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ハドソン領 領都
また会おうね
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領都を出発する日の朝。
「「「うわぁ~ん。いっちゃやだぁぁぁぁあ。」」」
私の足にアーシャちゃんとリコちゃんが。クリスの足元にはリン君、ルイ君に、とうとうクリスに泣きながらよじ登り始めた子もいる。
年少組の子も年中組の子たちも私たちの周りに集まって泣いていて、私も鼻の奥がツーンっとしてきた。でも、ここで私が泣いちゃダメな気がする。
最初は長くても一週間ぐらいの滞在かな、って思ってた。それが色々あって結局、二ヶ月近くクレア孤児院に滞在してしまった。
普段、外から人が訪ねて来る事の無いクレア孤児院で、私とクリスは初日から人見知りの筈の子どもたちに歓迎されていた。二ヶ月近くも一緒に暮らしていたらそりゃ、こうなるよねぇ。
昨日は運動会も楽しかったし、私たちが孤児院から居なくなるとういう事が、小さな子たちにはよく分かっていなかったのだろう。説明されてはいてもいつも通りに一緒にいたから。
それが今日、旅支度をした私とクリスの姿を見ていつもと違うって気付いたのだと思う。そう思われる程、子どもたちの中では私たちが孤児院に居る事が当たり前になっていたんだね。
私も昨日の子どもたちの姿にどこかで安心しちゃってたんだな。涙のお別れは辛いなぁ、って思っていたから、自分の都合の良いように勝手に思い込もうとしてたんだと思う。
子どもたちを悲しませてしまった事に罪悪感は感じる。私にも覚えのある感情だから。
前世で施設に居た頃に" 別れ "は何度も経験していて、たった二週間だけ実習に来ていた学生さんたちとの別れだって、小学生の頃は悲しくて何度も泣いた。
「ごめんね。私たち、旅をしながらお仕事をしているの。これからお仕事で他の町に行くんだ。」
アーシャちゃんとリコちゃんの肩に手を置いて視線が合う様にしゃがみ込む。
「おしごとおわったら、もどってくるぅ?」
『戻って来るよ。』と言えない事に、子どもたちの望む言葉を言ってあげられない自分にちょっと腹が立つ。
あ~あ。孤児院で生活するんじゃなくて、宿屋に泊まっていれば、子どもたちを泣かせずに済んだのかなぁ。後悔してももう遅いけど。
別れは辛い。寂しくて悲しい。
「またお仕事で来たら、クレア孤児院に泊めてくれるかな?」
未来の約束をしたら、泣き止んでくれるかな。悲しい気持ちも減ってくれるかな。
「「い、いいよぉ~。」」
ポロポロと泣きながら、それでも返事をしてくれる二人が可愛らしくていじらしくて、両手でぎゅーっと抱きしめる。
「あのね、クレア孤児院の皆の事が大好きだよ。
だからまた会いに来るよ。皆がどれだけ大きくなっているか、楽しみにしているから。
また会う日まで楽しみに待ってて。手紙もたくさん書くからね。」
出てくる言葉は、よくあるありふれた言葉で、子どもたちの悲しい気持ちを減らせたかどうかも分からない。希望になったのかどうかも分からない。
でもこれは約束だから。約束は絶対守るから。
心の中でそう言って、孤児院の子どもたち全員とハグをする。ミリーさんに抱っこをされているララちゃんと目が合う。体調を崩しやすくミリーさんに抱っこされている事の多いララちゃんとは殆ど会話をした事も無い。
流石にララちゃんとはハグ出来ないかな。
そう思った瞬間、ジッと私を見ていたララちゃんは私に向かってゆっくりと両手を広げてきた。咄嗟に私もララちゃんに向かって両手を出して、ミリーさんからララちゃんを受け取る。
「ララちゃんを診てくれるように、お医者さんにお願いしてくるから待っててね。きっと良くなる筈だから。」
何を言われているのか分からないララちゃんは、ジッと私を見上げていたと思ったら、ニコッと笑顔で抱きついてきた。
かわっ、可愛いぃ~!!
ハドソン領に来て貰えるように、絶対にジョー先生を説得するから!
そうしたらララちゃんも皆と同じように過ごせるようになるからね。
ララちゃんを抱き潰さないようにそっとぎゅーっとしていると目の前に影が出来た。
「ティアナさん、クリスさん。うぅっ。ありがとう!
本当に寂しくなるわ。でも、でも、わたくしもここの院長として、今まで出来なかった分も、頑張りますわっ!
ですから、絶対、絶対、また子どもたちに会いに来てちょうだいぃ。」
あぅっ!
ロ、ロナリー院長~。ララちゃんごと私を抱きしめないでぇ。潰れるっ!ララちゃんが潰れちゃうっ!!
