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イケアの街と面倒事
彼女が消えた。 side ロイド
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目の前の光景が信じられなくて、ただ呆然と立ち竦んでしまった。
昨夜、ルードはティアナ嬢の料理レシピの申請書類に関心を寄せていた。事実、私がソファに横になると、封書から書類を取り出して読んでいるようだった。その少し後、目を覚ました私はテーブルに封書が無くなっているのを確認し自室に戻った。
後はルードがこっそり屋敷を出て行くのを確認させて念の為、何処へ向かうのか、尾行させる予定だった。
早朝、いつもより早く目が覚めると簡単に身支度を整えて執務室に向かった。もし夜が明ける前にルードが出て行ったのならば、執務室の方へ報告が届いているはずだったからだ。
しかし、居たのは困惑気味のセバスだけだった。
「厨房にも外へも出た様子は無くまだルード様は睡眠中の様です。」
その言葉に『良い酒を飲ませ過ぎたか!』と後悔する。
口当たりの良い美味い酒はついつい飲み過ぎてしまい気づいた時には足腰立たなくなるまで飲んでいた、という事があったりする。
ルードは特に酒に弱い訳でもなく酒は飲み慣れている筈ではあるが、昨夜は美味い酒に酔って飲み過ぎてしまったのかも知れない。
しかし、書類を盗んでおいて寝過ごす事なんて事があるだろうか。
昨夜うたた寝をする前に何かが引っかかった事を思い出して不安に駆られる。
俺は何かを間違えたのか?
その後も部屋の前を見張る者や外の見張りからも連絡がないまま時間が過ぎていき、痺れを切らした私はルードが宿泊している部屋へと向かう事にした。
ルードは、、、、そこに居た。
ベッドの上に書類を散らかしたまま、大きなイビキをかいている。ベッドサイドにはこの部屋に常備されているワインとグラスが残っている。
部屋に戻ってからも飲んでいたのかっ!
一瞬、カッとなったものの、この状況に困惑する。
書類を盗み出しておきながら深酒をして寝坊するなんて事があり得るのか?
しかも何故、こんな風に書類を散らかしているんだ?
このまま起きるまで待つべきなのか、と思案していたところに不意にクリス殿に声をかけられて我に帰る。このまま此処にいても仕方がないので二人で執務室に戻る。
クリス殿に詰め寄られるがルードの予想外の動きに計画が大きく狂った事に私も動揺が隠せなくどう対象すべきなのかすぐに答えが出せない。
結局、この状況では本当の計画について話をせざるを得なく、問われるがままに答えた。
次第に苛立ちを隠さなくなっていくクリス殿をどう宥めようか、と思っていた時、不意に扉が大きな音を立てて開いた。
「ティ、ティアナ様がっ!行方不明になりました!!」
真っ青な顔をして飛び込んで来たアーニャの言葉に壁際で気配を消して立っていたセバスもアーニャの方を驚きの表情で見る。
「オイっ!どういう事だっ!何でティアナが!!」
立ち上がってアーニャの前に出たクリス殿は無意識なのか、私でもわかるぐらいに殺気立っている。
「それがっ、ティアナ様は接客と言うか、購入する為に並んでいる人々に試食を配っていました。
ついでにエトリナ商会のレシピが食べられるお店を宣伝を交えて会話をしていたらしいのですが、昼時の行列で市場も一番人が多い時に気付いたら居なくなっていたんです。
私がっ!私の所為ですっ!油断してっ、、。だからっ!」
こんなに取り乱したアーニャを見るのは初めてだった。彼女はセバスが鍛えた者の中で一番と言っていいぐらい優秀でいつも冷静だに対処していたのに。
「アーニャ。落ち着きなさい。目撃者は?最後に見た者は?」
セバスがアーニャの方に手を置き落ち着かせながら質問をする。
「そ、それが分からないんです。今日も長い行列が出来ていて、試食品が無くなったら屋台まで取りに来て、を繰り返していました。
ティアナ様は並んでいる方たちにも丁寧に対応されていて十分から二十分は戻ってこない事もあったんです。
私も会計と商品の受け渡しに忙しくて、お客がひと段落した時に初めてティアナ様が戻って来ていない事に気付きました。
今日はティアナ様も出歩く予定が無かったので、内密でつけていた見張りも居なかったのです。それがっ、こんな事に、、、。」
「屋台はどうした?」
殺気立ちながらもセバスが前に出てきた事もあって、冷静さを取り戻したらしいクリス殿が不意に言った。
「えっ?それは、、、ちょうどサムが来た時だったので、二人に任せてきました。急に屋台を中止して事を大きくしてしまうのは避けた方がいいか、と。」
「なら、ちょうど良い。安売りでも試食でもなんでもして人を集めたら聞き込みをしろっ。
列に並んだ奴らに昼前にも買いに来たか市場に居たかを確認して、ティアナを見かけた奴が居ないかを確認するんだ。誰かが絶対見ている筈だ。」
クリス殿はアーニャに向かって一気に言うと、振り向いて私を見た。
「オイっ。こんな状況だ。アホを起こしてティアナがいなくなった事と関係あるのか無いのか、聞きに行くぞ!」
言うが早いか、クリス殿はルードが居るゲストルームに向かって歩き出した。
関係あるのか無いのか。
何故、彼女を、の理由は分からない。
けれど、私の勘は関係があるのだ、と告げている。
そしてクリス殿が言った通り、ティアナ嬢が歩いている姿を見た者が居た。
ティアナ嬢はある人物の後を追いかける様に歩いて行った、と。
昨夜、ルードはティアナ嬢の料理レシピの申請書類に関心を寄せていた。事実、私がソファに横になると、封書から書類を取り出して読んでいるようだった。その少し後、目を覚ました私はテーブルに封書が無くなっているのを確認し自室に戻った。
後はルードがこっそり屋敷を出て行くのを確認させて念の為、何処へ向かうのか、尾行させる予定だった。
早朝、いつもより早く目が覚めると簡単に身支度を整えて執務室に向かった。もし夜が明ける前にルードが出て行ったのならば、執務室の方へ報告が届いているはずだったからだ。
しかし、居たのは困惑気味のセバスだけだった。
「厨房にも外へも出た様子は無くまだルード様は睡眠中の様です。」
その言葉に『良い酒を飲ませ過ぎたか!』と後悔する。
口当たりの良い美味い酒はついつい飲み過ぎてしまい気づいた時には足腰立たなくなるまで飲んでいた、という事があったりする。
ルードは特に酒に弱い訳でもなく酒は飲み慣れている筈ではあるが、昨夜は美味い酒に酔って飲み過ぎてしまったのかも知れない。
しかし、書類を盗んでおいて寝過ごす事なんて事があるだろうか。
昨夜うたた寝をする前に何かが引っかかった事を思い出して不安に駆られる。
俺は何かを間違えたのか?
