上 下
176 / 288
ハドソン領 領都

孤児院と屋台販売

しおりを挟む
 何とかロナリー院長の許可を得られたので、" 屋台販売の下準備と子どもたちに仕事の手順や計算を教える為 "という理由で強引に明日から屋台販売の日まで孤児院に宿泊許可をもぎ取った。

勿論、宿泊費は前払いで渡し済み。ついでに孤児院に滞在中は孤児院の手伝いをする事も申し出ている。


これにはクリスがちょっとばかり不満そうにしていたのは、子どもたちの相手をして疲弊していたからみたい。
子どもの相手をするのは慣れていないと予想以上に疲れるからねぇ。


 私がロナリー院長たちと話している間、クリスは男の子と女の子たちの間で引っ張りだこだったらしい。
男の子たちは闘いごっこのような感じだったらしいけれど、女の子たちはお姫様ごっこの相手をクリスにして貰いたがったそうで、意外にこれがクリスの精神をゴリゴリと削っていたのだとか。
まぁ、何となくその様子が目に浮かんで笑ってしまったら頭を乱暴にグシャグシャッとされてしまった。ひどい八つ当たりだよね。


 今日の話し合いは終わったので孤児院を出ると必要な物の買い出しに出掛ける事に。
屋台で売る料理はまだハッキリとは決めていないので、試作用で色々と買い込んだ。
それ以外にも工房や雑貨など店を回って少し依頼をしたり材料を購入して宿屋へ戻った。


宿屋では部屋で夕飯の支度をしながら屋台で売る料理を何にするかを考える事にした。


 今日、訪問して思った事は手伝いの許可は貰えたけれど、私たちがこの街に滞在した後に結局元に戻ってしまうのでは、という懸念がある事。


私としては子どもたちに手伝って貰うなら、孤児院名義で屋台販売が出来るような状態にしたい。
一度きりのお手伝いで終わるならただの" 施し "になってしまう。


だけどロナリー院長に全くの危機感が無いからねぇ。他の人が頑張ったところで日々の生活に追われて子どもたちの教育や卒院して行った子どもたちのその後を気にかける余裕は無いと思う。


そうなるとそう遠くない将来にあの孤児院は閉鎖となる気がするんだよね。気がするというか、たぶん確実にそうなる。
そうなって困るのはやっぱり子どもたちなんだよ。もう一つの孤児院に入れれば良いけれど、そればかりはどうなるか分からないからねぇ。


そうならない為にも孤児院名義で屋台販売が出来るような足掛かりになれば良いなぁ、と思っている。


そういう諸々を考えると何を売れば良いのか、とちょっと悩んでしまっている。


勿論、エトリナ商会として屋台販売で赤字を出す訳にもいかないので、最初の一週間は登録したレシピの中から一品、販売しようと思っている。
そしてもう一品。クレア孤児院が継続して屋台販売、若しくは孤児院の敷地で売れる何かを販売出来たら、と考えている。


だけどそれは私が勝手に考えている事なんだよね。ロナリー院長が賛成してくれるような何かで、尚且つ、材料費があまり高くなくて手に入り安いもので出来る料理って何があるんだろう?
しかも子どもたちでも出来るような何かって何がある?


そんな事を考えたところで今日の夕飯の完成だ。

と言っても今日は昨日作ったチキンカレーだ。宣言通りの二日目カレーである。
でもただのチキンカレーじゃない。ボア肉をカツにしてチキンカレーに乗せてある。
本当はチキンカレーよりも普通のカレーに乗せたかったんだけれどね。
まぁ、クリスは肉があれば満足する人だから問題ないでしょ。


「ん、この匂いは昨日のチキンカレーってやつだな。おぉっ!カツも乗っている!」


扉をノックして入って来たクリスはチキンカレーの匂いに嬉しそうにテーブルまでやって来て、ボアカツがチキンカレーの上に乗っているのを見て更に嬉しそうにして椅子を引いて座った。


コロンッ。


クリスが座ったと同時に何か軽い物が床の上に落ちた音がした。


「クリス、何か落ちたよ?

ん?どうしたの?」

床に落ちた意外なを拾いながらクリスに尋ねる。


「あぁ、孤児院の裏庭に何本か木があったんだよ。自生なのか植えたのかは知らないが。

よく分からないけど、小さい子たちがせっせと俺に持って来てたんだよ。」


へぇ~、裏庭にねぇ。


んっ?


それって使えるんじゃない?


子どもたち全員で協力出来るし作るのもそんなに難しくない。


それにちょっと売り方を工夫すればこの孤児院の名物になるかもっ!


良しっ、一品目は決まりだね!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ここまでお読み下さりありがとうございます。

お気に入り登録及びエールでの応援もありがとうございます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

閉じ込められた幼き聖女様《完結》

アーエル
ファンタジー
「ある男爵家の地下に歳をとらない少女が閉じ込められている」 ある若き当主がそう訴えた。 彼は幼き日に彼女に自然災害にあうと予知されて救われたらしい 「今度はあの方が救われる番です」 涙の訴えは聞き入れられた。 全6話 他社でも公開

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...