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ハドソン領 花街道(仮)

 花街道(仮)活性化計画 1

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「もう一度確認しますが、街道沿いの、、、え~と、面倒なので、今回の『街道沿い村や町の活性化改善計画』を略して、『花街道(仮)活性化計画』という名前でいいですかね?」

「略されてないだろう。カッコ、かり、カッコ、って何だよ?」

私の正面に座るクリスからツッコミが入った。因みにアシュトンさんは私たちの間、所謂いわゆる、お誕生日席で話を聞きながら、カーターさんのようにノートに必要な事を記入している。

 村長さんと相談して、一泊一人銀貨一枚で借りる事になった空き家は、人が居なくなってあまり時間が経っていなかったので、一時間もあれば掃除は完了した。
先に掃除を初めていたアシュトンさんが優秀だったお陰もある。

 そこで夕飯までの間、一階の食堂兼リビングらしき場所に集まって、アシュトンさんと打ち合わせをする事になったのだ。 

 この家は何かの商売をしていたのか、玄関の扉を開けて直ぐの左手側に七、八人は座れる大きなテーブルがある。窓側の誕生日席の向こうに、三人ぐらいが座れるソファも置いてあった。
今はその反対の台所寄りの場所に、三人で座って打ち合わせをしている。


「カッコとかカギカッコっていう記号も無いの?
 (仮)は仮の名前や仮称を略したもので、題名や名前が正式に名前が決まっていない時に、これは仮の名前ですよ~、と見た人が分かるようにしているの。

あ、この記号がカッコね。左右のカッコの間に仮と書く事で成立する表記だよ。
カッコはカリ以外の文字を囲む他の使い方もあるけど今は省くね。」

 この説明で分かってくれるかなぁ。" 仮 "、と漢字で書けたら見た目がまだサマになると思うけど、漢字はこの世界に無いしなぁ。
あ、もしかしたらジパーンには有ったりして?

 漢字ではなくこの国の文字で、" カリ "、と書いてあるのはなんとなく間抜けに見えるのはご愛嬌、ってことでそこは目を瞑って欲しい。

「言ってる事は分かったが、それ必要か?

花や木を植えて、ティアナが言ったような街道にするなら、名称は花街道で良いんじゃないか?」


 私が提案した街道自体に魅力を持たせる、という案は採用されている。但し、費用面や実際の街道の様子を考慮して、最初から街道全体を大々的に整備する訳ではない。

 馬車が実際に通る道の凹凸の激しい場所や泥濘やすい場所など、元から問題のありそうな道自体を先ずは整備をする。

 確かに花よりも道自体が整備されれば、馬車の走行も今までよりも快適になるだけじゃなく、馬車の移動時間も多少は短くなる可能性もある。

 実際、領都から一時間の距離でさえ、ガタガタ道になっている場所があり、アシュトンさんがスピードを落としてゆっくりと走ってくれていた。
それでも馬車はかなり揺れていて、クッションが無かったらもっとお尻が痛かったと思う。

 そして道沿いに花や木を植える案については、先に花を植える事から始める事になった。花を植えていくだけなら然程時間を掛けずに短期間で作業を終える事が出来るからだ。
 更に街道沿いに花を植えて整備後に、街道を通る人の反応を見る事が出来る。

ここで話題になるのか、ならないのか?

 それによって大掛かりな作業で、成果も時間の掛かる木々を街道沿いに植樹するかどうかの最終判断をする予定だ。

 街道沿いに花を植えるのだってバーナード様は効果を怪しんでいるのに、その上、木を植えて並木道にする事についてはその美しい景観を想像し難いらしい。そう思う文官の人たちもきっといるだろうね。本当に綺麗なんだけどなぁ~。


「まぁ、そうなんだけれどね。先に名前を公表するよりも、完成してから正式に決めた方が良いと思うんだよ。

 バーナード様が道沿いに植える花の候補を花屋に相談しながら選定を進めているでしょう?

植える花によっては、例えば『マーガレット街道』とか植えた花や花の色をイメージそた名前の方が名称的にしっくりくる可能性もあるからさ。」

 ほら、子どもの名付けもそうでしょ?
幾つか候補を挙げておいて、最終的には生まれた子どもを見て名前を決める事が多いって聞くよね?

「だからさ、花街道は仮の名称でいいんだよ。短いし言い易いしね。」

「そうですね。ティアナ様の意見も一理あります。バーナード様が選ぶ花に不安が、、、。

 いえ、婚約者である侯爵令嬢のアリサ様も計画に参加されるそうなので、花の選定は実質、アリサ様がする事になるでしょう。
そうしましたらアリサ様も街道の名称決めに拘りも出てくる事になるか、と。」

確かに!

 イマイチこの街道沿いに花を植える案については、バーナード様は懐疑的だ。しかも女心もまるっきり理解していない朴念仁だ。花言葉なんかにも疎そうだよね。

 きっと花の選定にはアリサ様の意見が多く反映されるだろう。
そしてそれはアリサ様若しくはアリサ様の妹、母親、それに友人たちから王都の社交界に広められる可能性が高い。

 だって手紙でアイスの事を自慢するぐらいだよ?
アリサ様主導で植える花が決められて、それなりに見栄えのする景色になれば、アリサ様、きっと自慢するよね?

「あ、アシュトンさん。ハドソン伯爵の許可が出るなら、是非、この街道の命名をアリサ様にお願いして下さい。

 そしてアリサ様か、ハドソン伯爵家がパトロンになった芸術家さんたちに、花を植える事で出来上がる絵画、若しくは鳥や動物、デザインなどの下絵を依頼して下さい。
それを馬車から見える目線の場所に花を使って製作して下さい。
アリサ様ご自身で考えた絵でも良いですし、そうじゃなくても構いません。

 彼女がで、彼女がを植えたなら、それは彼女の功績になると思います。

 注意点は絵画を見るのと馬車から眺めるのでは、目線から見えたから違って見える事です。
花が上を向いて咲いているか、スズランやユリのように花弁を下向きに咲いている場合では、見える色合いが変わってきます。

この辺は庭師や画家の方の意見を聞きながら植えると良いと思います。」

「あぁ、アリサ様にお願いする事によって、やコーナン侯爵家、それと交友関係から注目を集める事を狙っているんですね。

 アリサ様は面白そうな事には後先考えず、自ら首を突っ込んでいく方ですし、これは他にはない生きた花を使用した芸術、と言っても良いでしょう。

 きっと家族だけでなく、ご友人たちにも自 慢ほうこくするでしょうね。良い案だと思います。」


 察しの良いアシュトンさんは、私が何を思ってアリサ様に街道の命名権を、と言ったのかを直ぐに理解してくれたらしい。

でも、アリサ様の事を話すアシュトンさんの言葉が辛辣に聞こえたのは気のせい、だよね!?


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 ここまでお読み下さりありがとうございます。

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