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ニトの街にて
女商人は旅立ちを決める
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『おかき』のレシピの審査を行った日は、午後からノアさんのお兄さんの牧場へケイト様とクリスと一緒に行ってきた。
テレビやネットなどの特集や農業系漫画での知識がどれ程役に立つのかは分からないけれど、少しでも役に立つなら、とケイト様に同行を願い出たのだ。
ただ、終始『~だそうです。』とか『~らしいです。』という言い方になってしまうのが申し訳なかった。
例えば牛の飼育でも穀物系と牧草系の餌でも肉の味に違いが出るとか牧草も数種類混ぜて食べさせたり栄養価の高い牧草を食べさせる事でも違いが出てくる、というのは特集か何かで得た知識だ。
でも実際に自分が育てた訳ではないので、味にどう違いが出るのかも知らないしブレンドした餌の内容や比率も知らない。
そこはノアさんのお兄さんが試行錯誤をして育てていかなければならない。
最後には、これって本当にアドバイスとして役立つのだろうか、と思いながら話していた。
けれど牛を育てるにあたって、『自己流で試行錯誤しながら育てていたので勉強になりました。』とお礼を言われて恐縮してしまった。
本業の養鶏については、卵の出荷を生業としているそうなので、出荷前には卵に生活魔法のクリーン(この場合は洗浄目的で)をかけてから出荷をした方が良いですよ、とアドバイスをした。
だって卵は菌が怖いよねぇ。
市販の卵パックを買っても卵を洗ってから割る人もいる。この世界では卵かけご飯なんて無いだろうけれど、前世の世界でだって卵かけご飯は日本独自の文化だとか言われていたもの。
中国からの帰国子女の友だちが言っていたけれど、『卵かけご飯は食べちゃダメ。』と言われていて、一時帰国の時に食べるのがいつも楽しみだった、なんて笑いながら話していた。
本帰国前ぐらいには、日本人用のお米や卵が日本人スーパーで売られていて食べられるようになったんだよね、と付け足しで話していたけれど、日本で普通に食べていた私としてはそんな事があるんだ、と驚いたんだよね。
でもこの世界で生活していれば、卵かけご飯なんてちょっと怖くて食べられないな。
産みたての新鮮な卵を洗浄してその場で食べるなら有りかも知れない。
でもお店で売っている物では出来そうにないな。
卵に生活魔法をかけるのか、と驚かれたけれど、目に見えない菌が人間の体に悪さをする場合があるから、ぐらいの説明しか出来なかった。
それと卵が売れ残ったり在庫過多になった時用に卵料理やプリンやクッキーなどを作って販売したらどうですか、とお勧めしておいた。
って、自分が登録したレシピの売り込みみたいになってしまったけれど、そのまま廃棄処分になったりしたら勿体無いからね。
クリスは既に牧場に来ている冒険者パーティーと牧場周辺を探索して、警護する時に気をつける場所などをアドバイスをしていた。
Cランクに上がるぐらいまではそういう依頼も何度か受けた事があったんだって。ノアさんのお兄さんに牧場付近で出る魔物の種類を聞いて、その魔物の特性や対処の仕方などもアドバイスをしていた。
それが終わって宿屋の自分の部屋に戻ってふと思った。
もうそろそろ次の場所に行こうかな、と。
私が提案した『肉の街ニト計画』だけれど、売買契約は成立して一括で代金も受け取っている。私が思いつく限りのアイデアやアドバイス的なモノも書類に落とし込んでいるし、都度思いついた事はケイト様たちに伝えてきた。
私は発案者ではあるけれど、この計画は即にダイアナ商会のモノだ。そしてケイト様たちが立ち上げたダイアナ商会は、即に計画を実行する為に従業員になった人たちと計画を進め始めている。
もう部外者の私が何かを決めたり口出しする事じゃない。
相談されたり質問されればいくらでも協力はするけれど、私が提案した内容については一通り説明もアドバイスもしたし、ピレネー子爵家への取り次ぎやルードさんやラルフレッドさんとの顔繋ぎも出来た。
私が出来る事は全部やったんじゃない?
そう思ったら、もう私がニトでする事は無い気がする。
それに随分と色々な事があって慌ただしい毎日だったけれど、王都を出てからまだ一か月も経っていないんだよね。
元家族たちが私を連れ戻そうとする事は無いだろうとは思う。
でも、私の考える料理レシピ目当てでイケアで誘拐されかけた事を考えると、何かのキッカケでエトリナ商会の事を知って、私を利用する為に連れ戻そうとするかも知れない。
追い出されて直ぐに本名で商会の登録をしちゃったからねぇ。
それも考えたら、もっと王都から離れた方がいいかも知れないよね。
良し、決めた!
