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ハドソン領 領都
匂いテロの真相 2
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「へぇ~、この屋敷には野良猫が出入りしていたんだ?
生まれた時からこの屋敷に住んでいたが、この屋敷の中は勿論、庭園でだって猫を見かけた事はなかったなぁ。」
クスクスと笑っているハドソン伯爵は絶対に分かって言っているよね?
普通に考えて貴族のお屋敷で野良猫がうろついているなんて有り得ないからねぇ。
嫌がらせするなら直ぐにバレるような嘘なんて吐かなければいいのに。
きっと嘘だとバレても私に何か出来るとは思っていなかったからだとは思うけれど、どれだけ私を下に見ていたのか?って話だよね。
「そ、それは本当の話なのか?
彼女たちが私に嘘を吐くなど、、、。」
「嘘を吐いている、とも思っていないんじゃないですかね?
この屋敷で私を客人だと思っていた人なんていなかったと思いますよ。
部屋に食事が運ばれて来る事も無かったし、食堂で食べれば確実に体調が悪くなるぐらいに塩気の効いた料理が出されました。
入浴の準備をしてくれたのかと思えば、風呂には水が張られていた挙句、湯を出す為に取り付けられていた火の魔石は何故か取り外されていました。
それ以外にも常時、睨み付けられたり嘲笑されたりしていたのは、ジョセフさんたちだって気づいていたんじゃないですか?
食材の件は屋敷を出て行くキッカケにはなりましたが、私に対する態度に本当にウンザリしていたんです。
あ、因みにそれらに対して私は一度も苦情を言いませんでしたし、罵倒なんか一度もしていませんよ?」
私も本当によく耐えたよね~。
面倒だから相手にしていなかった、というのが本音だったけれど、改めて思うと私って客人だった筈だよね。それも伯爵の娘のように扱え、と言われていたのに。
「そんな、、、私は聞いていな、、、。」
「影響されたからじゃないですか?」
戸惑うハンナさんの言葉を最後まで言わせずに突っ込んで言えば、ハンナさんだけでなくジョセフさんも虚をつかれた、というような表情になる。
「「影響、された?」」
認めたくはないのか、それともまだ影響の意味が分からないのか。
二人は私の言葉を繰り返すだけ。
「普通は嫌な客だろうが、当主が客人だと言うならば、客人として扱うのが当たり前の事でしょう?
それをこの屋敷を取り仕切る家令とメイド長が客人として接しないどころか、敵意を隠す事なく向けていれば、他の者だって客人扱いなんてしませんよ。
普通はそれでも客人扱いするのが当たり前の事ですけどね。」
私が商会の名を出さず、養蚕の事もなければ、詐欺だと疑われずにもう少しマシな対応だったのかもしれない。
「私は確かにハドソン伯爵との婚約の話を反故にした女の娘だから憎い、という気持ちも分からなくはないです。
だけど古参の使用人だけでなく、若いメイドたちまで私に嫌がらせをしていたのは、そういう扱いをしていい相手だと、ジョセフさんたちの態度で判断したからじゃないですかね?
万が一、バレてもお咎めは無いだろう、と思ってしまうような雰囲気がこのお屋敷にはあったのでしょう。
そしてそういう行為は、私が初めてではない気がするんですよねぇ。
だって彼女たち、罪悪感なんて感じていないみたいに愉しそうに笑って面白がっていましたもん。」
マジで慣れていたんだよね、態度が。
私の言葉に" まさか!"というような表情で固まっている二人は全く気付いていなかったのかなぁ。
メイドたちは上の立場の人には要領良く立ち回っていた、とか?
「そんな、、、。」、「嘘だ。」とブツブツと小声で言っているバーナード様。
うるさいなぁ。
自分の非を認めたくないのか、それとも彼女たちが本来の仕事では優秀で信頼されていたのかは知らないけど、反論があるならハッキリと言って欲しい。
勿論、キッチリしっかりと迎え撃つけどね!