その後も部屋の前を見張る者や外の見張りからも連絡がないまま時間が過ぎていき、痺れを切らした私はルードが宿泊している部屋へと向かう事にした。
ルードは、、、、そこに居た。
ベッドの上に書類を散らかしたまま、大きなイビキをかいている。ベッドサイドにはこの部屋に常備されているワインとグラスが残っている。
部屋に戻ってからも飲んでいたのかっ!
一瞬、カッとなったものの、この状況に困惑する。
書類を盗み出しておきながら深酒をして寝坊するなんて事があり得るのか?
しかも何故、こんな風に書類を散らかしているんだ?
このまま起きるまで待つべきなのか、と思案していたところに不意にクリス殿に声をかけられて我に帰る。このまま此処にいても仕方がないので二人で執務室に戻る。
クリス殿に詰め寄られるがルードの予想外の動きに計画が大きく狂った事に私も動揺が隠せなくどう対象すべきなのかすぐに答えが出せない。
結局、この状況では本当の計画について話をせざるを得なく、問われるがままに答えた。
次第に苛立ちを隠さなくなっていくクリス殿をどう宥めようか、と思っていた時、不意に扉が大きな音を立てて開いた。
「ティ、ティアナ様がっ!行方不明になりました!!」
真っ青な顔をして飛び込んで来たアーニャの言葉に壁際で気配を消して立っていたセバスもアーニャの方を驚きの表情で見る。
「オイっ!どういう事だっ!何でティアナが!!」
立ち上がってアーニャの前に出たクリス殿は無意識なのか、私でもわかるぐらいに殺気立っている。
「それがっ、ティアナ様は接客と言うか、購入する為に並んでいる人々に試食を配っていました。
ついでにエトリナ商会のレシピが食べられるお店を宣伝を交えて会話をしていたらしいのですが、昼時の行列で市場も一番人が多い時に気付いたら居なくなっていたんです。
私がっ!私の所為ですっ!油断してっ、、。だからっ!」
こんなに取り乱したアーニャを見るのは初めてだった。彼女はセバスが鍛えた者の中で一番と言っていいぐらい優秀でいつも冷静だに対処していたのに。
「アーニャ。落ち着きなさい。目撃者は?最後に見た者は?」
セバスがアーニャの方に手を置き落ち着かせながら質問をする。
「そ、それが分からないんです。今日も長い行列が出来ていて、試食品が無くなったら屋台まで取りに来て、を繰り返していました。
ティアナ様は並んでいる方たちにも丁寧に対応されていて十分から二十分は戻ってこない事もあったんです。
私も会計と商品の受け渡しに忙しくて、お客がひと段落した時に初めてティアナ様が戻って来ていない事に気付きました。
今日はティアナ様も出歩く予定が無かったので、内密でつけていた見張りも居なかったのです。それがっ、こんな事に、、、。」
「屋台はどうした?」
殺気立ちながらもセバスが前に出てきた事もあって、冷静さを取り戻したらしいクリス殿が不意に言った。
「えっ?それは、、、ちょうどサムが来た時だったので、二人に任せてきました。急に屋台を中止して事を大きくしてしまうのは避けた方がいいか、と。」
「なら、ちょうど良い。安売りでも試食でもなんでもして人を集めたら聞き込みをしろっ。
列に並んだ奴らに昼前にも買いに来たか市場に居たかを確認して、ティアナを見かけた奴が居ないかを確認するんだ。誰かが絶対見ている筈だ。」
クリス殿はアーニャに向かって一気に言うと、振り向いて私を見た。
「オイっ。こんな状況だ。アホを起こしてティアナがいなくなった事と関係あるのか無いのか、聞きに行くぞ!」
言うが早いか、クリス殿はルードが居るゲストルームに向かって歩き出した。
関係あるのか無いのか。
何故、彼女を、の理由は分からない。
けれど、私の勘は関係があるのだ、と告げている。
そしてクリス殿が言った通り、ティアナ嬢が歩いている姿を見た者が居た。
ティアナ嬢はある人物の後を追いかける様に歩いて行った、と。
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