上 下
165 / 288
ハドソン領 領都

元侯爵令嬢とイヤミになっていない嫌味

しおりを挟む
商業ギルドに行って幾つかの店に行った事が遊び歩いていた、と。


一体、どうしてそんな話になるのか意味分かんない。


流石のクリスも驚いて固まっているよ。


何しろ、が連れ歩いていたらしいからね。
ププッ!小娘に連れ回されてるクリスとか、笑えるっ!


声に出していないのに、ジロリとクリスに睨まれる。
ヤバい!後で何を言われるか、、、。


あり得ない話過ぎて、そういうシチュエーションのクリスを想像したら可笑しかっただけなんだけどな。


いや、本当に思わず現実逃避したくなるぐらい目の前に居る男性にめっちゃ睨まれている。
この屋敷で若い男性でこんな言葉を言うぐらいなんだから、チャールズ様の養子になったバーナード様で合っているよね?


けれど『バーナード様ですか?』も『貴方は誰?』というのも私の立場からしたら聞けない。相手が名乗ってくれるのを待つしか無いと思うけれど、先程の言葉に対して返答した方が良いのかなぁ。


「・・・・ダンマリですか?

あぁ、そうですね。自己紹介がまだでしたね。私はチャールズ叔父上の甥であり、縁あって養子縁組をさせて頂いたバーナード・ハドソンです。

将来はこのハドソン領の領主を継ぐ予定ですが、その時にはハドソン領の為にもは断ち切りたいと思っていますよ。」


目が笑っていない系の笑顔で自己紹介されたけれど、悪縁てまさか私の事、、、な訳無い、よねぇ?


チラリと横に居るクリスを見れば、片眉を上げてニヤリと笑い返された。
『さぁ、どう言い返す?』という顔をしているけどどうもしないからね?
私、戦闘民族じゃないから!


「初めまして、ハドソン様。私はエトリナ商会を営むティアナと申します。

などとお褒め頂き恐縮ですが、この者はエトリナ商会の従業員のクリスです。私の補佐と護衛をしています。」


私がに挨拶すれば、面白く無さそうにクリスがペコリと頭を下げる。

クリスは私に何をさせたいのよ!
別に私は笑いを取りたくもないし応戦したい訳でも無いのよ。


「エトリナ商会、ですか。

家令から話は聞いておりますよ。叔父上に怪しい商売の話を持ち掛けているとか?

商会を立ち上げたばかりと聞いていますが、商売とはそう簡単に儲けが出るものではありません。堅実に一歩一歩進めていくのが成功の秘訣だと思いますよ。

聞いたところ、手荷物のみでやって来たとか。それでどんな商売が出来るのでしょうねぇ。

" 商会 "などと大層な事を言っていないで、先ずはから商売でも始めたらどうですか?」


「ブフォッ!」


「っ!?」


ドヤ顔で嫌味を言ったつもりのバーナード様は、突然吹き出して笑い始めたクリスに驚いて唖然としている。彼の背後に控えていたジョセフさんも同じような表情で固まっているよ。


いやぁ~、気持ちは分かる。ジョセフさんは打ち合わせからカーターさん共々部屋から追い出されて、内容を全く知らされないままチャールズ様が王都へと行ってしまったからねぇ。色々不満なんだよね。


そりゃ、侯爵家を追い出された小娘が作ったばかりの商会なんて信用出来るわけが無い、とそう思う気持ちも理解出来るしと思い込んでしまうのも分かる。


それを鵜呑みにしたバーナード様は、" 私の化けの皮を剥がしてやろう!"とか" ガツンと言ってやろう!"とか思ったんじゃないかなぁ。
嫌味の一つや二つ、言ってやれば泣いて逃げ出すとでも思ったんだろう。


でも、嫌味のチョイスがかぁ~。


クリスが吹き出すのも仕方がない。
私だって吹き出してたかもね。

もしかして貴族社会では嫌味を言う時に、鉄板の" 屋台 "ネタでもあるのかね?

それとも私がボロッボロの屋台とともに侯爵家から追い出された事が噂になっているとか?
もしそうだったら流石に嫌だなぁ~。


「申し訳ありません。クリスは笑い上戸でして。

貴重なご意見をありがとうございます。

もしかしてハドソン様も商会をお持ちなのですか?」


もし、飲食店経営とかだったら、レシピの売り込みとかで行ってしまわないように気をつけなきゃ!


「君も雇い主なら躾はしっかりした方がいいぞ。

まぁ、君の商会がいつまで持つか分からないけれどな。

この私だって商会の経営が軌道に乗るまで二年は掛かったんだ。」


「えっ?じゃあ、それまで屋台を?」


「誰が屋台販売などするかぁっ!!」


「ブッ!や、やめろ、ティアナ。

ははっ、これ以上、わ、笑わすなっ。」


・・・別に笑わせるつもりも無いんだけど。バーナード様のツッコミのタイミングがよくて笑ったんじゃないの?


「君は嫌味も分からない程馬鹿なのか?

貴族が屋台販売などする訳ないだろうっ!」


貴族なら有り、なのかな?


「・・・はぁ、そうなんですね。」


この人、結構面倒臭い人なのかな?

いつまで玄関ホールで話す気なのかなぁ。会話が使用人さんたちに筒抜けなんだけれど、気にならないのかな。


「私は叔父上を支え、将来伯爵位を継ぐのだ。その為の勉強の一環として一から商会を立ち上げて実績を積んでいるんだ。

君みたいな軽い気持ちで商売をしている訳じゃない。
叔父上だけじゃなく、私を籠絡しようなどと考えるなよ。君の商会なんかと取引する気は無いからな!

それと、私には愛しい婚約者がいるのだ。不必要に私に近付く事は禁ずる。分かったな!」


" 取引をする気は無い "って、お互い何を扱っているのかも知らないのに簡単に言っちゃうのは随分迂闊だと思うのだけれど。


「フッ、先程は失礼いたしました。お詫びに、私が仲介役をさせて頂きます。」


クリスが澄まし顔で言っているけれど、最初に鼻で笑ってから話し始めたよね?
しかもなんか口角が上がっているけれど、悪い事を考えていそうで嫌だなぁ。


「そんな日は来る事はないだろうがね。

まぁ、いい。叔父上が帰って来るまで、ハドソン伯爵家の客人だという事を忘れずにを心掛けてくれ。

元が付くが侯爵令嬢だったのだろう?
が立つ様な軽はずみな行動は避けてくれたまえ。」


お前もな!


と言えれば良かったんだけれどね~。

で、この屋敷中の使用人たちに、と知られちゃったんじゃない?

使用人間で情報共有されてて実は知られていたかもしれないけれどさ。

家名までは知られてない事を祈るしかないかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここまでお読み下さりありがとうございます。

お気に入り登録及びエールでの応援もありがとうございます。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

処理中です...