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南の街、イケアに向けて

乗り合い馬車で忍耐力強化ですか?

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カントから南の街まで乗り合い馬車で2日。馬車に乗ってるから楽チンだ、と思っていた出発前の私を「旅はそんな甘っちょろいモノじゃない!」と叱りつけたい。


馬車は10人ちょっと乗れば満員になるだろうぐらいの大きさの幌馬車4頭立てだった。席は板張りで左右に乗客が向かい合わせになる形になっていた。

イケアを出発する時に乗っていたのは私たちを含めて7人。乗客は途中で乗ったり降りたりしながら最終地点のニトを目指して行くのだそうだ。


そして私たちの格好は冒険者スタイルだ。2日間の長旅と貴族が乗る馬車ではなく乗り合い馬車だったので、私も動きやすい服装が良いとクリスに言われたからだ。田舎道を通り旅なので万が一に備えて、という事みたい。


クリスは元々冒険者だけあって冒険者の格好がサマになっている。私はいかにもたった今買ってきました、とばかりの新品の冒険者スタイルでどうにも気恥ずかしい。まだ、一度も冒険者として活動していない、っていうのもあるんだと思う。ちょっとコスプレしている気分だもん。


私たちはあまり目立ちたくないのでフードのついたマントを身につけてフードを被っている。だから人目も気にならないし他の乗客からも見られる事は無い、と思っていたら他の乗客の目は常にこちらを向いている気がする。


 それは若い女性3人組がクリスにせっせと声を掛けてくるせいだ。残りの二人は20代前半ぐらいの冒険者の若い男性たち。


そう、人数的には若い男女の合コンの場のような状態だった。折角目立たない様にフードを被って居たのに女性3人組は目ざとくクリスをイケメン判定した。


そしてあまり身動きの取れない馬車の中で、私たちの対面に陣取りせっせと甲高い声で話しかけてくる、クリスにだけ。


私?空気よ。居ない者として扱われているから、注目されているのはクリスだけって事ね。


残りの冒険者たちは話の輪に入りたそうに一人はクリスの隣にもう一人は対面に座って隣の女性と私の方を交互にチラ見してくる。この人は女同士のバトルを期待しているのかもね。


クリスの隣に座っている冒険者の方は私たちの前に陣取って座っている女性たちを鼻の下伸ばして見ているんだろうなぁ。女性3人組は中々に容姿が整っている上に女性アピール強めの人たちだから。


3人の女性たちは多分私より全員年上だと思う。1人目は20歳ぐらいの茶髪茶目のポニテ姿でちょっぴり垂れ目なところがまたキュートな印象を受ける庇護欲を唆る感じ。

2人目は20代前半?ぐらいで肩までの長さの赤髪に切れ長の目に色気が漂っている目元の涙黒子と真っ赤な唇が印象的で、ちょっと勝気そうな顔つきだけど座っているのにスタイルの良さが見てとれるセクシー系。

3人目はクリスと同じぐらいかな。黒髪ロングで薄い唇が誘っているような色香があり、スタイルも正にボンキュッボン!だ。

その3人は色は違うけれどそれでも体型が引き立つデザインの膝下ぐらいのワンピースを着て意味も無くクリスの前でせっせと何度も脚を組み替えてる。


クリス?もう丸っ切り無視よ?いつも注目集めてるもんね~。


嬉しくもなければ煩わしいに尽きる、といった雰囲気で全く相手にしていないの。


何だろ、3人組が完全無視に焦れて、居ない者扱いしていた私に絡み始めてきたんですけど?


「あなた、彼とどういう関係?兄妹って訳じゃなそうだし。」


と、赤髪のお姉さん。私は自己紹介されていないんだけどね、どうやらイザベラさんというお名前らしい。


「ねぇちょっと聞こえてるぅ?折角、一緒の馬車に乗っているんだから道中仲良くしましょう?」


そう言いながらも私ではなくクリスをウルウルと見つめている茶髪のキャサリンさん。


「あなた、フード取ったら?あなたに気を遣って彼もフードが取れないんじゃないの?」


と胸元の開いた真っ赤なワンピースを見事に着こなしている黒髪のルーナさん。


えぇ~、これ、私が迂闊に会話しちゃったら後で説教タイムが待ってるんじゃない?


隣のクリスをチラリと見上げると眉間に皺を寄せて目を閉じている。目を閉じてるのに相手にするんじゃないぞ!の圧を感じるんですけど!


こうなれば私も寝たふりするしかないかぁ。


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