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ハドソン領 領都
元侯爵令嬢とイヤミになっていない嫌味
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商業ギルドに行って幾つかの店に行った事が遊び歩いていた、と。
一体、どうしてそんな話になるのか意味分かんない。
流石のクリスも驚いて固まっているよ。
何しろ、見目の良い男を私が連れ歩いていたらしいからね。
ププッ!小娘に連れ回されてるクリスとか、笑えるっ!
声に出していないのに、ジロリとクリスに睨まれる。
ヤバい!後で何を言われるか、、、。
あり得ない話過ぎて、そういうシチュエーションのクリスを想像したら可笑しかっただけなんだけどな。
いや、本当に思わず現実逃避したくなるぐらい目の前に居る男性にめっちゃ睨まれている。
この屋敷で若い男性でこんな言葉を言うぐらいなんだから、チャールズ様の養子になったバーナード様で合っているよね?
けれど『バーナード様ですか?』も『貴方は誰?』というのも私の立場からしたら聞けない。相手が名乗ってくれるのを待つしか無いと思うけれど、先程の言葉に対して返答した方が良いのかなぁ。
「・・・・ダンマリですか?
あぁ、そうですね。自己紹介がまだでしたね。私はチャールズ叔父上の甥であり、縁あって養子縁組をさせて頂いたバーナード・ハドソンです。
将来はこのハドソン領の領主を継ぐ予定ですが、その時にはハドソン領の為にも悪縁は断ち切りたいと思っていますよ。」
目が笑っていない系の笑顔で自己紹介されたけれど、悪縁てまさか私の事、、、な訳無い、よねぇ?
チラリと横に居るクリスを見れば、片眉を上げてニヤリと笑い返された。
『さぁ、どう言い返す?』という顔をしているけどどうもしないからね?
私、戦闘民族じゃないから!
「初めまして、ハドソン様。私はエトリナ商会を営むティアナと申します。
見目の良い男などとお褒め頂き恐縮ですが、この者はエトリナ商会の従業員のクリスです。私の補佐と護衛をしています。」
私が普通に挨拶すれば、面白く無さそうにクリスがペコリと頭を下げる。
クリスは私に何をさせたいのよ!
別に私は笑いを取りたくもないし応戦したい訳でも無いのよ。
「エトリナ商会、ですか。
家令から話は聞いておりますよ。叔父上に怪しい商売の話を持ち掛けているとか?
商会を立ち上げたばかりと聞いていますが、商売とはそう簡単に儲けが出るものではありません。堅実に一歩一歩進めていくのが成功の秘訣だと思いますよ。
聞いたところ、手荷物のみでやって来たとか。それでどんな商売が出来るのでしょうねぇ。
" 商会 "などと大層な事を言っていないで、先ずは屋台から商売でも始めたらどうですか?」
「ブフォッ!」
「っ!?」
ドヤ顔で嫌味を言ったつもりのバーナード様は、突然吹き出して笑い始めたクリスに驚いて唖然としている。彼の背後に控えていたジョセフさんも同じような表情で固まっているよ。
いやぁ~、気持ちは分かる。ジョセフさんは打ち合わせからカーターさん共々部屋から追い出されて、内容を全く知らされないままチャールズ様が王都へと行ってしまったからねぇ。色々不満なんだよね。
そりゃ、侯爵家を追い出された小娘が作ったばかりの商会なんて信用出来るわけが無い、とそう思う気持ちも理解出来るし伯爵家を騙そうとしていると思い込んでしまうのも分かる。
それを鵜呑みにしたバーナード様は、" 私の化けの皮を剥がしてやろう!"とか" ガツンと言ってやろう!"とか思ったんじゃないかなぁ。
嫌味の一つや二つ、言ってやれば泣いて逃げ出すとでも思ったんだろう。
でも、嫌味のチョイスが屋台かぁ~。
事情を知っているクリスが吹き出すのも仕方がない。
私だって当事者じゃなかったら吹き出してたかもね。
もしかして貴族社会では嫌味を言う時に、鉄板の" 屋台 "ネタでもあるのかね?
それとも私がボロッボロの屋台とともに侯爵家から追い出された事が噂になっているとか?
もしそうだったら流石に嫌だなぁ~。
「申し訳ありません。クリスは笑い上戸でして。
貴重なご意見をありがとうございます。
もしかしてハドソン様も商会をお持ちなのですか?」
もし、飲食店経営とかだったら、レシピの売り込みとかで行ってしまわないように気をつけなきゃ!
