美化係の聖女様

しずもり

文字の大きさ
上 下
32 / 49
ガーナの街にて

黒いモヤは無事に消えました。

しおりを挟む
2階は二部屋あり、レコアさん夫婦の寝室とロイ君の部屋、それにトイレがあった。


どちらの部屋も埃が溜まっているぐらいで部屋自体はキチンと整理整頓されていて比較的綺麗な部屋だった。

但し、レコアさんの部屋は黒いモヤが結構棲みついていらっしゃる。この状態でレコアさんに生活魔法綺麗にな~れをかけても意味がないだろう。

だから、先ずはレコアさんにロイ君の部屋で待機して貰って、レコアさんの部屋の黒いモヤをした方が良いと判断した。


レコアさんは胸の辺りにベッタリと黒いモヤがついている所為か、補助無しで歩くのは難しいらしい。何とかベッドから体を起こす事は出来ても一人では歩けそうにない。

ロイ君と私で二人がかりで支えるにはロイ君の身長がまだ低いので難しい。そうなると私一人で支えないといけないけれど万が一、支えきれずに倒れたら大変だ。


だからレコアさんに肩を貸す時に背中を支える様に手を回し、こっそりと『綺麗にな~れ!』と心の中で念じてみた。


すると後ろから押し出されて出てきた感じでレコアさんの胸の辺りから黒いモヤがザザッと出てきた。


おぉぅっ、黒いモヤって体の中にまで入り込んでくるんだね。


体の中に入ってくるって何だか怖いな。そりゃ体調も悪くなるよねぇ。


レコアさんは『あ、あら?』と何か体調の変化を感じたようだけれど、まだ黒いモヤは残っている。それでも先程よりは体調が良くなったようで、私一人の補助で歩ける様になってロイ君の部屋まで歩く事が出来た。



ロイ君にはお母さんについているようにお願いしてから、レコアさんの寝室に戻って扉を閉める。


目がある様には見えないけれど、さっきの様子を見ていたかのように私が部屋に戻ってくると、大量の黒いモヤは私を避ける様に勢い良く部屋の隅にバッと大移動した。


ふっふっふ、黒いモヤ君たち、そんな所に逃げても無駄なんだよ?


掃除をしながら何となく『綺麗にな~れ!』と言って黒いモヤを消滅させていた少し前の私とは違うのだ。


今はこの『綺麗にな~れ!』が浄化クリーンだという事を私はしているのだ。


なんでもそうだと思うけれど、何となくしていた時と自覚を持ってしている時では効果に違いが出てくる、、、気がする。個人的に。


だからこの『綺麗にな~れ!』は少し前とは効果の強さが違うのだ、、、たぶん。


一人で黒いモヤに向かってドヤ顔かましている姿は他人から見たら十分怪しい。けれど誰にも見られていないなら問題無し、だ。


私は胸の前で両手を祈る様に結んで強く強く願った。



綺麗にな~れ!!


その瞬間、何処かへと移動するのではなく、黒いモヤはシュッと消えて無くなった。


気のせいかも知れないけれど、部屋の中も少し明るくなった様な、、、。


確認の為、部屋をグルリと見回して黒いモヤが無くなっている事を確認する。


「良しっ、黒いモヤは全部消えたね。じゃ、部屋の掃除とシーツを交換してしまおう!」


昨日、入手したばかりの魔法鞄ポシェットからお馴染みの掃除道具を一式出すと病人を待たせているので手早く掃除を済ませた。


「あらっ、何だか部屋が明るくなったみたい。
やだわ、そんなに薄汚れていたのかしら?恥ずかしいわ。」


レコアさんは普段、綺麗好きなのか几帳面なんだろうな。さっきも気にしていたし。


「そんな事ないですよ。きっと空気の入れ替えをしたからそう見えるんだと思いますよ。」


さっきまで部屋は黒いモヤだらけでした、と言っても何の事か分からないだろう。


「それではベッドに横になって楽にして下さい。服の上から少し胸の辺りに触れますけれど脱ぐ必要はありませんしすぐ済みますから。」


そう言って私には見えている黒いモヤにソッと手を近づけた。しぶとく残っていた黒いモヤを逃がさない様に囲い込む様に両手を近づけて『綺麗にな~れ!』としつこく念じた。


リカルドさんやロイ君の手に付いていた様に黒いモヤは体の弱っている部分や怪我をしている部分に纏わりついてくるのだろう。


レコアさんから黒いモヤは見えなくなったけれど、きっとレコアさんは胸の辺りに何か病気を患っているのだと思う。それが肺炎のようなモノなのか腫瘍のようなモノなのかは私には分からない。


「えーと、レコアさん。少しは症状が軽くなったりといった感覚は有りますか?」


「えぇ、えぇ。私の体に貴女の手が触れた時、とても温かい何かに包まれたような感じがしたの。
それからスーッと胸のつかえが取れたような感覚になって大分楽になったわ。ありがとうございます。」


