やっと、

mahiro

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ミュライユとして新たなスタートを切ることが出来た私と、まるで過去から身動きが取れなくなっているルネ王子。
どうすれば、ルネ王子は新たな一歩を踏み出すことが出来るのだろう。


「………ルネ王子」


震える手の上に自分の手を乗せてみた。
自分のものよりも大きくて、暖かい手だったのに今日は冷たく感じた。


「あんたはまだ『そこ』にいるのか?」


小さく至近距離にいても聞き取れないであろう声で呟いてみた。
すると、ルネ王子は勢いよく私から離れて私の身体を反対側へ振り返らせ、顔を覗き込んできた。


「今、何て言った?」


真剣な顔つきで覗き込んでくるルネ王子に、私は眉を寄せた。
真実を伝え、過去からルネ王子を解放させろ、という私と、それはもう過去の出来事で今さら伝える必要はない。
ルネ王子が前を向こうが、足を止めていようが今の私は関係ないことじゃないかと思う私が頭の中で議論をしている。
全てを伝えるべきだという意見もあれば、知らない方が幸せだという意見もある。
だって、今さらルネ王子の隣に立てたとて、私は貴族ではなく庶民でしかない。
ルネ王子を支えられるような人物ではないだろうと。
そんな議論をしている間にも、ルネ王子をじっと見ている。
どうする、どうしたら良い。
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