「君も雇い主なら躾はしっかりした方がいいぞ。
まぁ、君の商会がいつまで持つか分からないけれどな。
この私だって商会の経営が軌道に乗るまで二年は掛かったんだ。」
「えっ?じゃあ、それまで屋台を?」
「誰が屋台販売などするかぁっ!!」
「ブッ!や、やめろ、ティアナ。
ははっ、これ以上、わ、笑わすなっ。」
・・・別に笑わせるつもりも無いんだけど。バーナード様のツッコミのタイミングがよくて笑ったんじゃないの?
「君は嫌味も分からない程馬鹿なのか?
貴族が屋台販売などする訳ないだろうっ!」
元貴族なら有り、なのかな?
「・・・はぁ、そうなんですね。」
この人、結構面倒臭い人なのかな?
いつまで玄関ホールで話す気なのかなぁ。会話が使用人さんたちに筒抜けなんだけれど、気にならないのかな。
「私は叔父上を支え、将来伯爵位を継ぐのだ。その為の勉強の一環として一から商会を立ち上げて実績を積んでいるんだ。
君みたいな軽い気持ちで商売をしている訳じゃない。
叔父上だけじゃなく、私を籠絡しようなどと考えるなよ。君の商会なんかと取引する気は無いからな!
それと、私には愛しい婚約者がいるのだ。不必要に私に近付く事は禁ずる。分かったな!」
" 取引をする気は無い "って、お互い何を扱っているのかも知らないのに簡単に言っちゃうのは随分迂闊だと思うのだけれど。
「フッ、先程は失礼いたしました。お詫びにもし、エトリナ商会と取引をしたくなりましたら、私が仲介役をさせて頂きます。」
クリスが澄まし顔で言っているけれど、最初に鼻で笑ってから話し始めたよね?
しかもなんか口角が上がっているけれど、悪い事を考えていそうで嫌だなぁ。
「そんな日は来る事はないだろうがね。
まぁ、いい。叔父上が帰って来るまで、ハドソン伯爵家の客人だという事を忘れずに節度ある振る舞いを心掛けてくれ。
元が付くが侯爵令嬢だったのだろう?
変な噂が立つ様な軽はずみな行動は避けてくれたまえ。」
お前もな!
と言えれば良かったんだけれどね~。
彼の軽はずみな言動で、この屋敷中の使用人たちに侯爵令嬢だった、と知られちゃったんじゃない?
使用人間で情報共有されてて実は知られていたかもしれないけれどさ。
家名までは知られてない事を祈るしかないかな。
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
お気に入り登録及びエールでの応援もありがとうございます。
一体、どうしてそんな話になるのか意味分かんない。
流石のクリスも驚いて固まっているよ。
何しろ、見目の良い男を私が連れ歩いていたらしいからね。
ププッ!小娘に連れ回されてるクリスとか、笑えるっ!
声に出していないのに、ジロリとクリスに睨まれる。
ヤバい!後で何を言われるか、、、。
あり得ない話過ぎて、そういうシチュエーションのクリスを想像したら可笑しかっただけなんだけどな。
いや、本当に思わず現実逃避したくなるぐらい目の前に居る男性にめっちゃ睨まれている。
この屋敷で若い男性でこんな言葉を言うぐらいなんだから、チャールズ様の養子になったバーナード様で合っているよね?
けれど『バーナード様ですか?』も『貴方は誰?』というのも私の立場からしたら聞けない。相手が名乗ってくれるのを待つしか無いと思うけれど、先程の言葉に対して返答した方が良いのかなぁ。
「・・・・ダンマリですか?
あぁ、そうですね。自己紹介がまだでしたね。私はチャールズ叔父上の甥であり、縁あって養子縁組をさせて頂いたバーナード・ハドソンです。
将来はこのハドソン領の領主を継ぐ予定ですが、その時にはハドソン領の為にも悪縁は断ち切りたいと思っていますよ。」
目が笑っていない系の笑顔で自己紹介されたけれど、悪縁てまさか私の事、、、な訳無い、よねぇ?
チラリと横に居るクリスを見れば、片眉を上げてニヤリと笑い返された。
『さぁ、どう言い返す?』という顔をしているけどどうもしないからね?
私、戦闘民族じゃないから!
「初めまして、ハドソン様。私はエトリナ商会を営むティアナと申します。
見目の良い男などとお褒め頂き恐縮ですが、この者はエトリナ商会の従業員のクリスです。私の補佐と護衛をしています。」
私が普通に挨拶すれば、面白く無さそうにクリスがペコリと頭を下げる。
クリスは私に何をさせたいのよ!
別に私は笑いを取りたくもないし応戦したい訳でも無いのよ。
「エトリナ商会、ですか。
家令から話は聞いておりますよ。叔父上に怪しい商売の話を持ち掛けているとか?
