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クロード兄様はご友人の方に連れていかれてしまったので、ルビアと共に女性専用の休憩室へ向かいます。

幾つかある部屋は自然とある程度年代に分かれていきます。


少し年配のご夫婦方はここで情報の交換や共有をしたりするので、交流の場所として機能している感じです。

一番手前の部屋はお母様位の方達ばかりが休んで…
あれ?
なんだか騒がしいです。

良く見ると、真ん中にいるのはお母様でした。

周りの人達はお母様のドレスを誉めて騒いでいるようです。

今日のお母様のドレスは濃い青色で膝下までスッキリとしたシャープなマーメイドラインです。
そこから青い生地と白銀の生地を交互に何層にも重ねたプリーツが広がり後ろ側は特に尾を引くように長くなっています。

お母様は背も高めでスタイルがいいので、とてもカッコいい装いです。
首もとは太めのプラチナでブドウをモチーフにした首飾りをしています。

銀糸の刺繍を施した白いロング手袋もとても優雅に見えます。

「さすがエヴァリーヌ様ね。
なんて素敵な着こなしかしら。
皆、今年の流行はスレンダーラインだと言っていたけれど、すぐにマーメイドラインのドレスが流行り出すわね」

私達はそっと部屋を後にして、廊下でクスクスと笑い合いました。


隣の休憩室を覗くと若い人達が大勢休んでいました。


私達の様な若い令嬢は未婚の人が多いので、殿方の目を気にせずに休むのが主な目的です。

皆さん男の人の前では、良く見せようと頑張り、緊張を強いられているからでしょう。


何人か顔見知りの令嬢に挨拶をして、奥のソファーへと歩いて行くと、横からまたあの嫌~な声が…


「あ~ら、リディアーヌ様じゃありませんか。
今、あなたの事を話していましたのよ」
数人の令嬢がイライザの後ろで座っているのが見えた。
また、勝手な事を言いふらしていたのでしょう。

迷子になるくらいに広い所なのに、会いたくない人と必ず会ってしまうのはどうしてかしらね?

「今晩は。イライザ様、リディの話って何ですの?」

ルビアが私の前に立ちます。

「あっ… ルビア様もいらっしゃったんですね…」

イライザはちょっと気まずそうに目を逸らしました。

侯爵令嬢のルビアには強く出れないのです。

「あなた、またリディの悪口でも言っていらしたのかしら?」
ルビアの声が少し低くなった気がする。

「そ、そんな… 悪口だなんて。
私は真実を言っていたのです。
リディアーヌ様がマダムローラの店で既製品の安物ドレスを買っていたのをお見かけしたから、お父様が借金をされる程お金に困っていて、ドレスも作れないなんて可哀想だって!」

あーあ、この部屋全員に聞こえる程大きな声を張り上げて…
皆が注目しちゃったじゃない。

また、訂正しないといけないのね。
どうせイライザには伝わらないと思うけど…

まぁ今、ここにいる方達には伝わるだろう。

「あなた、何を仰っているの?」

わぁ!ルビアの声がまた一段低くなった。
これは相当頭にきていると思う。

「だって、本当の事ですわ!ルビア様。
ねえ、リディアーヌ様私達会いましたよね?
マダムローラのお店で」
勝ち誇ったように言うイライザの前に私は出て行きます。

「え? リディアーヌ様…
そのドレスは…」

目を丸くするイライザ。

「イライザ様、どう見てもこのドレスが既製品の安物には見えないと思いませんか?」
ルビアが畳み掛ける。

「そ、それは…」

「確かに、あなたとマダムローラの店でお会いしましたが、私は母がマダムと話している間、店内を見ていただけですわ」

「そんな! あなた1人だったじゃない!
エヴァリーヌ様なんていなかったでしょ?」

「エヴァリーヌ様とマダムローラは親友と言う程の仲ですのに、あなたがいるような店先で話などするはずがありませんでしょ?!」
ルビアが語気を強めて言う。

「それに、リディのこのドレスはご結婚相手のテオバルド・ロエベ様からのプレゼントですわ。
彼女は自分で準備しなくても、ちゃんと贈ってくれる相手がいるのに、既製品など買う訳がないでしょう?」


周りでヒソヒソと聞かれるイライザへの言葉…
「やっぱり…」
「また嘘でしたのね」
「懲りない方…」

本当に懲りない…

「これ以上、変な噂をたてないで下さいな。
今度は許さなくってよ」
最後にルビアが釘をさす。

私に売られたケンカだと思うのだけど…
何もしないうちに終ったようです。

その後は先程のお母様の様に私は皆に囲まれてドレスについてあれこれ聞かれる事になりました。


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