285 / 288
ハドソン領 花街道(仮)
一番星食堂にて 3
しおりを挟む
『花街道(仮)活性化計画』を提案した時、各村や町限定の料理を、と考えはしたんだよね。ハドソン伯爵家にアイスクリームの料理レシピを売った時みたいにね。
まだ登録していない前世の料理だったらまだまだあるから余裕なんだけどさ。
でもそのレシピを誰が購入するのか、と考えたら色々問題が出てくるだろうなぁ、と思った。
単純に誰が料理レシピの購入代金を負担するのか?という問題もある。
ハドソン伯爵家や領が負担するのなら、レシピを一般公開し販売する方法を時期をみて選択すると思う。
レシピを非公開にして、花街道(仮)に客を誘導するよりは、手っ取り早く楽に稼げるからだ。
そうなると『花街道(仮)活性化計画』の趣旨からは外れてしまうだろう。ハドソン領の良い収入源にはなるだろうけれど。
それでは街道沿いの村や町からの要望や問題は一時的にしか解決しない。
でも、街道沿いの村や町が購入代金を支払うのも現実的ではないんだよね。
レシピの予想売上などを考慮して決めるレシピの権利の売買では、言い値で取引するような、金額なんて有って無いようなもの。そして高額になる事が多い。
それでも料理レシピの権利は安くあってはならない。レシピを考案した人の才能と努力を安売りしてはいけないからだ。
まぁ、だからこそ大半の料理の考案者が、自分で商業ギルドにレシピの登録をするんだけれどね。
料理レシピを考案者から買取りするのは、貴族か大きな商会とかなんじゃないかな?
そもそもが依頼を受けて考案し売買されているのだと思う。
だからいきなり王都から離れた地方貴族の、そのまた小さな村や町が、料理レシピを買い取るなんていう話はたぶん前例がないと思う。
エトリナ商会が登録した料理レシピは領主様のお墨付き、と言われても、それなりの金額を投じて料理レシピを買う事を決断するのは代表者一人だけでは出来ない。何より安くない金額のお金を工面するのは難しいだろう。
それにその方法で上手くいったとしても、レシピ非公開の料理が人気になった時、レシピを公開した方が簡単に稼げる、と考える代表者が出てきたら?
村や町の財源が潤沢になったとしても、収入が増える住民はそう多くないと思う。
例えば、この村には食事を提供する店は二軒だけだ。それ以外の住人は他の職業に就いていて、限定料理目当ての訪問客が増えたところで村、は賑わっていても他の職業の人たちの収入は増えない。
だから料理だけではダメなんだよね。
昨日、アシュトンさんにアイビー村の村長さんが出した嘆願書を見せてもらったけど、『アイビー村には訪問客が来ない。何とかして下さい。』というような、本当にフワッとした内容だけが書かれたものだった。
そんなフワッとした嘆願書を出しておいて、『領主様が何とかしてくれるから!』と村内で言って回るのは如何なものかと思う。
村長さんたちとは午後に話し合いをする事になっているから、その時に色々と確認を取ろうと思っている。
「私が代表をしているエトリナ商会はまだ作ったばかりの小さな商会で、今は料理レシピの考案と登録、そして考案した料理を宣伝する為に屋台販売をしながら旅をしている最中なんです。
調味料のレシピ販売は珍しいかも知れませんが、商会を立ち上げてから幾つか登録しています。昨日のマヨネーズとケチャップもそうです。
一番星食堂さんでは、今までに商業ギルドで料理のレシピを購入した事はありますか?」
「え?レシピの購入はした事は無いわね。スープは昔からあるこの国の定番料理だし、ハイドの作る料理は昔から彼が作っているものよ?」
「俺が作っている料理の大半は無料公開になった料理レシピを利用している。料理人見習いの時に商業ギルドに何度も足を運んで得たレシピだな。
修行先では技術は学べても、店で出す料理のレシピは秘匿されている事もよくあるんだ。進んで教えてくれるのは無料公開されている料理ぐらいなものだ。
自分たちが考案した料理、金を払って作っている料理のレシピは見習いなんかに無料で教える事はしたくねぇ、ってな。」
ハイドさんがメアリーさんの言葉の補足しながら隣に座った。どうやら仕込みは終わったみたいだ。
けど、そっか。当たり前だけど、食事を提供する店全てが料理レシピを購入している訳じゃないんだね。
年数が経てば無料公開になるレシピもあるし、一般家庭で作られる家庭料理もレシピを買って作っている訳じゃない。
それに商業ギルドがある街から離れた場所にある村や町に住んでいたら、料理レシピを購入する事もそう多くは無いのも分かるし、どうせなら無料公開されている料理を覚えて帰った方が使用料は掛からない。
そう考えると今回、レシピの代理購入申請が出来るように商業ギルドに掛け合ったのは正解かも。
レシピの購入は基本は商業ギルドで行うものだけど、実は購入申請用紙の持ち出しを今回に限り、ウィリアムさんから許可を貰っていたのだ。
領主から依頼された『花街道(仮)活性化計画』をスムーズに進める為に。
立ち会いはハドソン伯爵家の代理人のアシュトンさんが務め、契約成立となったら後日、纏めて提出する事になったのだ。
契約成立の場合は、私が直接料理の手順の説明と実践も担当する。だから態々、領都に足を運ばなくても、購入した当日に店での販売も可能になっている。
レシピを購入してくれれば、の話なんだけどね。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
まだ登録していない前世の料理だったらまだまだあるから余裕なんだけどさ。
でもそのレシピを誰が購入するのか、と考えたら色々問題が出てくるだろうなぁ、と思った。
単純に誰が料理レシピの購入代金を負担するのか?という問題もある。
ハドソン伯爵家や領が負担するのなら、レシピを一般公開し販売する方法を時期をみて選択すると思う。
レシピを非公開にして、花街道(仮)に客を誘導するよりは、手っ取り早く楽に稼げるからだ。
そうなると『花街道(仮)活性化計画』の趣旨からは外れてしまうだろう。ハドソン領の良い収入源にはなるだろうけれど。
それでは街道沿いの村や町からの要望や問題は一時的にしか解決しない。
でも、街道沿いの村や町が購入代金を支払うのも現実的ではないんだよね。
レシピの予想売上などを考慮して決めるレシピの権利の売買では、言い値で取引するような、金額なんて有って無いようなもの。そして高額になる事が多い。
それでも料理レシピの権利は安くあってはならない。レシピを考案した人の才能と努力を安売りしてはいけないからだ。
まぁ、だからこそ大半の料理の考案者が、自分で商業ギルドにレシピの登録をするんだけれどね。
料理レシピを考案者から買取りするのは、貴族か大きな商会とかなんじゃないかな?
