広がる世界

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悲痛な叫びが真横から聞こえ、抱き締め返すか迷っていた両手を荒巻さんの背中に回した。


「嫌いじゃなく、好きだからこそ一緒に住めないんです。荒巻さん」


きっと、こう言っても荒巻さんは友達同士で言い合う『好き』と勘違いされるのだろう。


「俺も嶋貫のこと大好きだよ？なら、問題ないじゃん……」


「違うんですよ、荒巻さん。俺の言う好きとは」


強引に距離を取り、俯いていた荒巻さんの顎を掴み、顔を近付けた。
唐突な俺の行動に荒巻さんの瞳が大きく見開かれたのが分かる。
息と息が触れ合う、その至近距離で俺は荒巻さんを見つめた。


「異性を見る目と同じ目線で貴方を見ているという意味での『好き』ですよ。友達同士の好きではありません」


いくら同じグループ内にそういう二人がいるとはいえ、所詮は他人同士。
見ているのと当事者となるのでは話は別だ。
実際にその立場になってみてどうですか？
嬉しいですか？
それとも気持ち悪いですか？

どうせ、後者に決まっている。
そう何人も同じ性癖を持っている人がいるわけがない。
持っていたとしても、両思いになれるなんて滅多にないのだ。