新しい道を歩み始めた貴方へ

127

「やり直す………？」


「うん。ちゃんと恋人として付き合おう」


何でそうなる。
いくら過去の関係性があやふやであっても、過去は過去であってそれに倣う必要はない。


「いや、何言ってるんだよ。たとえ過去に関係があったとしても、やり直す必要なんかない。セヴランは俺のことなんて忘れて、新しい道を歩んでくれたらそれだけで」


十分なんだよ。
なのに何で首を横に振るんだ。


「ルイ君を忘れて新しい道？そんなの無理だよ。俺はもう二度と忘れないし、自分の気持ちを偽るつもりはない」


自分の気持ちを偽らない？
何のことを言ってるんだ？
いつ、セヴランが気持ちを偽ったと言うんだ？


「偽るって何のことだ？」


「…………忘れた方が幸せだとルイ君はそう思っていたんだよね」


「そうだけど……何だ？」


急に何だ。
それに急にセヴランの雰囲気が変わったような気がする。
握られた手を離そうとするもセヴランの力が強くて離せない。


「俺もね、ルイの未来を考えてたら、離れた方がお互いのためかと思って距離を置いていたんだ。周りにも仲違いしたなんて嘘までついてね。今思うとそんなことしなければ良かった。反省してるよ」


何のことを言ってるんだ？
それに『ルイ』って………。
まさか、昔の話をしたことがきっかけで記憶が戻ったのか？


「ルイ」


席を立ってセヴランから距離を置こうとすると、掴まれていた手を引っ張られて強く抱き締められた。


「もう二度と俺から離れないで。俺の恋人でいて」