感極まって涙を浮かべながら抱きしめてくるロナリー院長の姿と、間に挟まれたララちゃんが押し潰されないようにワタワタしていた私の様子は見ていて可笑しかったらしい。
泣いていた子どもたちは声を出して笑い出し、最後は皆で私とクリスを笑顔で送り出してくれた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
「「「うわぁ~ん。いっちゃやだぁぁぁぁあ。」」」
私の足にアーシャちゃんとリコちゃんが。クリスの足元にはリン君、ルイ君に、とうとうクリスに泣きながらよじ登り始めた子もいる。
年少組の子も年中組の子たちも私たちの周りに集まって泣いていて、私も鼻の奥がツーンっとしてきた。でも、ここで私が泣いちゃダメな気がする。
最初は長くても一週間ぐらいの滞在かな、って思ってた。それが色々あって結局、二ヶ月近くクレア孤児院に滞在してしまった。
普段、外から人が訪ねて来る事の無いクレア孤児院で、私とクリスは初日から人見知りの筈の子どもたちに歓迎されていた。二ヶ月近くも一緒に暮らしていたらそりゃ、こうなるよねぇ。
昨日は運動会も楽しかったし、私たちが孤児院から居なくなるとういう事が、小さな子たちにはよく分かっていなかったのだろう。説明されてはいてもいつも通りに一緒にいたから。
それが今日、旅支度をした私とクリスの姿を見ていつもと違うって気付いたのだと思う。そう思われる程、子どもたちの中では私たちが孤児院に居る事が当たり前になっていたんだね。
私も昨日の子どもたちの姿にどこかで安心しちゃってたんだな。涙のお別れは辛いなぁ、って思っていたから、自分の都合の良いように勝手に思い込もうとしてたんだと思う。
子どもたちを悲しませてしまった事に罪悪感は感じる。私にも覚えのある感情だから。
前世で施設に居た頃に" 別れ "は何度も経験していて、たった二週間だけ実習に来ていた学生さんたちとの別れだって、小学生の頃は悲しくて何度も泣いた。
「ごめんね。私たち、旅をしながらお仕事をしているの。これからお仕事で他の町に行くんだ。」
アーシャちゃんとリコちゃんの肩に手を置いて視線が合う様にしゃがみ込む。
「おしごとおわったら、もどってくるぅ?」
『戻って来るよ。』と言えない事に、子どもたちの望む言葉を言ってあげられない自分にちょっと腹が立つ。
あ~あ。孤児院で生活するんじゃなくて、宿屋に泊まっていれば、子どもたちを泣かせずに済んだのかなぁ。後悔してももう遅いけど。
別れは辛い。寂しくて悲しい。
「またお仕事で来たら、クレア孤児院に泊めてくれるかな?」
未来の約束をしたら、泣き止んでくれるかな。悲しい気持ちも減ってくれるかな。
「「い、いいよぉ~。」」
ポロポロと泣きながら、それでも返事をしてくれる二人が可愛らしくていじらしくて、両手でぎゅーっと抱きしめる。
「あのね、クレア孤児院の皆の事が大好きだよ。
だからまた会いに来るよ。皆がどれだけ大きくなっているか、楽しみにしているから。
また会う日まで楽しみに待ってて。手紙もたくさん書くからね。」
出てくる言葉は、よくあるありふれた言葉で、子どもたちの悲しい気持ちを減らせたかどうかも分からない。希望になったのかどうかも分からない。
でもこれは約束だから。約束は絶対守るから。
心の中でそう言って、孤児院の子どもたち全員とハグをする。ミリーさんに抱っこをされているララちゃんと目が合う。体調を崩しやすくミリーさんに抱っこされている事の多いララちゃんとは殆ど会話をした事も無い。
流石にララちゃんとはハグ出来ないかな。
そう思った瞬間、ジッと私を見ていたララちゃんは私に向かってゆっくりと両手を広げてきた。咄嗟に私もララちゃんに向かって両手を出して、ミリーさんからララちゃんを受け取る。
「ララちゃんを診てくれるように、お医者さんにお願いしてくるから待っててね。きっと良くなる筈だから。」
何を言われているのか分からないララちゃんは、ジッと私を見上げていたと思ったら、ニコッと笑顔で抱きついてきた。
かわっ、可愛いぃ~!!
ハドソン領に来て貰えるように、絶対にジョー先生を説得するから!
そうしたらララちゃんも皆と同じように過ごせるようになるからね。
ララちゃんを抱き潰さないようにそっとぎゅーっとしていると目の前に影が出来た。
「ティアナさん、クリスさん。うぅっ。ありがとう!
本当に寂しくなるわ。でも、でも、わたくしもここの院長として、今まで出来なかった分も、頑張りますわっ!
ですから、絶対、絶対、また子どもたちに会いに来てちょうだいぃ。」
あぅっ!
ロ、ロナリー院長~。ララちゃんごと私を抱きしめないでぇ。潰れるっ!ララちゃんが潰れちゃうっ!!
感極まって涙を浮かべながら抱きしめてくるロナリー院長の姿と、間に挟まれたララちゃんが押し潰されないようにワタワタしていた私の様子は見ていて可笑しかったらしい。
泣いていた子どもたちは声を出して笑い出し、最後は皆で私とクリスを笑顔で送り出してくれた。
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