新しい道を歩み始めた貴方へ

56

「それで？それが原因じゃないんだろ？」


写真に向けられていたロジェの視線が再び俺に向けられ、思わず息を飲んでしまった。


「はい。ロジェさん、セヴラン・キャリーという人物をご存じですか」


「セヴラン・キャリー？聞いたことないな」


「私も聞いたことのない名前です。ですが、社内で話をしていた女性たちの様子から重要人物なのではないかと」


「なるほどな」


駄目だ、セヴランの名前が出たら確実に俺の過去を話さなくてはいけなくなる。
何か何かいい方法はないか。


「…………ルイ君は犯人の目星が近付いてきて恐怖を覚えたのと、一斉に人が襲いかかってくる場面に出くわしてしまい、怯えさせてしまいました。私が側に居ながら申し訳ありませんでした」


頭が真っ白になりかけていたとき、ビセンテがロジェに頭を深々と下げていた。
あれ、もしかしなくても庇われた？
ロジェ相手に通用するとは思えないけど。



「いや、ビセンテがいたからこの程度で済んだんだ。ありがとう。それに………こっちに来ていたらもっと恐ろしいことに巻き込まれていたからな」