そもそもが依頼を受けて考案し売買されているのだと思う。
だからいきなり王都から離れた地方貴族の、そのまた小さな村や町が、料理レシピを買い取るなんていう話はたぶん前例がないと思う。
エトリナ商会が登録した料理レシピは領主様のお墨付き、と言われても、それなりの金額を投じて料理レシピを買う事を決断するのは代表者一人だけでは出来ない。何より安くない金額のお金を工面するのは難しいだろう。
それにその方法で上手くいったとしても、レシピ非公開の料理が人気になった時、レシピを公開した方が簡単に稼げる、と考える代表者が出てきたら?
村や町の財源が潤沢になったとしても、収入が増える住民はそう多くないと思う。
例えば、この村には食事を提供する店は二軒だけだ。それ以外の住人は他の職業に就いていて、限定料理目当ての訪問客が増えたところで村、は賑わっていても他の職業の人たちの収入は増えない。
だから料理だけではダメなんだよね。
昨日、アシュトンさんにアイビー村の村長さんが出した嘆願書を見せてもらったけど、『アイビー村には訪問客が来ない。何とかして下さい。』というような、本当にフワッとした内容だけが書かれたものだった。
そんなフワッとした嘆願書を出しておいて、『領主様が何とかしてくれるから!』と村内で言って回るのは如何なものかと思う。
村長さんたちとは午後に話し合いをする事になっているから、その時に色々と確認を取ろうと思っている。
「私が代表をしているエトリナ商会はまだ作ったばかりの小さな商会で、今は料理レシピの考案と登録、そして考案した料理を宣伝する為に屋台販売をしながら旅をしている最中なんです。
調味料のレシピ販売は珍しいかも知れませんが、商会を立ち上げてから幾つか登録しています。昨日のマヨネーズとケチャップもそうです。
一番星食堂さんでは、今までに商業ギルドで料理のレシピを購入した事はありますか?」
「え?レシピの購入はした事は無いわね。スープは昔からあるこの国の定番料理だし、ハイドの作る料理は昔から彼が作っているものよ?」
「俺が作っている料理の大半は無料公開になった料理レシピを利用している。料理人見習いの時に商業ギルドに何度も足を運んで得たレシピだな。
修行先では技術は学べても、店で出す料理のレシピは秘匿されている事もよくあるんだ。進んで教えてくれるのは無料公開されている料理ぐらいなものだ。
自分たちが考案した料理、金を払って作っている料理のレシピは見習いなんかに無料で教える事はしたくねぇ、ってな。」
ハイドさんがメアリーさんの言葉の補足しながら隣に座った。どうやら仕込みは終わったみたいだ。
けど、そっか。当たり前だけど、食事を提供する店全てが料理レシピを購入している訳じゃないんだね。
年数が経てば無料公開になるレシピもあるし、一般家庭で作られる家庭料理もレシピを買って作っている訳じゃない。
それに商業ギルドがある街から離れた場所にある村や町に住んでいたら、料理レシピを購入する事もそう多くは無いのも分かるし、どうせなら無料公開されている料理を覚えて帰った方が使用料は掛からない。
そう考えると今回、レシピの代理購入申請が出来るように商業ギルドに掛け合ったのは正解かも。
レシピの購入は基本は商業ギルドで行うものだけど、実は購入申請用紙の持ち出しを今回に限り、ウィリアムさんから許可を貰っていたのだ。
領主から依頼された『花街道(仮)活性化計画』をスムーズに進める為に。
立ち会いはハドソン伯爵家の代理人のアシュトンさんが務め、契約成立となったら後日、纏めて提出する事になったのだ。
契約成立の場合は、私が直接料理の手順の説明と実践も担当する。だから態々、領都に足を運ばなくても、購入した当日に店での販売も可能になっている。
レシピを購入してくれれば、の話なんだけどね。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
79
お気に入りに追加
744
あなたにおすすめの小説
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~
細波
ファンタジー
(3月27日変更)
仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる…
と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ!
「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」
周りの人も神も黒い!
「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」
そんな元オッサンは今日も行く!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる