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ハドソン領 花街道(仮)

 空き家を借りる

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 一、ニ日、泊まるだけならば、村長さんのお宅に泊まるのも致し方無いと思う。
 でも、アイビー村の改善・活性化について話し合うのに、毎回この状況は無理でしょう。

 家に泊まるのを遠慮したい理由をハッキリと村長さんに言ってしまったら、話し合いの度に子どもたちが外に出されたり預けられたりする可能性もあるよねぇ。

 笑い話のように村長さんは言っていたけれど、子どもにとっては突然、自分の部屋を知らない人に譲らなきゃいけないなんて納得出来ないよね。

 今まで自分の部屋だったのにいきなり兄弟の部屋に追い出される。追い出された方も納得出来ないけれど、元々の部屋の子どもの方だって不満はあるよね。自分一人の部屋なのに、急に兄弟と一緒に使えと言われたらさ。

 どうしようかなぁ。

「あの、村長さん。この村で空き家になっている家はありますか?

 もしあるならこの村に滞在中はその家を借りて過ごしたいです。それとアイビー村についての話し合いもその家で行うというのはどうでしょう?」


「は?え?空き家、ですか?そりゃあ、まぁ、村で管理している空き家が幾つかありますが。

 でも掃除もしてませんし、ベッドだってありゃしませんよ?」

 いきなり空き家があるのかを聞かれて村長さんが戸惑うのも分かる。数日間、滞在するだけの人間に家を貸すという発想は無いのだろう。
私としては貸し別荘やウィークリーマンションみたいな感じで借りたいんだけど。

 それに『アイビー村に客が来て欲しい。』とか『アイビー村の収入を増やしたい。』みたいな要望を持っているのだとしたら、最低一軒は宿屋があった方が良くない?

 領都から馬車で一時間だから、といったって、『アイビー村に泊まりたい。』と思った人もいたかも知れない。
 私たちみたいに仕事の関係で村に数日間滞在したくても、泊まる場所がなければそれも出来ない。それに村長さんだって、誰彼構わず泊める事はしないだろう。


「実はエトリナ商会では料理レシピを登録して販売をしています。先程のマヨネーズやケチャップも商会で考えた調味料になります。」

「あぁ!あの調味料を使ったホットドッグ、でしたかな?あれは美味しかった。いやぁ、毎日食べたいぐらいですな。

で、それが空き家を借りるのとどういう関係が?」


 村長さんは私の言葉でお昼に食べたなんちゃってホットドッグの味を思い出したのか、お腹をさすりながらニコニコして言ったかと思うと、次の瞬間、真顔になって聞かれてしまった。
確かに料理レシピの販売に空き家には関係ないけどね。


「はい。例えば、ですが、アイビー村の特産品となる食材があれば、領都などに売り込む為に、その食材を使った料理の試作を何度もする可能性もあります。

その為に村長さんのお宅の台所を独占して借りるのはご迷惑になりますよね?
私が好きな時間に好きなように調理をする為にも空き家を借りたいんです。」

 まさかお孫さんたちに無駄な喧嘩をさせない為、気が散って話し合いが出来ないから、とは言えないよねぇ。

それに親戚、友人の家に泊まるならまだしも、初めて会った人の家に泊まるのは泊まる側だって気を使うよ。
ましてやお孫さんを無理に追い出して泊まるなんて罪悪感を感じて、部屋で落ち着ける訳がない。

「アイビー村の特産品ですか?

あぁ、有るといえば有りますがねぇ。料理に使えるかどうかは、、、。

 でも、まぁ、そういう理由でしたら、ここから五分ほど歩いた場所に、ひと月前に空き家になった家がありますのでそこを使いますか?

その家なら掃除もそれ程大変じゃないでしょうし、多少の家具や掃除や料理に使う道具も残ってるかも知れんなぁ。無かったらウチのを持ってって下さい。」


「あ、それは大丈夫です。そう見えないかも知れませんけど、これでも商人ですから魔法鞄持ちなんですよ。
ベッドも調理器具から食材まで全部持ち歩いてますから!」


 その後、案内された空き家で、村長さんが居なくなったと同時にクリスの説教タイムが始まった。
 空気の読めるアシュトンさんはサッサと二階に上がって掃除を始めてしまい、クリスの説教タイムが私の予想よりも三十分は増えたと思う。


でもさぁ。屋台だって普段は魔法鞄の中に入っているんだよ?

 目の前で出し入れしなくたって、『どこに持っていたんだ!?』疑問に思うでしょ。旅をしながら自前の屋台を使って商売しているならもう仕方なくない?

 大声で言いふらして歩いているなら問題だけど、限られた場所で商談相手になら言っても良いと思うんだけど。

そんな風に控えめに反論したら、『お前の態度が問題なんだ!』とお叱りを受けてしまった。
言い方が軽かったから?
それとも自慢げに聞こえていたとか?

ドヤ顔して言ったつもりは無いんだけどなぁ。



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 ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
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