商会を立ち上げたばかりと聞いていますが、商売とはそう簡単に儲けが出るものではありません。堅実に一歩一歩進めていくのが成功の秘訣だと思いますよ。
聞いたところ、手荷物のみでやって来たとか。それでどんな商売が出来るのでしょうねぇ。
" 商会 "などと大層な事を言っていないで、先ずは屋台から商売でも始めたらどうですか?」
「ブフォッ!」
「っ!?」
ドヤ顔で嫌味を言ったつもりのバーナード様は、突然吹き出して笑い始めたクリスに驚いて唖然としている。彼の背後に控えていたジョセフさんも同じような表情で固まっているよ。
いやぁ~、気持ちは分かる。ジョセフさんは打ち合わせからカーターさん共々部屋から追い出されて、内容を全く知らされないままチャールズ様が王都へと行ってしまったからねぇ。色々不満なんだよね。
そりゃ、侯爵家を追い出された小娘が作ったばかりの商会なんて信用出来るわけが無い、とそう思う気持ちも理解出来るし伯爵家を騙そうとしていると思い込んでしまうのも分かる。
それを鵜呑みにしたバーナード様は、" 私の化けの皮を剥がしてやろう!"とか" ガツンと言ってやろう!"とか思ったんじゃないかなぁ。
嫌味の一つや二つ、言ってやれば泣いて逃げ出すとでも思ったんだろう。
でも、嫌味のチョイスが屋台かぁ~。
事情を知っているクリスが吹き出すのも仕方がない。
私だって当事者じゃなかったら吹き出してたかもね。
もしかして貴族社会では嫌味を言う時に、鉄板の" 屋台 "ネタでもあるのかね?
それとも私がボロッボロの屋台とともに侯爵家から追い出された事が噂になっているとか?
もしそうだったら流石に嫌だなぁ~。
「申し訳ありません。クリスは笑い上戸でして。
貴重なご意見をありがとうございます。
もしかしてハドソン様も商会をお持ちなのですか?」
もし、飲食店経営とかだったら、レシピの売り込みとかで行ってしまわないように気をつけなきゃ!
「君も雇い主なら躾はしっかりした方がいいぞ。
まぁ、君の商会がいつまで持つか分からないけれどな。
この私だって商会の経営が軌道に乗るまで二年は掛かったんだ。」
「えっ?じゃあ、それまで屋台を?」
「誰が屋台販売などするかぁっ!!」
「ブッ!や、やめろ、ティアナ。
ははっ、これ以上、わ、笑わすなっ。」
・・・別に笑わせるつもりも無いんだけど。バーナード様のツッコミのタイミングがよくて笑ったんじゃないの?
「君は嫌味も分からない程馬鹿なのか?
貴族が屋台販売などする訳ないだろうっ!」
元貴族なら有り、なのかな?
「・・・はぁ、そうなんですね。」
この人、結構面倒臭い人なのかな?
いつまで玄関ホールで話す気なのかなぁ。会話が使用人さんたちに筒抜けなんだけれど、気にならないのかな。
「私は叔父上を支え、将来伯爵位を継ぐのだ。その為の勉強の一環として一から商会を立ち上げて実績を積んでいるんだ。
君みたいな軽い気持ちで商売をしている訳じゃない。
叔父上だけじゃなく、私を籠絡しようなどと考えるなよ。君の商会なんかと取引する気は無いからな!
それと、私には愛しい婚約者がいるのだ。不必要に私に近付く事は禁ずる。分かったな!」
" 取引をする気は無い "って、お互い何を扱っているのかも知らないのに簡単に言っちゃうのは随分迂闊だと思うのだけれど。
「フッ、先程は失礼いたしました。お詫びにもし、エトリナ商会と取引をしたくなりましたら、私が仲介役をさせて頂きます。」
クリスが澄まし顔で言っているけれど、最初に鼻で笑ってから話し始めたよね?
しかもなんか口角が上がっているけれど、悪い事を考えていそうで嫌だなぁ。
「そんな日は来る事はないだろうがね。
まぁ、いい。叔父上が帰って来るまで、ハドソン伯爵家の客人だという事を忘れずに節度ある振る舞いを心掛けてくれ。
元が付くが侯爵令嬢だったのだろう?
変な噂が立つ様な軽はずみな行動は避けてくれたまえ。」
お前もな!
と言えれば良かったんだけれどね~。
彼の軽はずみな言動で、この屋敷中の使用人たちに侯爵令嬢だった、と知られちゃったんじゃない?
使用人間で情報共有されてて実は知られていたかもしれないけれどさ。
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