上 下
3 / 50

森の光

しおりを挟む
森の中に足を踏み入れて、少し行くと、その光の前まで行くことが出来ました。

「これって…湖?」

光っていたのは湖でした。
何で光ってるの?

私は湖の畔に佇みその光景をぼーとみつめていました。

しばらくすると、湖の真ん中から、光の玉が出てくる
それがどんどん大きくなりながら、近づいてきました。

目の前に来たそれは、だんだん人の形になってひかりが収まってきました。

人の形をした人でないもの…
とっさにそう感じました。
でも、やっぱり恐怖はない。

ひかりが消えると、湖も仄かに光る程度の輝きになりました。

その仄かな光に照らされたそれ・・は腰の下まである程の長い髪で色は緑、そして大きな瞳は金色でとても美しく見える人のような物でした。

ジーと見てしまっていた事に気が付いて、下を向いた。
そして「勝手に森に入って来てすみません」
と謝っていた。

『かまわない』

え?しゃべった?
いや、頭に響いてきたようだ。

「あなた様はこの森の主様ですか?」

『主か… そう言われれば、そうかもしれんな
我は、森の精霊を束ねる者なり』

あれ?だんだん耳に声として聞こえてきた。
それに人のようだったものが、ちゃんと人間に見える…
でも、人間としては神々しすぎる。

「森の精霊を束ねる者…
精霊王さまですか?」

「主よりはそれが近いかのう」

「失礼いたしました。
私はアニエス・オーランドと申します」

「ふむ、アニエスよ 
日が落ちてからなぜこのような所に?
この辺りの者は日が落ちてから森に入ったら、悪い事がおこると信じているから、森には近づかないぞ」

「え? 本当に悪い事がおこるのですか?」

「いや、昔たまたま森に入った者がこの湖を見て驚き、そのような噂がたったのだ」

「確かに湖が発光していますものね」

「これは、湖の精霊達が水の底で宴を開いていてな
その楽しんでいる波動が光となって伝わっておるのだ。
私はその宴に顔を出した帰りだ」

精霊王さまが言うには毎日このように光るわけではなく、月に数回開かれる宴の時だけらしいです。

それをたまたま、見た村人が慌てて逃げて怪我をした事をむすびつけたり、偶然見た人間が騒いだ後に亡くなったりした事を結び付けただけのようです。

「まあ、そんな訳でこの近くの村人は日が沈むまでには、家に帰り、夜は絶対に村からは出ないのだ」

そうだったのか…


「私は王都から参りましたので、そのような噂を知りませんでした」

「ほう あのエヴィラール国の事か?」

「はい 私はあそこを追放されまして、ここまで歩いて来たもので」

「追放だと? 我にはそなたがそのような目に遭う人間には見えぬが…」

そう言って目を覗き込まれました。精霊王さまの金色の目が輝き幾つもの光が弾けるようでとても美しく自然と見つめてしまいました。

「ふーん そうか
大変だったな」

え?私はなにもしゃべってないのに、全てを知られたような気がしています。

「あの、私に起こった事がお分かりなのですか?」

「まあな。 時にアニエスよ
そなたは行くところがあるのか?」

「いいえ、今そこの村まで行ってみようと思っていただけで
何も決まっておりません」

「なら、我に付いて来い」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

第一夫人が何もしないので、第二夫人候補の私は逃げ出したい

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のリドリー・アップルは、ソドム・ゴーリキー公爵と婚約することになった。彼との結婚が成立すれば、第二夫人という立場になる。 しかし、第一夫人であるミリアーヌは子作りもしなければ、夫人としての仕事はメイド達に押し付けていた。あまりにも何もせず、我が儘だけは通し、リドリーにも被害が及んでしまう。 ソドムもミリアーヌを叱責することはしなかった為に、リドリーは婚約破棄をしてほしいと申し出る。だが、そんなことは許されるはずもなく……リドリーの婚約破棄に向けた活動は続いていく。 そんな時、リドリーの前には救世主とも呼べる相手が現れることになり……。

やり直したい傲慢令嬢は、自分を殺した王子に二度目の人生で溺愛される

Adria
恋愛
「長らく人質としての役目、ご苦労であった」 冷たい声と淡々とした顔で、私の胸を貫いた王子殿下の――イヴァーノの剣を、私は今でも忘れられない。 十五年間、公爵令嬢としての身分を笠に着て、とてもワガママ放題に生きてきた私は、属国の王太子に恋をして、その恋を父に反対されてしまった事に憤慨し、国を飛び出してしまった。 国境付近で、王子殿下から告げられた己の出生の真実に後悔しても、私の命は殿下の手によって終わる。 けれど次に目を開いたときには五歳まで時が巻き戻っていて―― 傲慢だった令嬢が己の死を経験し、命を懸けて恋と新しい人生を紡ぐストーリーです。 2022.11.13 全話改稿しました 表紙絵/灰田様

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

ごめんあそばせ婚約破棄

白乃いちじく
恋愛
 俺には前世の記憶がある。そんなご大層な記憶じゃない。日本という平和な国で生まれた平凡な男子高生だ。ゲームが好きで勉強が嫌いで、友人と騒ぐのが大好きで、でもってバレンタインなんかはちょっぴり悲しい思いをしたり……。ほんとうにどこにでもいる男子高生だったと思う。  それがある日突然死んでしまい、異世界へと生まれ変わってしまった。ゲームの主人公であるヒロインに……。おい、何でだよ(怒)! そんなわけで恋しても恋しても実らない。あたりまえだっつーの。神様、何か俺に恨みでもあるんですか? ***悪役令嬢テンプレの完全ギャグです。馬鹿王子をぶん殴りたい、ただそれだけの為に書きました() さらっとお読み下さい。さらっと。***

天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。 王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。

ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)

青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。 父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。 断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。 ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。 慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。 お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが この小説は、同じ世界観で 1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について 2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら 3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。 全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。 続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。 本来は、章として区切るべきだったとは、思います。 コンテンツを分けずに章として連載することにしました。

処理中です...