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ハドソン領 領都
謝罪 1
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「少しいいかな?」
クレア孤児院でお別れしてハドソン伯爵邸に着くと、伯爵に言われた。
お忍び用の馬車らしきものが用意されていて、直ぐに出発するのかと思っていたのだけれど、一旦、執務室へと向かった。
執務室前で伯爵はバーナード様やカーターさんたちに目配せをすると、部屋には私とクリスの二人だけが通された。
ジョセフさんは執務室の外で待つように指示された瞬間、不快そうにピクリと眉が動いていた。誤解は解けたといっても長年のお母様への恨みは根深のだろうね。
まぁ、私も許す気はないから別にいいけど。
伯爵は私たちをソファへ座るように促すと、テーブル脇に用意されていた紅茶を手ずから淹れて出してくれた。
「どうぞ。これは隣国を拠点に手広く商売をしている商会から取り寄せているものでね。この国では殆ど流通していないものなんだ。」
淡いオレンジ色でこの香りはダージリンティーかな?
「この紅茶は面白くてねぇ。仕入れた時期によって色、味、香りが全く違ってくるんだ。
私はもう少し濃い色になる茶葉の方が好みでね。やや渋みが増すがコクがあり口に含んだ時にフルーツを食べた時のような爽やかな味になるのが意外性もあって好きなんだよ。」
それは二番摘みの茶葉だね。初夏ぐらいの時期だったけかな。その時期に摘んだ茶葉が最高級とか言われてたんじゃないかな。
でもストレートで飲むなら私には一番摘みっぽいこの紅茶がいいかな。秋摘みの茶葉だったらミルクを入れてミルクティーで飲みたいところだけど。
「この紅茶は摘んだ時期で、ランク付けというか、名前や価格を変えているのでしょうか?」
「ランク付け、かい?さぁ、購入する時に時期によって価格が変わるとは聞いているが、友人に勧められて飲み始めたものだから詳しくは聞いていないんだ。」
「価格が変わるという事は味で判断しているだけなのか分かりませんが、この紅茶は茶葉を摘む時期で味も香りも変わります。
正式名称は私も詳しくありませんが、春先が" 一番摘み "で若々しい味わい、初夏が" 二番摘み "になり最高級品と言われています。この二つはストレートで飲んだ方が良いとされているようです。
最後が" 秋摘み "と言われていて、二番摘みより茶葉も厚く渋みを増すようですが、ミルクを入れてミルクティーにして飲むと美味しいらしいですよ。」
「・・・へぇ、君は本当に幅広い知識を持っているんだね。勧めてくれた友人に話してみるよ。」
実はバイトしていた喫茶店のマスターの受け売りなんだけどね。コーヒーについてもかなりレクチャーしてくれて、マスターが淹れるコーヒーは砂糖やミルクを入れなくても美味しかった。でも他で飲むコーヒーは苦く感じて、私は紅茶派だったんだよね。
「・・・こんな急かすような形で領都から出て行かせる事になって済まなかったね。
ジョセフやハンナをはじめ、この屋敷の者たちが君にした事について正式にしっかりと謝罪をしておきたかったんだ。結局、バタバタしていて今日まで謝罪出来ずに申し訳なかった。」
ハドソン伯爵はソファに座ったまま姿勢を正すと突然、私に頭を下げてきて、予想もしていなかった私は驚いてしまった。
確かにハドソン伯爵にはキチンと謝罪された記憶がなかったように思う。
あれは使用人たちの断罪の場のようだったけど、それぞれが何らかの罰を受けているようだったから『それでいいかな。』と思ってたんだよね。
魔法付きの誓約書にサインさせたらしいし、正直いつまでも彼らに拘るのも時間の無駄だと思ってた。そのついでにハドソン伯爵についても『どうでもいいか。もうビジネスパートナーとかでいいいじゃん。』みたいな?
