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イケアの街と面倒事
目覚めると *閲覧注意 (トラウマを匂わせる描写あり)
しおりを挟むこの回終盤からトラウマ的要素の話に入ります。
残酷な描写などは少なめだとは思いますが、受け取り方は人それぞれだと思いますので、そういう要素を含む回にはタイトルに * を入れるようにします。
虐待、トラウマ的要素が苦手な方は読み飛ばし等で回避して下さい。
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そろそろ目が覚める、という時に意識があるような無いような、『あぁ、もう起きなきゃ。』と思って目が覚める時がある。
でも体はまだ眠っていたくてダルくて頭も重い感じで中々目が覚めない。何だか体が動かそうとしても動かない、今がそんな感じ。
あぁ、でも目が覚めたって事は起きる時間なんだよね?
そう思いながら薄らと目を開ける。何だかまだ頭がぼんやりとしていて思考停止中。
とりあえず、ぼぉーっと目の前に映るものを眺めて、何かがおかしな事に気付いた。
目線の先にある古びた小さなテーブルと椅子に全く見覚えがない。ピレネー邸で用意された客室は、壁が白くて部屋の中央に配置された金糸で刺繍の入った赤いソファが目立つ。
そのソファが無い。月明かりが入ってくる大きな窓も部屋を照らす燭台も無い。
「え?此処、どこ?」
漸く此処がピレネー邸の部屋では無い事を理解してポツリと呟いて、起きあがろうとしたら体が動かなかった。
「あ、起きた?」
足元の方からどこかで聞いた事のあるような声がした。声の方に顔を向けようとしたけど、足元が見える事はなかった。
「えっ!?何で?体が動かないのっ?」
首から下が全く動かない。体は縛られた感じは無いのに体の自由が効かない。
ドクンっと心臓が大きく動いたような嫌な感覚が不意に襲ってきた。
「悪いな。アンタを連れてきて欲しいって頼まれたんだけど、運び易いように布団で巻かせてもらった。ほら、体を触られたりスカートが捲れ上がったりするの嫌だろ?」
足元の声の主が私の視線の先に入る様に移動して来た。
布団で巻く?
ドクリッ。
何かが頭の中を掠める。
「リサ、さんの。」
目の前で私の視線までしゃがみ込んだのは、リサさんに頼みごとをしてきた料理人風の男性。
「な、んで、こんな事を、、、。」
色々聞きたい事はあるのに、なんだか息苦しくなってきてモゾモゾと動こうとする。けれど直立の姿勢で布団で巻かれた体は僅かに指の先が動くだけだ。
そう思ったら、ゾワっと言い知れない恐怖心が突然襲ってきた。
私はこの感覚を知っている!
「・・・・・って聞いてるか?おいっ、アンタ、顔色が悪い・・・・。」
目の前の男の人が焦った顔をしているけれど、何を言っているのか分からない。
コワイ。
イヤダ。
急に私の中で色々な感情が溢れ出して自分でもわからなくなってくる。
「だ、して、、、こわいっ。、、、うごかない、、、や、だ。」
ドクドクと早くなる心臓の音だけが響いてくるようで、それと同時にどんどんと息苦しさと恐怖心が増してくる。
「お、おいっ!どうしたっ?大丈夫かっ!」
目の前の人が焦った顔で何かを叫んでる。
違うっ。叫んでいるのは私?
「た、すけ、、、て。こわい、やだ、だしてっ。やめて、、、ごめっ、なさい。ゆる、して。」
まるで言い慣れた言葉のように切れ切れに口をついて出てくるのは許しを乞う言葉。
息が苦しい。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!
頭の中が謝罪の言葉で埋め尽くされる。
いやだ、こわいっ、やめてっ。
頭の中の声なのか、本当に声を出しているのかも分からない。
目の前の景色が歪む。ひゅっと息をのんだのか、息を吸う事が出来なくなったのか。
「く、るしっ、いき、できなっ、、、い。」
気づいたら息できなくて、それ以上に苦しい。
あ、ダメだ、、、。
遠のく意識の中で不意に記憶が溢れる。そして思い出した。
あぁ、そうだった。
ティアナ、私もあなたと一緒だった。
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