【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり

文字の大きさ
上 下
17 / 28

物語の番外編

しおりを挟む
一体、何が起こった、というのでしょう?

学園長の終わりの言葉を待っていたかのように発せられた言葉に、学園長もポカンと大きな口を開けて呆然としている。


私?それ以上に羞恥心の方が先に立つわよ?


だって、やっと!皆に注目されていたこの場から立ち去れるところだったのよ。


なのに!大きな声で呼び止められただけでなく、よ?


何、これ。何の罰ゲーム?もしかして私にも罰は用意されていたって事なの?



見事な金髪をかきあげながら容姿の整った卒業生と思しき男子生徒が、後ろからツカツカと歩み寄ってきて私の前に回って跪く。


「月の女神のように美しく、淑女の立ち居振る舞いも完璧な貴女に陰ながら想いを寄せていました。

しかし、貴女はアルフリート殿下の婚約者であり健気に尽くす姿に黙って身を引くつもりでした。

しかし、今はもう貴女は自由の身だ!もう私は遠慮はしません。

このザガンド国第七王子ローレンス・ザガンドと結婚して下さい!

勿論、貴女のお心が落ち着くまで婚約期間を設けます。ですからどうぞ遠慮なさらずに私の手をお取り下さい」


そう言ってローレンス様は私に手を差し出しました。


え~と、、、、確かに留学生で居ましたわね、彼。何度かお話させて頂いた記憶もあります。


ですけれど、それだけよね?それだけなのに私に想いを寄せていたの?全く気付かなかったんですけど!


あ、陰ながら、と言っていたわね。それは気づかないか。


って、ちっがぁ~うっ!


それだけの関係なのに、があった後で、しかもこの場でなんてする?


なんで恥の上塗り、じゃないな、私がした訳でもないもん。恥を勝手に塗りつけられてるが正解じゃない?兎に角、恥ずかしいに恥ずかしいを重ねられて目眩がしてくるんですけどぉ!


あ~、また現実逃避したくなってきた。倒れちゃっていいかなぁ。


「「「「ちょっと、待ったぁ~!!」」」」


周囲から揃えたかのように声が上がった。



何、その古臭い掛け声、、、。


「傷ついたミレーヌ嬢を幸せに出来るのは僕だけです!」


「いいや、私だけだ!ミレーヌ嬢、貴女の気持ちは私が一番分かっています。どうか私と一緒になって下さい」


「家格が釣り合わないと身を引きましたが、今なら貴女を幸せに出来ると自信を持って言えます!ですからどうか僕と!」


何人かの男子生徒が私の前に出てきて口々に叫び出した。


何なの?モテ期?いや、違うわよね。最後の男子なんて、なんかちょっと失礼な事言ってない?


・・・あぁ、最初にアルに婚約破棄された時にニヤニヤしながら私を見ていた生徒たちね。

ローレンス様はどこに居たのかは知らないけれど。まぁ、7番目の王子だと国でも他国でも影が薄いのかもね。



「「「「さぁっ!」」」」


他の卒業生たち、特に女生徒たちは、揃って私に手を差し出す彼らと私を交互に見て、呆れと私への同情を隠す事なく憐れみの瞳で見ているわ。


そりゃあ、そうよね。こんなの、全然羨ましくなんて無いでしょうね。本当にただの愉快な見せ物じゃない!


次第に私の身体が怒りでプルプルと震えてくる。ついでに涙も。


私の態度に彼らは『感動している』と勘違いしたのか、喜びの表情を向けてくる。


誰が感動するか!嬉し涙じゃなくて悔し泣きだわっ!



「・・・・・です」


「「「「えっ?」」」」


ボソリと呟いた言葉は彼らには届かなかったらしい。


一昨日おととい来やがれ、ですわっ!」


悔し涙を目にいっぱい溜めたまま、キッと彼ら睨むように見て言った。


「散々、私が助けて欲しい、と目で訴えていた時には知らんぷりで言い寄ってくる人たちなんて、ぜぇ~ったいお断りです!」


私の言葉と淑女とは思えない振る舞いに彼らは口をポカンと開けて呆気に取られている。アルたちやお父様、そして会場中の人たちもそうだ。


「あなたたちだけでなく、会場の皆様も同じですわっ!

婚約解消となり私には婚約者が居ない状態になりますが、今日、この場に居る男性とは絶対に、何があっても婚約いたしませんっ!!!」


会場中を見渡して大声でハッキリと言った。言ってやったわ!!


確かにアルとの婚約は解消になる。瑕疵のついた私でも家柄はそれなりに旨味のある公爵家の令嬢だ。しかも父親はこの国の宰相でもある。


だから、婚約者が居ない私を伴侶に、と望む人がいるのも分かる。それにいずれ、家の為にも誰かと結婚しなければいけないだろう事も分かっている。


でも、アルに婚約破棄された時、同情の目を向けられる事はあっても誰ひとり、私の側に寄ってきて助けようとしてくれる人は居なかった。


お父様も友人たちも『やっちまえ!』じゃ無いのよ!そう思うなら側に来て援護射撃をして頂戴、ってやつよ!


あぁ、お父様がまた私の気持ちを察してか、顔色を悪くしてるわね。友人たちも私の気持ちに気づいたのか、済まなそうな顔をして近づいて来ようとする。


もう、いいやっ!皆の前で恥もかいたし、こうして淑女の仮面も剥がれ落ちた。だからー。


「私はもう、婚約なんて、、、」


泣きながらそう言いかけた時、会場の入り口の閉じてあった扉がバンっと大きな音を立て勢いよく開いた。


「いつまで待ってもお声が掛からないので勝手に入って来てしまいました。

ですが、パーティーも始まっておらず、一体、これは何の騒ぎなのですか、?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...