「まぁ、そんな嫌な感じだったのは事実です。
私の言葉は信じられないかもしれません。
でも、ジョセフさんたちは私がこの屋敷に居た時に、自分たちが私に対してどういう態度を取っていたのか、を少し思い出してみて下さい。
そうすれば、自分たちの態度が使用人たちにどう影響していたのかも気付けると思います。」
二人が媚薬事件で下働きの者に対して警戒が強くなってしまうのも、伯爵が大事なあまり過剰反応してしまうのも仕方がない。
でも過去に囚われすぎ。
神経質になるあまり、他のもっと大事なところが疎かになってしまった結果が噂の原因になっているんじゃないの?
「ティアナ、具体例をありがとう。
ジョセフ、ハンナ。二人も突然、こんな事を言われても理解が追いつかないだろう。
街で噂になっている件も含めて、後でもう一度よく考えてみてくれ。
それからもう一つ、私から伝えたい事がある。
ティアナがコスト侯爵家の嫡女だった事は既に知っているようだが、彼女に関する噂は事実無根だし、" 学園が嫌で通わなかった "、ではなく侯爵に通わせて貰えなかった、が正しい。
家庭教師さえ、マリィの死後は侯爵と後妻によって辞めさせられている。
これは王都に行っている間に、コスト侯爵家についてカーターに調べさせた事だから間違いはない。」
伯爵がそう断言した事で、名前を出されたカーターさんに皆の視線が集中する。
その注目の的のカーターさんは、気まずそうに青い顔をしながら私の方を見てくる。
カーターさんは私のことをどこまで調べたんだろう?
カーターさんが私を見る目に、ほんの少し同情の色が入っている気がするけど、それはそれでなんか嫌だなぁ。
" 義妹に婚約者を寝取られて、成人した日に意味不明な断罪劇を見させられた挙句に、私名義の商会も奪われてボロ屋台と一緒に家を追い出された。"
こう言葉にすると、ちょっと、いや、だいぶ恥ずかしい気がするんだよねぇ。
だって、あの茶番劇かボロ屋台を思い出したのか、クリスが俯いて笑いを堪えているんだよ?
確かに第三者目線だったら、吹き出すほど面白いかもしれないけど!
茶番劇の舞台に上がらないままざまぁ要員にされた私としては、" 悔しい!"よりも" 恥ずかしい!"という気持ちが先にくるんだよぉ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」及びエールでの応援もありがとうございます。
生まれた時からこの屋敷に住んでいたが、この屋敷の中は勿論、庭園でだって猫を見かけた事はなかったなぁ。」
クスクスと笑っているハドソン伯爵は絶対に分かって言っているよね?
普通に考えて貴族のお屋敷で野良猫がうろついているなんて有り得ないからねぇ。
嫌がらせするなら直ぐにバレるような嘘なんて吐かなければいいのに。
きっと嘘だとバレても私に何か出来るとは思っていなかったからだとは思うけれど、どれだけ私を下に見ていたのか?って話だよね。
「そ、それは本当の話なのか?
彼女たちが私に嘘を吐くなど、、、。」
「嘘を吐いている、とも思っていないんじゃないですかね?
この屋敷で私を客人だと思っていた人なんていなかったと思いますよ。
部屋に食事が運ばれて来る事も無かったし、食堂で食べれば確実に体調が悪くなるぐらいに塩気の効いた料理が出されました。
入浴の準備をしてくれたのかと思えば、風呂には水が張られていた挙句、湯を出す為に取り付けられていた火の魔石は何故か取り外されていました。
それ以外にも常時、睨み付けられたり嘲笑されたりしていたのは、ジョセフさんたちだって気づいていたんじゃないですか?
食材の件は屋敷を出て行くキッカケにはなりましたが、私に対する態度に本当にウンザリしていたんです。
あ、因みにそれらに対して私は一度も苦情を言いませんでしたし、罵倒なんか一度もしていませんよ?」
私も本当によく耐えたよね~。
面倒だから相手にしていなかった、というのが本音だったけれど、改めて思うと私って客人だった筈だよね。それも伯爵の娘のように扱え、と言われていたのに。
「そんな、、、私は聞いていな、、、。」
「影響されたからじゃないですか?」
戸惑うハンナさんの言葉を最後まで言わせずに突っ込んで言えば、ハンナさんだけでなくジョセフさんも虚をつかれた、というような表情になる。
「「影響、された?」」
認めたくはないのか、それともまだ影響の意味が分からないのか。
二人は私の言葉を繰り返すだけ。
「普通は嫌な客だろうが、当主が客人だと言うならば、客人として扱うのが当たり前の事でしょう?