三日後にニトを出発をしよう!
テレビやネットなどの特集や農業系漫画での知識がどれ程役に立つのかは分からないけれど、少しでも役に立つなら、とケイト様に同行を願い出たのだ。
ただ、終始『~だそうです。』とか『~らしいです。』という言い方になってしまうのが申し訳なかった。
例えば牛の飼育でも穀物系と牧草系の餌でも肉の味に違いが出るとか牧草も数種類混ぜて食べさせたり栄養価の高い牧草を食べさせる事でも違いが出てくる、というのは特集か何かで得た知識だ。
でも実際に自分が育てた訳ではないので、味にどう違いが出るのかも知らないしブレンドした餌の内容や比率も知らない。
そこはノアさんのお兄さんが試行錯誤をして育てていかなければならない。
最後には、これって本当にアドバイスとして役立つのだろうか、と思いながら話していた。
けれど牛を育てるにあたって、『自己流で試行錯誤しながら育てていたので勉強になりました。』とお礼を言われて恐縮してしまった。
本業の養鶏については、卵の出荷を生業としているそうなので、出荷前には卵に生活魔法のクリーン(この場合は洗浄目的で)をかけてから出荷をした方が良いですよ、とアドバイスをした。
だって卵は菌が怖いよねぇ。
市販の卵パックを買っても卵を洗ってから割る人もいる。この世界では卵かけご飯なんて無いだろうけれど、前世の世界でだって卵かけご飯は日本独自の文化だとか言われていたもの。
中国からの帰国子女の友だちが言っていたけれど、『卵かけご飯は食べちゃダメ。』と言われていて、一時帰国の時に食べるのがいつも楽しみだった、なんて笑いながら話していた。
本帰国前ぐらいには、日本人用のお米や卵が日本人スーパーで売られていて食べられるようになったんだよね、と付け足しで話していたけれど、日本で普通に食べていた私としてはそんな事があるんだ、と驚いたんだよね。
でもこの世界で生活していれば、卵かけご飯なんてちょっと怖くて食べられないな。
産みたての新鮮な卵を洗浄してその場で食べるなら有りかも知れない。
でもお店で売っている物では出来そうにないな。
卵に生活魔法をかけるのか、と驚かれたけれど、目に見えない菌が人間の体に悪さをする場合があるから、ぐらいの説明しか出来なかった。
それと卵が売れ残ったり在庫過多になった時用に卵料理やプリンやクッキーなどを作って販売したらどうですか、とお勧めしておいた。
って、自分が登録したレシピの売り込みみたいになってしまったけれど、そのまま廃棄処分になったりしたら勿体無いからね。
クリスは既に牧場に来ている冒険者パーティーと牧場周辺を探索して、警護する時に気をつける場所などをアドバイスをしていた。
Cランクに上がるぐらいまではそういう依頼も何度か受けた事があったんだって。ノアさんのお兄さんに牧場付近で出る魔物の種類を聞いて、その魔物の特性や対処の仕方などもアドバイスをしていた。
それが終わって宿屋の自分の部屋に戻ってふと思った。
もうそろそろ次の場所に行こうかな、と。
私が提案した『肉の街ニト計画』だけれど、売買契約は成立して一括で代金も受け取っている。私が思いつく限りのアイデアやアドバイス的なモノも書類に落とし込んでいるし、都度思いついた事はケイト様たちに伝えてきた。
私は発案者ではあるけれど、この計画は即にダイアナ商会のモノだ。そしてケイト様たちが立ち上げたダイアナ商会は、即に計画を実行する為に従業員になった人たちと計画を進め始めている。
もう部外者の私が何かを決めたり口出しする事じゃない。
相談されたり質問されればいくらでも協力はするけれど、私が提案した内容については一通り説明もアドバイスもしたし、ピレネー子爵家への取り次ぎやルードさんやラルフレッドさんとの顔繋ぎも出来た。
私が出来る事は全部やったんじゃない?
そう思ったら、もう私がニトでする事は無い気がする。
それに随分と色々な事があって慌ただしい毎日だったけれど、王都を出てからまだ一か月も経っていないんだよね。
元家族たちが私を連れ戻そうとする事は無いだろうとは思う。
でも、私の考える料理レシピ目当てでイケアで誘拐されかけた事を考えると、何かのキッカケでエトリナ商会の事を知って、私を利用する為に連れ戻そうとするかも知れない。
追い出されて直ぐに本名で商会の登録をしちゃったからねぇ。
それも考えたら、もっと王都から離れた方がいいかも知れないよね。
良し、決めた!
三日後にニトを出発をしよう!
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