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ハドソン領 領都

失言

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「このアイスクリームは本当に素晴らしいですわ!

王都の学園の初等部すら出ていない元侯爵令嬢が商会を立ち上げたなんて、と思っていましたけれど、こういう事でしたのね?

ティアナさんは料理人で、実質の経営者はクリスフォード様という事なのでしょう?

が料理人というのも話題性がありますもの。

学がなくても料理の才能があるならば、平民になっても利用価値はありますのね。参考になりますわ。」


 言葉だけ聞くと失礼な発言でしかない彼女の言葉に、壁際に並んでいた使用人たち、特にメイドさんたちはクスクスと口元を隠して笑っている。

でもコーナン侯爵令嬢自身は、悪意なく発言している感じなんだよねぇ。

ナチュラルに見下してはいるんだろうけれど、思っていたことがそのまま口に出ただけ、というか『だってそうなんでしょ?』という思い込みからきている、みたいな。
" THE お貴族様 "な思考なのだろうけれど。

バーナード様とはお似合いのカップルだな。


しかし何故、私はで、クリスはなのか。


 そしてわたしは料理人ではない。私如きが料理人なんて名乗ったら、料理人さんに本当に申し訳ないよ。
但し、尊敬出来ない料理人さんは除く、だけれど。


 きっとジョセフさんたちはエトリナ商会の事を調べないで、を調べたんだろうね。そして既にこの屋敷の使用人たちもその情報を共有している、と。

だから昨日もああいう態度で、バーナード様も相変わらずな態度だったのかな。

 確かに初等部すら早々に中退だけど、前世の記憶持ちだから無学な訳でも無いよ?
お母様から引き継いだ商会の経営も、何なら侯爵家の仕事もしてましたけど。

それなのに貴族出身かどうかもハッキリしていないのに、専属侍従をしていた冒険者のクリスの事は、エトリナ商会の実質の経営者だとか判断しちゃうんだ?

私の護衛はしてくれているし保護者的な感じで見守ってくれているけれど、クリスなんて普段は『肉、肉!』とうるさいだけの肉肉星人だよ?


反論するのも面倒くさいなぁ、なんてちょっと呆れていると、不意にパンッと手を打つ音が響いた。

その場の全員が音のした方へと視線向けた。その視線の先にはー。


「アリサ嬢。君の好奇心旺盛で、思ったことを素直に口にするところは嫌いじゃないよ。

けれど、噂や一方の言葉だけを鵜呑みにして、そのまま発言してしまうところは今後は気をつけた方がいい。

貴族令嬢の振る舞いとしては失言それは自身の評価を下げる事になるだろう。

ましてや今は侯爵令嬢だから許されていたことも、伯爵夫人となったならば、例え格下の者への言葉であっても品位を疑われかねない。」


「っ、叔父上!アリサの言葉がお気に障ったのなら申し訳ありません。

ですがー。」

「あぁ、バーナード。それは君にも言えることだよ?

ハドソン伯爵家当主となるならば、一方の言葉だけで判断して振る舞うのは愚かどころか、家すら傾けかねない浅はかな行為だ。

場合によっては当主としての資質すら問われるだろうことに気付いた方がいい。」

ハドソン伯爵がいつもと変わらない口調で、だけどバーナード様の言葉を遮ってピシャリと言い放った。

いつもとは違った他者を突き放すような雰囲気を纏ったハドソン伯爵の物言いに、バーナード様やジョセフさんたちが戸惑いを隠せない様子で伯爵を見ている。

それを知ってか、知っていても気にも留めていないのか。
ハドソン伯爵はの笑みを浮かべた表情で言葉を続けた。


「詳細は後で話すとして、先ずは私とティアナの母親についてのだけ、皆に話しておこうか。」


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