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「本当に君だったのか! あのときはありがとう。危うく死ぬところだったよ」

 丁寧にお礼も言ってくれて、信じてもらえたことに有頂天になる。
 これなら望みがあるんじゃない?
 その上、王子様は私をメイドに引き渡すとき、「僕の命の恩人なんだ。丁重に扱ってくれよ?」と言ってくれた。

 メイドさんについていくと、オーフェンと私は一緒にお風呂に入れられ、ピカピカに磨かれた。
 オーフェンは「うわぁ」とか「うぅぅ」とか叫んだり呻いたりしていた。
 お風呂が嫌いなのかな?

 綺麗な青のドレスを着せられて、うれしくてくるりと回転してみる。

『よく似合ってるよ。それにしても、サーナに脚があるのは新鮮だな』
『うん。声と引き換えでも、こうして脚ができて、王子様に会えたのがうれしいわ』
『ふ~ん、本気なんだな』
『当たり前よ!』

 オーフェンと会話を交わせるのもありがたい。
 本当にうれしい誤算だわ。
 これがなければ、もともとおしゃべりな私は気が狂うところだったかもしれない。

 身だしなみを整えられて、私たちが王子様のもとへ案内されると、彼はふんわりと微笑み、「綺麗になったね」と言ってくれた。
 ふふふ、そうでしょ?
 これから迫るから、よろしくね。


~~~…~~~…~~~…~~~


 それからというもの、私は王子様のもとで、優しく守られて暮らした。

 一緒に犬の散歩に行ったり、お庭を散策したり、舞踏会にも出させてもらった。もちろん、私のパートナーは王子様。
 すぐに王子様が私を可愛がっていると噂になった。

『ねーねー、オーフェン、いい感じだと思わない?』
『う~ん、俺には特別な感情は持たれてないように見えるけど? 恩人だって、大事にされているだけじゃない?』
『うそ!』

 すっかりその気になっていたのに、オーフェンの冷めた意見にスーッと血の気が引く。
 
『そうなの? そうだとしたら、どうすればいいのかしら?』
『そんなこと言われてもなぁ』
『ひど~い。オーフェンは私が海の泡になってもいいの?』
『それは嫌だが……』
『じゃあ、王子様に好きって言ってもらうにはどうしたらいいと思う?』

 私はオーフェンを揺り動かし、意見を迫った。
 カメとはいえ、雄だから、男心がわかるかもしれない。
 彼は困ったように、小首を傾げた。

『そうだなぁ。色仕掛けとか? いや、ウソ、冗談』
『色仕掛け。うん、わかったわ!』
『だから、冗談だって』
『私には後がないの。なにがなんでも王子様に私を好きになってもらわなきゃ』

 私がそう言うと、オーフェンはひどく悲しそうな顔をした。
 きっと同情してくれているんだわ。
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