それをこの屋敷を取り仕切る家令とメイド長が客人として接しないどころか、敵意を隠す事なく向けていれば、他の者だって客人扱いなんてしませんよ。
普通はそれでも客人扱いするのが当たり前の事ですけどね。」
私が商会の名を出さず、養蚕の事もなければ、詐欺だと疑われずにもう少しマシな対応だったのかもしれない。
「私は確かにハドソン伯爵との婚約の話を反故にした女の娘だから憎い、という気持ちも分からなくはないです。
だけど古参の使用人だけでなく、若いメイドたちまで私に嫌がらせをしていたのは、そういう扱いをしていい相手だと、ジョセフさんたちの態度で判断したからじゃないですかね?
万が一、バレてもお咎めは無いだろう、と思ってしまうような雰囲気がこのお屋敷にはあったのでしょう。
そしてそういう行為は、私が初めてではない気がするんですよねぇ。
だって彼女たち、罪悪感なんて感じていないみたいに愉しそうに笑って面白がっていましたもん。」
マジで慣れていたんだよね、態度が。
私の言葉に" まさか!"というような表情で固まっている二人は全く気付いていなかったのかなぁ。
メイドたちは上の立場の人には要領良く立ち回っていた、とか?
「そんな、、、。」、「嘘だ。」とブツブツと小声で言っているバーナード様。
うるさいなぁ。
自分の非を認めたくないのか、それとも彼女たちが本来の仕事では優秀で信頼されていたのかは知らないけど、反論があるならハッキリと言って欲しい。
勿論、キッチリしっかりと迎え撃つけどね!
「まぁ、そんな嫌な感じだったのは事実です。
私の言葉は信じられないかもしれません。
でも、ジョセフさんたちは私がこの屋敷に居た時に、自分たちが私に対してどういう態度を取っていたのか、を少し思い出してみて下さい。
そうすれば、自分たちの態度が使用人たちにどう影響していたのかも気付けると思います。」
二人が媚薬事件で下働きの者に対して警戒が強くなってしまうのも、伯爵が大事なあまり過剰反応してしまうのも仕方がない。
でも過去に囚われすぎ。
神経質になるあまり、他のもっと大事なところが疎かになってしまった結果が噂の原因になっているんじゃないの?
「ティアナ、具体例をありがとう。
ジョセフ、ハンナ。二人も突然、こんな事を言われても理解が追いつかないだろう。
街で噂になっている件も含めて、後でもう一度よく考えてみてくれ。
それからもう一つ、私から伝えたい事がある。
ティアナがコスト侯爵家の嫡女だった事は既に知っているようだが、彼女に関する噂は事実無根だし、" 学園が嫌で通わなかった "、ではなく侯爵に通わせて貰えなかった、が正しい。
家庭教師さえ、マリィの死後は侯爵と後妻によって辞めさせられている。
これは王都に行っている間に、コスト侯爵家についてカーターに調べさせた事だから間違いはない。」
伯爵がそう断言した事で、名前を出されたカーターさんに皆の視線が集中する。
その注目の的のカーターさんは、気まずそうに青い顔をしながら私の方を見てくる。
カーターさんは私のことをどこまで調べたんだろう?
カーターさんが私を見る目に、ほんの少し同情の色が入っている気がするけど、それはそれでなんか嫌だなぁ。
" 義妹に婚約者を寝取られて、成人した日に意味不明な断罪劇を見させられた挙句に、私名義の商会も奪われてボロ屋台と一緒に家を追い出された。"
こう言葉にすると、ちょっと、いや、だいぶ恥ずかしい気がするんだよねぇ。
だって、あの茶番劇かボロ屋台を思い出したのか、クリスが俯いて笑いを堪えているんだよ?
確かに第三者目線だったら、吹き出すほど面白いかもしれないけど!
茶番劇の舞台に上がらないままざまぁ要員にされた私としては、" 悔しい!"よりも" 恥ずかしい!"という気持ちが先にくるんだよぉ!!
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」及びエールでの応援もありがとうございます。
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