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イケアの街と面倒事

危機的状況 *暴力表現やや有り

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暴力表現あり回です。(少しですが)


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私って何気に無詠唱でも魔法が使えてたよね?


でも、後ろ手で縛られている今、どうやって魔法を使うのか、よく分からないんですけど?



何で?


・・・・・。


あぁっ!!手か!いつもは魔法を放つ対象に手を向けてた!


もしかしてあれが照準代わりだった?


そうだ、そうだったよ。最初に水のボールを作った時も手の平の中だったし、いつも手を使ってたわ。


手を縛られている中、魔法を使おうとしたらどこに飛んでいくのか想像つかないよ。それで『風の刃』なんて使っちゃったら自爆しそうじゃない?


いや、無理っ。気持ちが怖がっちゃってるから魔法が使える気が全くしないんですけど。


んぁ~!もしかして魔法使いが杖を使うのってそれが理由?


杖の先が向いてる方に魔法を放つ、みたいな?


うわっ、今度、絶対自分の杖を作る!そんで袖口に収納する方法を見つけるし!


いやいやいやっ!今はそれどころじゃなかったわ。


魔法が使えるまでイチかバチか詠唱を唱えてみる?


けどラリーさんを怪我させちゃったらどうする?


うわ~んっ!私の役立たずぅ~!


「俺、割と喧嘩には自信がある方だけど、流石にこの人数は無理かも。3人ぐらいならなんとか?」


ラリーさんっ、それどっち?

3人は俺がやるからあとの2人をよろしく?


それともそう言って油断させておいて5人纏めて倒せるって事?


取り敢えず、ナイフは自分が怪我する予感しかないから、そっと後ずさって気付かれないようにベッドに落とそう。どう考えても今の状況では扱うのは難しいし。

足を使って抵抗するしかないかな。痴漢対策で確か思いっきり足を踏むとかあったよね?


「チャーリー、さん?私も家に帰りたいので今回のお誘いは無かった事にしましょう?

あー、、、この事は誰にも言いませんし。」


取り敢えずダメ元で言ってみる。



「大丈夫、君にはもっといい待遇を用意するから遠慮しなくていいよ。私の愛妾という地位も与えてあげるよ。」


それ、更に悪い待遇だからっ!


周りの男の人たちの笑い声がめっちゃ不快だから!


「それ、最悪な待遇ってやつ!」


そう言ってラリーさんが笑い合っている男の人たちに向かって、さっきまで座っていた椅子を投げつけた。

それが合図になって男の人たちもラリーさんの方へ向かっていく。ちょび髭はサッと後ろに下がって扉の方に寄った。


「ごるぁっ!こんなんで逃げられると思うなよっ。」


「ダン、お前は女の方だ!」


「ティアナっ!入り口へっ!」


「無駄だっ!」


ラリーさんと男の人たちの怒鳴り声が入り混じり激しい足音と殴り合う音の中で、私を捕まえるのが目的で私の方に向かって来る人が一人。

一人なら何とかなるかな。


ジリジリと嫌なニヤケ顔で近寄ってくる男に、諦めた様に少し微笑みながら一歩二歩近づいて行く。


「おぅ、そうだそうだ。ボスは大人しくしていれば悪りぃようはしないって言っているぜ。」


「そ、んなわ、け、あるかぁー!!」


相手が油断した瞬間に、少しかかんでから、思いっきり男の腹をめがけてタックルをかます。男は完全に気を抜いていたからあっさり転倒してくれた。

そのままちょび髭に向かってもう一度タックルをしようと走り出そうとしたら、ぬっと目の前に別の男の人が立ちはだかってあっさりと捕まってしまった。

捕まった私に気づいて既に二人を転がして三人目を相手していたラリーさんが私の方に手を伸ばそうとした瞬間、『ザシュッ』と大きな音ともに目の前が真っ赤になった。

「カハッ。」


真っ赤に染まったお腹を押さえてラリーさんが崩れ落ちる。


「ラリーさんっ!!」


ラリーさんに駆け寄ろうとしたけど、男に腕を取られて近寄れない。


「たった一人相手に三人掛かりで太刀打ち出来ないわ、小娘に転がされるわ。報酬分の働きはきっちりしてもらいたいね。

はぁ、これだから魔法が使えない腕だけが自慢の平民は、、、、。」


ちょび髭が魔法を使ったって事?


「ラリーさん、大丈夫ですか!」


服だけじゃなく床にまで赤い染みが広がっていて、大丈夫な訳ないけど思わずそう聞いてしまう。


「だ、いじょうぶ、、、くない。」


そう言ってまだ立ちあがろうとするラリーさんに、蹲っていた男が起き上がり後ろから殴りかかろうとするのが見えて、私を捕まえている男の人の足を思いっきり踵で踏みつける。

突然の事に男が手を離した隙に前のめりになりながらラリーさんに覆いかぶさった。


瞬間、肩に激しい衝撃が走り、殴られた反動でラリーさんの横にズサッと転がった。


「ティアナっ!!」


肩への衝撃と床に転がった時に頭を打ちつけた衝撃で目がチカチカする。体が少し浮いたと思ったら顔中血だらけのラリーさんの顔が目の前にあった。


「おいっ!お前ら、俺の金の卵に何をするっ!」


なんかちょび髭の怒鳴り声が聞こえる気がする。


誰がアンタの金の卵だ。ば~かっ。


遅れてやって来た痛みに顔が歪むけど、でも早く逃げなきゃ。ラリーさんが死んじゃう。


「ラ、リー、さん。に、げて。私は、だいじょ、、、ぶ、だか、、、ら。」


私は大事な商品らしいから捕まっても大丈夫。だけどラリーさんは危険だよ。

血、出てるし。


あぁ、肩も頭もズキズキしてきた。


このままじゃ、ラリーさんは死んじゃうし私もどこかで監禁されちゃうよ。


どうしよう、、、、。


どうなるの、、、?


誰か、助けて、、、。


そう思ったらクリスの腹黒な笑顔が頭に浮かんできた。



何でこんな大変な目に遭っているのに、クリスは助けに来てくれないの?


きっとこんな奴ら何人居ても、クリスならあっという間にやっつけちゃうんじゃない?


もう、護衛じゃないけど、


お給料も払えてないけど、


クリス、、、、助けてよ。


それは言葉に出ていたのかどうか。



遠のく意識が一瞬でハッキリするぐらい大きな音が響いて、入り口から懐かしい声が聞こえてきた。


「ティアナっ、無事かっ!!」




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