捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

文字の大きさ
286 / 439
ハドソン領 花街道(仮)編 アイビー村

 空き家を借りる

しおりを挟む
 一、ニ日、泊まるだけならば、村長さんのお宅に泊まるのも致し方無いと思う。
 でも、アイビー村の改善・活性化について話し合うのに、毎回この状況は無理でしょう。

 家に泊まるのを遠慮したい理由をハッキリと村長さんに言ってしまったら、話し合いの度に子どもたちが外に出されたり預けられたりする可能性もあるよねぇ。

 笑い話のように村長さんは言っていたけれど、子どもにとっては突然、自分の部屋を知らない人に譲らなきゃいけないなんて納得出来ないよね。

 今まで自分の部屋だったのにいきなり兄弟の部屋に追い出される。追い出された方も納得出来ないけれど、元々の部屋の子どもの方だって不満はあるよね。自分一人の部屋なのに、急に兄弟と一緒に使えと言われたらさ。

 どうしようかなぁ。

「あの、村長さん。この村で空き家になっている家はありますか?

 もしあるならこの村に滞在中はその家を借りて過ごしたいです。それとアイビー村についての話し合いもその家で行うというのはどうでしょう?」


「は?え?空き家、ですか?そりゃあ、まぁ、村で管理している空き家が幾つかありますが。

 でも掃除もしてませんし、ベッドだってありゃしませんよ?」

 いきなり空き家があるのかを聞かれて村長さんが戸惑うのも分かる。数日間、滞在するだけの人間に家を貸すという発想は無いのだろう。
私としては貸し別荘やウィークリーマンションみたいな感じで借りたいんだけど。

 それに『アイビー村に客が来て欲しい。』とか『アイビー村の収入を増やしたい。』みたいな要望を持っているのだとしたら、最低一軒は宿屋があった方が良くない?

 領都から馬車で一時間だから、といったって、『アイビー村に泊まりたい。』と思った人もいたかも知れない。
 私たちみたいに仕事の関係で村に数日間滞在したくても、泊まる場所がなければそれも出来ない。それに村長さんだって、誰彼構わず泊める事はしないだろう。


「実はエトリナ商会では料理レシピを登録して販売をしています。先程のマヨネーズやケチャップも商会で考えた調味料になります。」

「あぁ!あの調味料を使ったホットドッグ、でしたかな?あれは美味しかった。いやぁ、毎日食べたいぐらいですな。

で、それが空き家を借りるのとどういう関係が?」


 村長さんは私の言葉でお昼に食べたなんちゃってホットドッグの味を思い出したのか、お腹をさすりながらニコニコして言ったかと思うと、次の瞬間、真顔になって聞かれてしまった。
確かに料理レシピの販売に空き家には関係ないけどね。


「はい。例えば、ですが、アイビー村の特産品となる食材があれば、領都などに売り込む為に、その食材を使った料理の試作を何度もする可能性もあります。

その為に村長さんのお宅の台所を独占して借りるのはご迷惑になりますよね?
私が好きな時間に好きなように調理をする為にも空き家を借りたいんです。」

 まさかお孫さんたちに無駄な喧嘩をさせない為、気が散って話し合いが出来ないから、とは言えないよねぇ。

それに親戚、友人の家に泊まるならまだしも、初めて会った人の家に泊まるのは泊まる側だって気を使うよ。
ましてやお孫さんを無理に追い出して泊まるなんて罪悪感を感じて、部屋で落ち着ける訳がない。

「アイビー村の特産品ですか?

あぁ、有るといえば有りますがねぇ。料理に使えるかどうかは、、、。

 でも、まぁ、そういう理由でしたら、ここから五分ほど歩いた場所に、ひと月前に空き家になった家がありますのでそこを使いますか?

その家なら掃除もそれ程大変じゃないでしょうし、多少の家具や掃除や料理に使う道具も残ってるかも知れんなぁ。無かったらウチのを持ってって下さい。」


「あ、それは大丈夫です。そう見えないかも知れませんけど、これでも商人ですから魔法鞄持ちなんですよ。
ベッドも調理器具から食材まで全部持ち歩いてますから!」


 その後、案内された空き家で、村長さんが居なくなったと同時にクリスの説教タイムが始まった。
 空気の読めるアシュトンさんはサッサと二階に上がって掃除を始めてしまい、クリスの説教タイムが私の予想よりも三十分は増えたと思う。


でもさぁ。屋台だって普段は魔法鞄の中に入っているんだよ?

 目の前で出し入れしなくたって、『どこに持っていたんだ!?』疑問に思うでしょ。旅をしながら自前の屋台を使って商売しているならもう仕方なくない?

 大声で言いふらして歩いているなら問題だけど、限られた場所で商談相手になら言っても良いと思うんだけど。

そんな風に控えめに反論したら、『お前の態度が問題なんだ!』とお叱りを受けてしまった。
言い方が軽かったから?
それとも自慢げに聞こえていたとか?

ドヤ顔して言ったつもりは無いんだけどなぁ。



 ーーーーーーーーーーーーーーー


 ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

私が張っている結界など存在しないと言われたから、消えることにしました

天宮有
恋愛
 子爵令嬢の私エルノアは、12歳になった時に国を守る結界を張る者として選ばれた。  結界を張って4年後のある日、婚約者となった第二王子ドスラが婚約破棄を言い渡してくる。    国を守る結界は存在してないと言い出したドスラ王子は、公爵令嬢と婚約したいようだ。  結界を張っているから魔法を扱うことができなかった私は、言われた通り結界を放棄する。  数日後――国は困っているようで、新たに結界を張ろうとするも成功していないらしい。  結界を放棄したことで本来の力を取り戻した私は、冒険者の少年ラーサーを助ける。  その後、私も冒険者になって街で生活しながら、国の末路を確認することにしていた。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

処理中です...