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その24

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「転職っすか?」


今まで考えたことがなかったわけじゃない。
目の前にある仕事をひたすらこなす日々をいつまで続けるのかと思ったりもした。
だが、転職活動をするにも気合いがいるし新たに人間関係を構築するのを面倒に感じて結局、そのままずるずるとときが過ぎていたのだ。
引っ越しに関しても、特にこの家にこだわりがあるわけではなくて探すのが億劫で、引っ越し作業も時間がかかるから面倒だと思っていただけである。


「そ。今より待遇は絶対に良くするし、休暇は取ることができる。履歴書は書いて貰うが、その他の筆記テストだとか面接は…別にいらないな。お前には良い話だと思うけど?」


「面接いらず……」 


それはありがたい。
あの窮屈な空間苦手だし。
できることならやりたくない。


「その仕事って何ですか?」


まさかヤバい仕事とかじゃないよな。


「俺の秘書」


「は?」


「俺事務所立てたんだけどよ、仕事があり過ぎて俺だけじゃ整理できなくなってきてんだよ。だから誰かにも把握して、スケジューリングとかして欲しいんだよな。望月は望月で内部のことでいっぱいいっぱいだし、船守は経理のこと頼んでるだが、そっちもそれで手一杯だしで頼める奴がいないんだよ」


「望月先輩にふなっち?」



「あいつらも俺の事務所で働いて貰ってんの。今のところ、社員は俺と望月と船守だけ。追々増やしていくつもりだがな。で、どうよ?」


ということは、常に年輩の側にいられて、望月先輩とふなっちといつも会えるのか。


「凄い良い話だと思います!」


「良い反応。それじゃ、お前の仕事を辞めた段階でうちの事務所に来な。望月も船守も待ってるから」


「うっす!」


早速明日にでも辞表を出そう。
これで残業オンパレードとおさらばできる、と思っていたら先輩に微笑ましいようなものを見るような目で見られていることに気付いた。


「やっぱりお前はそうやって無邪気に笑ってる方が良いよ」
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