は早いうちがいいわね」

 みんな寄ってたかって、拓斗と望晴を入籍させようとする。逃がさないという圧がすごい。

「ちょっと待ってください。いきなり入籍って、僕も望晴さんも心の準備ができてませんよ。だいたい、ばあちゃん、なんでそんなの持ってるんだよ!」

 たまらず、拓斗が口を挟んだ。

「だって、あなたが結婚すると聞いたから、最近の結婚式はどんなのかしらと思って、浮かれて買っちゃったの」

 祖母がえへっとチャーミングに笑う。よっぽどうれしかったらしい。

「心の準備というが、結婚を決めたのだったら、もう入籍してもいいじゃないか。わしは拓斗の婚姻届の証人になるのが夢だったんだ」

 祖父が尚も言い募った。
 拓斗は引きつった顔で言う。

「望晴さんと相談させてもらってもいいですか?」

 そう言って、拓斗が望晴を隣の部屋に引っ張っていった。
 話の展開についていけず、望晴はあ然としていた。

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