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イケアの街と面倒事

楽しい晩餐

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「美味いっ!ピレネー邸の料理人は昔から腕は良かったが、これらの料理は今までにない味付けの料理だなっ。これがティアナさんの考えた料理なのか。凄いなっ。」


実家だからという気軽さからなのか、貴族のテーブルマナーなんてそっちのけでコーギー男爵は食べながら大きな声を何度も出している。料理を褒めてくれるのは嬉しいんだけどね。


なんで晩餐の参加者がロイドさん、コーギー男爵、私の3人だけなんだろうね。料理の説明が必要だからって、コーギー男爵の対面の席に私っていいのかなぁ、これ。


「兄さん、落ち着いて下さい。今日はティアナさんが兄さんの為に未登録の料理を振る舞ってくれているんですよ。」


当主の席からロイドさんが話しているけれど、出来れば一々、私の名前を出すのは遠慮して欲しい。


今夜の晩餐は、ミリアさんの体調不良という事で、ミリアさんとサミュ君はこの場には居ない。これはきっと二人にコーギー男爵を近づけたくないロイドさんの指示なのだろう。

でもさ、壁側にセバスさんやクリスが控えては居るけれど、すごく気まずいんだけど。コーギー男爵の大声ばかりが食堂で響いているのよ。


コーギー男爵は3人だけという事については、何も思うところは無いというか、きっと何も考えていない気がする。

晩餐が始まってからよく食べて、何かの自慢話をベラベラと喋り、一人でご機嫌な様子だ。

「何っ!?どれが未登録の料理なんだ?もしかして新しい料理を食べるのは、私が一番最初だった、という事か?それは嬉しいな。どの料理か教えてくれっ。」


コーギー男爵は食道楽だったのかな。料理に対しての関心がすごく強い。それに、、、。


「ティアナさん、新しく登録する予定の料理の説明を兄さんにしてくれないか?」


「あ、はい。新しく申請する予定の料理は、その中央のお皿に盛り付けてある『ローストビーフ』と『ベーコン』になります。

『ローストビーフ』はレッドブルの肉を使用していまして、ソースをかけて召し上がって下さい。ソースはベースに赤ワインを使っています。

『ベーコン』はボア肉を使用しています。ベーコンそのものの味を先ずは味わって頂きたい、と軽く両面を焼いた物をお出ししています。

それ以外に付け合わせとして調理した『ベーコンポテトサラダ』と『ジャーマンポテト』を用意しました。ベーコンはスープなどに入れても美味しいんですよ。」

登録申請前だから調理方法などは説明しない。

肉シリーズは色々と試したい料理があったんだよね。

本当はジパーンの調味料を手に入れたから角煮やチャーシュー作りをやりたいと思っていたんだけど、今回はお土産にする事も考えて断念した。

『ローストビーフ』と『ベーコン』なら盛り付けを凝ったものにすれば見栄えもよくなりそうだしね。

どちらも挑戦しようと思っていた料理だったから、話を受けてすぐに準備を始めて、夜に何度か試作で作っていたのだ。

レシピを登録するには調理方法や時間などを明確に記載しなければ、という事もあったからだ。

ローストビーフは密封出来るビニール袋があれば、作るのは簡単だったんだけれどね。あと炊飯器とかさ。

無いも物は仕方がないので、肉全体に焼き目を付けた後は、乾いた布巾で包んで皿に乗せ、茶碗蒸しのような感じで蒸した。何度か試行錯誤を繰り返し蒸し時間を調整してなんとかレシピとして完成した。


同じ様にベーコンもアルミホイルとかがあったらなぁ、とは思ったけれど、こちらも適当なお皿の上に網を乗せて代用しフライパンを使って作った。

燻製用チップについてはダント親方を頼った。お茶っぱとかでも出来るからたぶん紅茶でも出来るんじゃないかなぁ、とは思う。

テーブルには他にも先に登録したシチューやグラタンなども用意されている。私が登録した料理ばかりが並んでいる事は少し気になったけれど、そこは考えても仕方がない。
今日はそういうコンセプトでのおもてなしなんだろうね。

デザートにはプリンとキャラメルを用意した。プリンはお土産に持たせるのは難しいかも知れないので、その代わりがキャラメルだ。

セバスさんに確認したらクーラーボックスのような魔道具があり、それで持ち帰る事になるだろう、との事だったので、キャラメルが溶けてベタベタになる事も無いと思う。


「いやぁ、このキャラメルというのも美味しいな。材料はバターと砂糖とミルクだけなのにこんなに美味しいものになるとは驚きだよ。」

。晩餐の間、自分の自慢話をベラベラとよく喋るコーギー男爵だったけれど、料理を口にすると、『美味しい』という言葉とともにその料理に使われている食材を聞かれもしないのに言い当てているのだ。
時には『これは塩をもうひとつまみ入れた方がもっと美味しくなるんじゃないか』などと言ったりもする。

ロイドさんはコーギー男爵のいつもの自慢話だとでも思っているのか、適当に聞き流しているみたいで、きっとこれがコーギー男爵のいつもの姿なんだろう。


食べただけで何が使われているとか作り方が予想出来るって凄い事なんだけれど、今まで誰もそれに気づいていなかったのかな。

コーギー男爵自体も気づいていないようだけれど、それはきっと男爵にとっては当たり前の事だからなのかも。


「ロイド、俺にいい加減お前の店を寄越せよ。俺みたいな食通がやってこそ、店が繁盛するんもんなんだよ。なんならイケアごと俺に任せてくれてもいいんだぞ?」


コーギー男爵、いつもこんな感じで言っちゃてるのかな。今夜は身内以外の私が居るんですけど?


「兄さん、相変わらず冗談がお好きですね。兄さんはコーギー領の仕事で手一杯でしょ。」


笑顔で言い返しているロイドさんの目が笑っていないんですけど。


「俺は本気だっていつも言ってるだろ。お前も商才があったからイケアもここまでになったのは分かるけどさ。

でもピレネー家の長男の俺が本気出せば、もっとこの街を栄させられると思うんだよ。。」


コーギー男爵はロイドさんのアルカイックスマイルに気づいているのかいないのか。
小心者っぽい割に、兄弟だという気安さなのか、結構でかい口を叩いているよねぇ。

ん?ちょっと待って。今、なにか気になる事を言ってなかった?


「ははは、兄さんは意外と人望があるんですねぇ。兄さんをそんなに買ってくれている人たちが居るなんて驚きですよ。是非とも僕もお近づきになりたいなぁ。」


ロイドさんの声が一段、低くなってストレートに嫌味を言っている気がするんだけど、それでも酔っているからなのか、コーギー男爵は気にしていない。


「んん?俺はいつだって皆に慕われて頼りにされているんだぞ、お前が知らないだけでな。」


既にワインを結構飲んでいるコーギー男爵は、きっと話を逸らそうとした訳では無いと思う。

「兄さん、これ以上飲むととっておきのお酒を飲む前にダウンしてしまいますよ。

話の続きは僕の部屋でしましょう。」


そう言ってロイドさんはセバスさんに視線で指示を出し、ロイドさんたちは自室に消えて行った。


こうして今夜の晩餐は終了した。


うん、楽しい晩餐、だったよね、男爵にとっては、、、、。



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注意喚起というか、予告になりますが、

数話先に児童虐待の描写や閉所恐怖症、暗所恐怖症のような症状の描写が出て来る予定があります。

タイトルに表記と話の前にもう一度、注意喚起をする予定ですが、そういうのが苦手に感じる方は読み飛ばしをおススメします。

過去話(回想シーン)での描写なので、読み飛ばしてもたぶん大丈夫だと思います。

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