やっと、

mahiro

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掴まれた手を振り払って、去って行く。
その行為は昔の私なら当たり前にやっていたように思う。
心地よい体温を知りたくなくて振り払ったそれに、ルネ王子は傷付いた表情を浮かべていた。


「………えーと?」


そんな過去を思い出しながらルネ王子について行くと、近くに海のある丘の上に連れてこられた。
いやぁ、何故だかすごい既視感がある風景だなぁ。
ここに似た風景の所に城があって、そこから私は飛び降りたんだっけ。
こんなにも似ている場所がこの国にもあるとは思わなかった。


「ここさ」


私に背中を向けたまま海を眺めているルネ王子に、私は黙ったまま足を止めた。


「俺のいる城によく似た風景なんだよ」


似すぎじゃないかと思うくらいに似てるな。


「たまたま歩いていたら見つけてな。一度、ミュライユに見てほしかったんだよ」


それは過去の私に懐かしんでほしいという思いからなのか、それとも単純に自分のいる国の風景と似た場所を見てほしかっただけなのかどうなんだ。


「海がよく見えますね」


どちらか分からないので、結局差し障りのない感想をのべてみれば、ルネ王子に笑われた。


「だろ?」
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