「お母さんっ!」


先程よりも一人で楽に体を起こした後、レコアさんは驚いた顔をした後に嬉しそうに言った。ロイ君はその様子を見て嬉しそうにレコアさんに抱きついている。


「少しでも楽になったのなら良かったです。後はお医者様の管轄だ思いますのでもう一度診てもらって下さい。」


「えぇ、本当にありがとうございます。でもどうやってお礼をしたらいいのかしら。」

少し申し訳なさそうにレコアさんは言うけれど、私は治癒師でも医者でも無いからねぇ。これぐらいでお礼なんてして貰ったらダメでしょ。病気の原因とか病名が分かる訳ではないしね。


「気持ち程度体が楽になっただけでしょう。それぐらいの事でお礼なんて不要ですよ。念の為、明日、もう一度、様子を見に来ますね。」


この後、一階を綺麗に片付けて帰るつもりだけれど、黒いモヤが復活すると大変なので明日また様子を見に来よう。


「リオ姉ちゃん、ありがとうっ!また明日来てくれるのっ?」


ベッドから起き上がったレコアさんにヒシッとしがみついていたロイ君は振り返って私を見ると嬉しそうに笑顔でお礼を言ってくれる。


「うん、また明日ね。」


この笑顔が見られて良かったなぁ~。


実は何も出来なかったらどうしよう、と内心は不安だったんだよね。少しでも役に立てたなら良かった、良かった。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

【完結】姉に婚約者を寝取られた私は家出して一人で生きていきます

稲垣桜
恋愛
私の婚約者が、なぜか姉の肩を抱いて私の目の前に座っている。 「すまない、エレミア」 「ごめんなさい、私が悪いの。彼の優しさに甘えてしまって」  私は何を見せられているのだろう。  一瞬、意識がどこかに飛んで行ったのか、それともどこか違う世界に迷い込んだのだろうか。  涙を流す姉をいたわるような視線を向ける婚約者を見て、さっさと理由を話してしまえと暴言を吐きたくなる気持ちを抑える。   「それで、お姉さまたちは私に何を言いたいのですか?お姉さまにはちゃんと婚約者がいらっしゃいますよね。彼は私の婚約者ですけど」  苛立つ心をなんとか押さえ、使用人たちがスッと目をそらす居たたまれなさを感じつつ何とか言葉を吐き出した。 ※ゆる~い設定です。 ※完結保証。

公爵令嬢の外つ国婚礼物語

吉華(きっか)
恋愛
西の大陸のエスメラルダ王国の公爵令嬢マリガーネット・ランウェイが東の大陸の月晶帝国の皇太子劉蒼玉の元へ嫁ぐ事になった話。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!

林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。 夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。 そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ? 「モンスターポイント三倍デーって何?」 「4の付く日は薬草デー?」 「お肉の日とお魚の日があるのねー」 神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。 ※他サイトにも投稿してます

超人だと思われているけれど、実は凡人以下の私は、異世界で無双する。

紫(ゆかり)
ファンタジー
王弟の娘であるリシャーナが、不可思議な魔力暴走で全身に大火傷を負い、たった9歳で余命宣告を受けてしまう。 醜い姿となってしまった王女は周りから忌み嫌われ、婚約者だけではなく友人までもが去って行った。 王弟一家は全てを失い、人生を諦めてしまった娘に、何もしてあげられない事を悔やんでいる。 幼い頃から見たがっていた、北国にしか咲かないと言う花を最後に見せてあげたく、北を目指す事になったのだが…。 そこには、王弟の息子ルイフォードの婚約者候補が居る。 領地から出た事もない筈の彼女は、何故か王都では悪評まみれの令嬢だった。 噂を真に受けてはいなかったが、憂鬱な思いでオルテンシア伯爵の娘カルティアと出会った第一印象は、お互い最悪なものになる。 医術師兼薬術師としての責務を果たそうと奮闘するカルティアは、リシャーナを治そうとし体内を診察した結果、とんでもない物を見つけてしまうのであった。 主人公であるカルティアの周りには、才能あふれる人間しか居ない。 母体に居る時から神獣に愛されていたのだが、両親の苦手を受け継いでしまい、何の才能も持たずに産まれてしまった。 それでもカルティアは、前向きに明るく生きて行く。 夢は、女性最年少ソードマスターになる事。 好きな物は、薬草。 趣味は、新種の薬草を見つけたり、薬を作ったりする事。 訳あって呪術も身に着け、生きる為に必要な魔術も叩き込まれた。 仲良しの従姉妹、クレアナと共に医術の勉強もしている。 そんなカルティアは、神獣と繋がっていた事で、誰にも言えないチートのレベルを超えた、スキル?を持っていた。 その為周りからは超人と思われているのだが… 実際は、人一倍努力をする子なのである。 魔術の詠唱文は無い知恵を振り絞って考えています。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

処理中です...