他人に深入りして欲しくないなら、信用はしている関係、でいいんじゃないかな、と。
「大丈夫です。伯爵様はちゃんと彼らに誓約書に署名させて私を守ってくれましたし、養蚕の件でもそうですし。」
私がそう言うと、ハドソン伯爵はへにゃりと眉を八の字に下げてなんとも言えない表情になった。
「でも君は私をもう信頼していないだろう?何故、君を利用してジョセフたちの罪を明らかにしたのか、と。」
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
クレア孤児院でお別れしてハドソン伯爵邸に着くと、伯爵に言われた。
お忍び用の馬車らしきものが用意されていて、直ぐに出発するのかと思っていたのだけれど、一旦、執務室へと向かった。
執務室前で伯爵はバーナード様やカーターさんたちに目配せをすると、部屋には私とクリスの二人だけが通された。
ジョセフさんは執務室の外で待つように指示された瞬間、不快そうにピクリと眉が動いていた。誤解は解けたといっても長年のお母様への恨みは根深のだろうね。
まぁ、私も許す気はないから別にいいけど。
伯爵は私たちをソファへ座るように促すと、テーブル脇に用意されていた紅茶を手ずから淹れて出してくれた。
「どうぞ。これは隣国を拠点に手広く商売をしている商会から取り寄せているものでね。この国では殆ど流通していないものなんだ。」
淡いオレンジ色でこの香りはダージリンティーかな?
「この紅茶は面白くてねぇ。仕入れた時期によって色、味、香りが全く違ってくるんだ。
私はもう少し濃い色になる茶葉の方が好みでね。やや渋みが増すがコクがあり口に含んだ時にフルーツを食べた時のような爽やかな味になるのが意外性もあって好きなんだよ。」
それは二番摘みの茶葉だね。初夏ぐらいの時期だったけかな。その時期に摘んだ茶葉が最高級とか言われてたんじゃないかな。
でもストレートで飲むなら私には一番摘みっぽいこの紅茶がいいかな。秋摘みの茶葉だったらミルクを入れてミルクティーで飲みたいところだけど。
「この紅茶は摘んだ時期で、ランク付けというか、名前や価格を変えているのでしょうか?」
「ランク付け、かい?さぁ、購入する時に時期によって価格が変わるとは聞いているが、友人に勧められて飲み始めたものだから詳しくは聞いていないんだ。」
「価格が変わるという事は味で判断しているだけなのか分かりませんが、この紅茶は茶葉を摘む時期で味も香りも変わります。
正式名称は私も詳しくありませんが、春先が" 一番摘み "で若々しい味わい、初夏が" 二番摘み "になり最高級品と言われています。この二つはストレートで飲んだ方が良いとされているようです。
最後が" 秋摘み "と言われていて、二番摘みより茶葉も厚く渋みを増すようですが、ミルクを入れてミルクティーにして飲むと美味しいらしいですよ。」
「・・・へぇ、君は本当に幅広い知識を持っているんだね。勧めてくれた友人に話してみるよ。」
実はバイトしていた喫茶店のマスターの受け売りなんだけどね。コーヒーについてもかなりレクチャーしてくれて、マスターが淹れるコーヒーは砂糖やミルクを入れなくても美味しかった。でも他で飲むコーヒーは苦く感じて、私は紅茶派だったんだよね。
「・・・こんな急かすような形で領都から出て行かせる事になって済まなかったね。
ジョセフやハンナをはじめ、この屋敷の者たちが君にした事について正式にしっかりと謝罪をしておきたかったんだ。結局、バタバタしていて今日まで謝罪出来ずに申し訳なかった。」
ハドソン伯爵はソファに座ったまま姿勢を正すと突然、私に頭を下げてきて、予想もしていなかった私は驚いてしまった。
確かにハドソン伯爵にはキチンと謝罪された記憶がなかったように思う。
あれは使用人たちの断罪の場のようだったけど、それぞれが何らかの罰を受けているようだったから『それでいいかな。』と思ってたんだよね。
魔法付きの誓約書にサインさせたらしいし、正直いつまでも彼らに拘るのも時間の無駄だと思ってた。そのついでにハドソン伯爵についても『どうでもいいか。もうビジネスパートナーとかでいいいじゃん。』みたいな?
他人に深入りして欲しくないなら、信用はしている関係、でいいんじゃないかな、と。
「大丈夫です。伯爵様はちゃんと彼らに誓約書に署名させて私を守ってくれましたし、養蚕の件でもそうですし。」
私がそう言うと、ハドソン伯爵はへにゃりと眉を八の字に下げてなんとも言えない表情になった。
「でも君は私をもう信頼していないだろう?何故、君を利用してジョセフたちの罪を明らかにしたのか、と。」
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