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ハドソン領 領都

人を笑う者は、、、。

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 最初にバーナード様が、次にペン先を揺らしながら青い顔したジョセフさんが誓約魔法の掛かった書類にサインをした。


という言葉に多少はビビっていたバーナード様は、次期ハドソン伯爵家当主となる自分が、いずれ養蚕事業を引き継ぐ事に思い至ったのか、書類にサインをする頃には落ち着きを取り戻していた。


『私たちが誓約魔法での契約をしたように、この二人こいつらにも契約が必要じゃないのか?』


とでも思っていそうな表情でバーナード様が見てくるけど、やっぱりそう考えるよね。


ログワ村の村長さんたちだって誓約魔法で契約しているのに、国との話し合いの内容まで知ることになる私たちが何も縛りが無いのはおかしいと思うのは当然だよねぇ。

いくら私が蚕の価値を見出したとはいえ、ペラペラと喋ってしまう可能性を考慮すると特別扱いが出来ないだろう、という考えになるのも分かる。


でもさ、ハドソン伯爵は私の事は表に出さないって前に言っていたよ?
下手に私が関わっているのが元家族に知られたら絶対に甘い汁を吸おうと養蚕事業にも割り込んでくるだろうしね。

が発見したならコスト侯爵家にも利益を得る権利はある!』

と、あの元父親なら言うね、確実に。

ハドソン伯爵も国にだって私のことは言うつもりは無いって言ってたから大丈夫なハズ。

まぁ、『養蚕事業の件は口外しない』ぐらいの軽い誓約魔法の掛かった書類だったら考えなくもない。

 ハドソン伯爵は私たちのことを信用してくれているみたいだし、私もペラペラと他人に話す気は無いけれど、ログワ村の村長さんたちに誓約書にサインをさせてしまった責任は私にあるからねぇ。
遅かれ早かれ、彼らも誓約魔法付きの契約をする事になるのは確実ではあったけれど。


「ティアナ、なところを申し訳ないけれど、君たちが誓約書にサインをしない代わりに、今後三年間の国外へに出る事を控えるように、という指示が国から提案が出されたんだ。」


私の笑顔の理由に気付いていたらしい伯爵は、眉を八の字にしながら困ったような表情を浮かべて言った。


「「はぁっ!?」」


思いがけない伯爵の言葉に、揃ってクリスと同時に声が出てしまった。


何それ!?

誓約魔法付きの誓約書にサインしない代わりに三年間の国内軟禁?


「いや、別に国内に軟禁するつもりはないよ?」


あれ?声に出てた?

でもほぼ軟禁みたいなものじゃない?

いずれは国外にも足を運びたいとは思っていたけれど、それもまだ先のことと具体的な計画なんてなかった。
でも誰かに行動を制限されて三年間は国を出られない、というのは気持ち的に違うと思う。


「それは伯爵が俺たちのことを国に報告した、という事か?」


今まで座っているだけだったクリスも流石に口を挟まずにはいられなかったらしい。


「う~ん。上手く誤魔化せられれば良かったんだけどね。君たちがログワ村に滞在していたのは事実だろう?
しかも二度目は私を連れて訪問しているし。

小さな村だからねぇ、村長の家に滞在していただけとは言っても、村人の殆どがその事を知っている筈だ。

後で説明するけれど、ログワ村にはが養蚕事業の為に移り住む事が決定している。ティアナが提案してくれた内容がほぼ採用される事になりそうだ。

それで移住する者たちはな人たちだからね。ティアナたちの事を黙っていてもいずれ知られてしまう筈だ。

後で色々と詮索されたり揉めるよりは、と養蚕とシルクの件は名前は伏せたものの他の者から知識を授けられた、と説明させてもらった。事後報告で済まないね。」


そ、そっかぁ。

それは確かにそう、かも?

私の考えた案となると、国の者というのは王家の影かそれに近しい人たち、という事になるよね。

ハドソン伯爵が偶然、蚕を発見して、更に絹糸の製法を知っていて、、、というのは少し無理があるのか。
シルクに関する文献なんかがあれば誤魔化せたかも知れないけど、私の言葉のみ、だからなぁ。
私が養蚕とシルクについて『何故、知っていたのか?』を伯爵に説明出来ないのに、伯爵が国に答えられる訳がない。

何とか誤魔化す事が出来ても、移住した後に村人と交流があればポロッとそういう話が出てもおかしくはない。
しかも観光客なんて来ないような辺鄙な場所にある村に、人が来るのは滅多に無いだろう。行商人も来ないような場所だ。

 そこへ成り行きで村を訪れる事になった私たちが二度も村に来れば目立たない筈はない。
その後、あまり間を置かずに伯爵が移住者を何人も連れて来たら、『もしかして前に領主様を連れて来た人たちと関係がある?』と、ふと口に出してしまう人も出て来るかもしれない。

適当に言っただけの言葉でも受け取る側がそれをどう思うかなんて分からない。それが一般の人だったなら問題無い。

けれど、" 元王家の影 "が相手だったら?

国に報告されて、ハドソン伯爵に問い合わせが来れば困るのは伯爵だ。『何故、存在を隠していた?』と余計に怪しまれる可能性もある。

しかも、それを口実に養蚕事業の全てをハドソン伯爵家から取り上げようとしてくる可能性だってゼロではない。


・・・・私、色々と調べられたらヤバい、、、よね?


「誓約魔法付き誓約書に署名すれば、国内に縛り付けられるのは回避出来ますかね?」


「う~ん。その場合は養蚕事業が軌道に乗るのにどれぐらいかかるか次第なような。

たぶん一年か二年ぐらいは国内の連絡が取れる場所に居て欲しいと言われると思うよ。」



・・・・・・・。


それって結局、私たちに選択権は無し、と一緒でしょうがぁ~!!



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ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」及びエールでの応援もありがとうございます。
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