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春なんてオレに来るのかね
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峯岸のせいで会っても話したこともないのに杉本のことの情報が入ってきた。
友達じゃないのに友達の錯覚に陥っているのは全部峯岸のせいだ。
そんな杉本と直接接触したのは、たまたま中庭の見える廊下を通っていたときだった。
窓から杉本と知らない女子生徒たちが歩いているのを見かけて、慌ててそちらに向かえばまさに杉本が叩かれそうなタイミングで、オレは急いで二人の間に入り込み、女子生徒の手を掴んだ。
女子生徒も杉本も驚いた様子でオレを見ていたな。
そのときは杉本を助けることに必死で動いていたから何をしたかあまり記憶にないけど、女子生徒たちが怯えていたことと杉本から感謝されたことは覚えてる。
「玖蕗栖。助かったわ」
その数日後、晴れやかな笑みと共に峯岸に感謝されたのは良いが、何故普段来ないオレのクラスにわざわざ来て言うんだよ。
峯岸が何考えてるのかさっぱり分からん。
「いや、別に大したことしてないけど。え、何。次何させられんのオレ」
警戒しながら峯岸に言えば、不思議そうな顔をされた。
いや、何でだよ。
「別に何もさせようと思ってないけど。こっちは後少しでどうにかなりそうだし」
「そりゃ良かったな。早く付き合えっての、このバカップルめ」
「お前にも早く春が来れば良いのにな」
「良いんだよ、別にオレのことは」
どうせ印象最悪だし。
あれから宗方とも『宮永』とも話せていないし、変に見ることも出来ない。
オレとしてはこれ以上、株を下げないようにするので精一杯だっての。
「それじゃあ、またな。お前、気付いてないと思うけど、痩せてきてるぞ。体調気を付けろよ」
珍しくオレを心配するような言葉を吐いてから去って行った峯岸を見送り、視線を前に戻せばクラスの女の子たちの視線が全てオレに向けられているのに気が付いた。
これって確実に峯岸のせいだよな。
峯岸と普通に話していたからだよな。
今まで視線が集まったとしてもここまで集まることなかったんだけど。
峯岸効果怖いわ。
やっぱり一目があるところで峯岸と話すのは止めよう。
それにしても、峯岸の言うように痩せてきてることは自覚してた。
別に部活で痩せたとか運動して痩せたとかではなくて。
成長期だから、とかでもなく、日夏のことがあって色々とバタついていたからだと思っている。
日夏が何かしたわけではなくて、日夏の可愛さに他所の人が気が付いてちょっかいを出してきた人がいるというか何というか。
出来るだけ側に居れるときはオレが日夏の側に居るようにしてるんだけど、やっぱり四六時中ってのはオレにも限界があるから幸輝にも頼んで日夏を一人にしないようにしていたりする。
働いている父さんや母さんにも状況は伝えているが、二人とも仕事があって身動きがオレより取れない。
それは仕方のないことだから、オレがどうにかしなきゃとは思っているんだけど、やる気だけがから回っている気がしてならない。
日夏に嫌な思いをして欲しくなくて、出来るだけ楽しい思いをして欲しくて遊ぶ範囲を広げてあげたりしてるんだけど、果たして日夏は本当に喜んでいるのか心の底は分からない。
幸輝からはオレが気にするほど、日夏は傷ついてないとは言うけど、どうだろうか。
まだ直接的な手を出されたわけじゃないけど、気を緩めたら出されそうな気がしてならない。
「はぁ………」
どうしたら峯岸のように何もかもが上手く行くようになるんだろうな。
友達じゃないのに友達の錯覚に陥っているのは全部峯岸のせいだ。
そんな杉本と直接接触したのは、たまたま中庭の見える廊下を通っていたときだった。
窓から杉本と知らない女子生徒たちが歩いているのを見かけて、慌ててそちらに向かえばまさに杉本が叩かれそうなタイミングで、オレは急いで二人の間に入り込み、女子生徒の手を掴んだ。
女子生徒も杉本も驚いた様子でオレを見ていたな。
そのときは杉本を助けることに必死で動いていたから何をしたかあまり記憶にないけど、女子生徒たちが怯えていたことと杉本から感謝されたことは覚えてる。
「玖蕗栖。助かったわ」
その数日後、晴れやかな笑みと共に峯岸に感謝されたのは良いが、何故普段来ないオレのクラスにわざわざ来て言うんだよ。
峯岸が何考えてるのかさっぱり分からん。
「いや、別に大したことしてないけど。え、何。次何させられんのオレ」
警戒しながら峯岸に言えば、不思議そうな顔をされた。
いや、何でだよ。
「別に何もさせようと思ってないけど。こっちは後少しでどうにかなりそうだし」
「そりゃ良かったな。早く付き合えっての、このバカップルめ」
「お前にも早く春が来れば良いのにな」
「良いんだよ、別にオレのことは」
どうせ印象最悪だし。
あれから宗方とも『宮永』とも話せていないし、変に見ることも出来ない。
オレとしてはこれ以上、株を下げないようにするので精一杯だっての。
「それじゃあ、またな。お前、気付いてないと思うけど、痩せてきてるぞ。体調気を付けろよ」
珍しくオレを心配するような言葉を吐いてから去って行った峯岸を見送り、視線を前に戻せばクラスの女の子たちの視線が全てオレに向けられているのに気が付いた。
これって確実に峯岸のせいだよな。
峯岸と普通に話していたからだよな。
今まで視線が集まったとしてもここまで集まることなかったんだけど。
峯岸効果怖いわ。
やっぱり一目があるところで峯岸と話すのは止めよう。
それにしても、峯岸の言うように痩せてきてることは自覚してた。
別に部活で痩せたとか運動して痩せたとかではなくて。
成長期だから、とかでもなく、日夏のことがあって色々とバタついていたからだと思っている。
日夏が何かしたわけではなくて、日夏の可愛さに他所の人が気が付いてちょっかいを出してきた人がいるというか何というか。
出来るだけ側に居れるときはオレが日夏の側に居るようにしてるんだけど、やっぱり四六時中ってのはオレにも限界があるから幸輝にも頼んで日夏を一人にしないようにしていたりする。
働いている父さんや母さんにも状況は伝えているが、二人とも仕事があって身動きがオレより取れない。
それは仕方のないことだから、オレがどうにかしなきゃとは思っているんだけど、やる気だけがから回っている気がしてならない。
日夏に嫌な思いをして欲しくなくて、出来るだけ楽しい思いをして欲しくて遊ぶ範囲を広げてあげたりしてるんだけど、果たして日夏は本当に喜んでいるのか心の底は分からない。
幸輝からはオレが気にするほど、日夏は傷ついてないとは言うけど、どうだろうか。
まだ直接的な手を出されたわけじゃないけど、気を緩めたら出されそうな気がしてならない。
「はぁ………」
どうしたら峯岸のように何もかもが上手く行くようになるんだろうな。
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