その日君は笑った

mahiro

文字の大きさ
上 下
1 / 16

事の始まり

しおりを挟む
俺の目の前には一升瓶片手に泣きながら愚痴を溢している友人がいる。
その友人は大学入学当初から目立っていた。
顔が小さい上に手足が長く、顔面偏差値と呼ばれるものが非常に高いのにその自覚が全く、黙っていると只のイケメンなのだが、喋り出すと馬鹿さが目立つ、そんな友人だ。
その友人には彼氏がいて、背が高く目付きの悪い人で友人の近くにいると高確率で睨まれ、これ以上近寄こうものなら噛み付かれるのではないかと思うほど狂暴そうな人である。
何故こんな友人にあんな狂犬のような彼氏が居るのか謎だ。


「アキちゃんアキちゃんとうるさいのだ、奴は」


ボロボロと泣く友人を正面から頬杖をつきながら相槌も打たずにただ見ていれば、据わった目で俺を見てきた。


「聞け、孝介。あいつはな」


完全に酔っぱらってるせいで同じ話を何度も何度も繰り返している。
それも全部彼氏の北嶌?さんの愚痴で、彼氏と仲が良いというアキちゃんと呼ばれる人との仲が良すぎて困るという内容だ。
今日はそのアキちゃんの所へ彼氏は行って帰ってこないのだとか。
それでこの状況である。
友人はつい最近引っ越し、彼氏と何かあると俺の家に来るようになった。
今日はこのままだと泊まることになりそうだが、あの怖い彼氏に何か言われたら面倒そうだな。


「ほら、宝生。そのくらいで止めておけ。明日に響くぞ」


「今日くらい飲ませろ!」


「散々飲ませただろうが」


瓶を抱き抱える友人に手を伸ばせば、伸ばす分だけ後退する。
これじゃ埒が開かないな。
どうにかしたい所だが、どうしたものか。
そんなとき、俺のスマホが鳴り出した。
何か非常に嫌な予感がする。


「孝介?鳴っているぞ?」


「そう、だな」


「お前を待っているぞ?」


「俺は待ってない」


俺がいつまで経っても出ないでいると、友人が変わりに出てしまった。


「孝介の変わりに宝生が出ている」
 

ディスプレイを見てないせいで誰だか分からないが、こんな夜中にかけてくる奴なんてろくな奴が今まで居たことがない、もちろんこの友人も然別。


「おぉ、隼(じゅん)ではないか!どうした?」


やっぱり嫌な気配的中した。
俺の友人その2は目の前の友人と同じく彼氏がいる。
その彼氏が実はとある業界の有名人でよく週刊誌にすっぱ抜かれていたりする。
その度に俺の家に唐突に来て泣きついてくる友人だ。
ここは駆け込み寺じゃないぞ。


「またか…お前も大変だな。俺も今孝介の家で飲んでいるのだ。お前も来るか?」


そうなるだろうなとは思っていたが、やっぱりそうなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

とある隠密の受難

nionea
BL
 普通に仕事してたら突然訳の解らない魔法で王子の前に引きずり出された隠密が、必死に自分の貞操を守ろうとするお話。  銀髪碧眼の美丈夫な絶倫王子 と 彼を観察するのが仕事の中肉中背平凡顔の隠密  果たして隠密は無事貞操を守れるのか。  頑張れ隠密。  負けるな隠密。  読者さんは解らないが作者はお前を応援しているぞ。たぶん。    ※プロローグだけ隠密一人称ですが、本文は三人称です。

もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、騎士見習の少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

可愛くない僕は愛されない…はず

おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。 押しが強いスパダリα ‪✕‬‪‪ 逃げるツンツンデレΩ ハッピーエンドです! 病んでる受けが好みです。 闇描写大好きです(*´`) ※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております! また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)

処理中です...