17 / 62
デート、のふり②
しおりを挟む
彼⼥の勢いに颯⽃は笑って⾔う。
「わかった。じゃあ、今⽉末の⼟曜はどうだ? 装花のあとにでも」
「時間的には⼤丈夫なんですが、それなら⼀度家に帰って着替えたいです。といっても、⼤した服は持ってませんが」
⾼級そうな匂いのプンプンするケーキ屋に⾏くなら、綺麗めのファッションで臨みたいと思い、⼀花は⾔った。それに、颯⽃の隣に並ぶならなおさら、少しでも⾒た⽬を取り繕いたかった。
「それなら、颯⽃さん、今から⼀花さんとお買い物に⾏ったら? 着る服を買ってきて、ここに置いておいたらいいじゃない」
「ええっ!」
「それはいいな。さっそく恋⼈のふりもできる。どうだ? 時間はあるか?」
「でも……」
「恋⼈と認知してもらうために、ちょっとしたパーティーにも同⾏してほしいし、出歩くときの服を何着か買っておこう。あぁ、費⽤は気にしなくていい。必要経費と思ってもらえば」
副社⻑の恋⼈なのに、みすぼらしい格好はできないということかと⼀花は理解した。
そして、パーティーなんてものに参加したことのない彼⼥は、気安く恋⼈役を引き受けるのではなかったと早くも後悔しはじめる。
(セレブの『⼀緒に出歩く』には、パーティーまで⼊ってるのね……!)
⾃分とは縁のない世界に連れていかれそうで、慄いた⼀花だったが、引き受けた以上、やるしかないと気合を⼊れた。
そんな⼀花とは対照的に、貴和⼦はのほほんとしている。
「デート、楽しそうでいいわね。昇さんはゴルフばっかりでぜんぜん私の相⼿をしてくださらないから」
藤河社⻑のことを⾔っているようだ。
実際、⼀花がここに通うようになってからひと⽉以上経つが、未だに藤河社⻑と顔を合わせたことはない。
趣味のゴルフに仕事上の付き合いで出かけていることが多いらしい。
「それじゃあ、貴和⼦さんもご⼀緒しませんか?」
「あら、だめよ。⼆⼈のデートなのに」
服を買うなら⼥性の⽬が欲しいと思ったが、貴和⼦にあっさりと断られる。
ふりなのに、と⼀花は苦笑した。
「遅くならないうちに出かけるか。君の⾞はいったんここに置いておいて、俺の⾞で⾏こう」
颯⽃が⽴ち上がって、⼀花を⾒る。
彼⼥に異論はなくうなずいた。
『Green Shower』とでかでかと⾞体に書いてある社⽤⾞に颯⽃を乗せるわけにはいかない。
「わかった。じゃあ、今⽉末の⼟曜はどうだ? 装花のあとにでも」
「時間的には⼤丈夫なんですが、それなら⼀度家に帰って着替えたいです。といっても、⼤した服は持ってませんが」
⾼級そうな匂いのプンプンするケーキ屋に⾏くなら、綺麗めのファッションで臨みたいと思い、⼀花は⾔った。それに、颯⽃の隣に並ぶならなおさら、少しでも⾒た⽬を取り繕いたかった。
「それなら、颯⽃さん、今から⼀花さんとお買い物に⾏ったら? 着る服を買ってきて、ここに置いておいたらいいじゃない」
「ええっ!」
「それはいいな。さっそく恋⼈のふりもできる。どうだ? 時間はあるか?」
「でも……」
「恋⼈と認知してもらうために、ちょっとしたパーティーにも同⾏してほしいし、出歩くときの服を何着か買っておこう。あぁ、費⽤は気にしなくていい。必要経費と思ってもらえば」
副社⻑の恋⼈なのに、みすぼらしい格好はできないということかと⼀花は理解した。
そして、パーティーなんてものに参加したことのない彼⼥は、気安く恋⼈役を引き受けるのではなかったと早くも後悔しはじめる。
(セレブの『⼀緒に出歩く』には、パーティーまで⼊ってるのね……!)
⾃分とは縁のない世界に連れていかれそうで、慄いた⼀花だったが、引き受けた以上、やるしかないと気合を⼊れた。
そんな⼀花とは対照的に、貴和⼦はのほほんとしている。
「デート、楽しそうでいいわね。昇さんはゴルフばっかりでぜんぜん私の相⼿をしてくださらないから」
藤河社⻑のことを⾔っているようだ。
実際、⼀花がここに通うようになってからひと⽉以上経つが、未だに藤河社⻑と顔を合わせたことはない。
趣味のゴルフに仕事上の付き合いで出かけていることが多いらしい。
「それじゃあ、貴和⼦さんもご⼀緒しませんか?」
「あら、だめよ。⼆⼈のデートなのに」
服を買うなら⼥性の⽬が欲しいと思ったが、貴和⼦にあっさりと断られる。
ふりなのに、と⼀花は苦笑した。
「遅くならないうちに出かけるか。君の⾞はいったんここに置いておいて、俺の⾞で⾏こう」
颯⽃が⽴ち上がって、⼀花を⾒る。
彼⼥に異論はなくうなずいた。
『Green Shower』とでかでかと⾞体に書いてある社⽤⾞に颯⽃を乗せるわけにはいかない。
46
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
不倫され妻の復讐は溺愛 冷徹なあなたに溺れて幸せになります
雫石 しま
恋愛
夫と姑から冷遇され、愛人に振り回される木古内果林(25歳)のシンデレラをモチーフにしたハッピーエンディング物語。 <お題> *サレ妻 *嫁いびり *溺愛 *ざまー要素
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
恋は秘密のその先に
葉月 まい
恋愛
秘書課の皆が逃げ出すほど冷血な副社長
仕方なく穴埋めを命じられ
副社長の秘書につくことになった
入社3年目の人事部のOL
やがて互いの秘密を知り
ますます相手と距離を置く
果たして秘密の真相は?
互いのピンチを救えるのか?
そして行き着く二人の関係は…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる