8 / 49
聖女召喚は成功した、、、ハズ?
初めての食べ物 side冒険者
しおりを挟む
アサド村の宿屋には年に数回、依頼の途中で寄る事があった。アサド村は西の辺境の地の一歩手前の最後の宿屋だったからだ。
その先には勇者村と呼ばれる、初代勇者が生まれたと言われている村がある。初代勇者は魔王討伐後に再びこの村に戻って過ごしたと伝えられている場所だ。
嘘か本当か、今では村人全てが勇者の血をひく子孫だと村人たちは誇らしげに言っていた。
そんな村も今では20人ほどしか住んでいないそうで、自給自足をしながら偶に訪れる冒険者などを相手に勇者縁の土産物を売ったりしている。
俺も『勇者の書』を買って息子への土産にした事がある。速攻、落書きされて読まれる事なく終わったが。
その村の先の国境付近は少々厄介な魔獣が定期的に出現するそうで、見廻り討伐を兼ねた依頼が国から冒険者ギルドに年数回出されていた。
まだ魔獣の目撃証言は得られていない噂程度の話だが、最近アサド村を少し行った先の森にも魔獣が出ると言われている。今回の依頼はその森の調査も含まれていた。
夕方、アサド村に着いて調査は明日からだ、と宿屋の食堂で一緒に依頼を受けたジェリドと飲み始めた。
少し前に仲良くなった村人3人と楽しく飲んでいたところ、黒髪黒目の少女が料理を運んできた。黒髪は多くはないものの偶に見かける事はあった。しかし瞳まで黒いのは珍しい。
女将にリオと呼ばれた少女はロンに『お嬢ちゃん』と呼ばれて少しムッとしているようだった。
そうだな、この年頃は大人に見られたいもんだよな、と王都に住む娘を思い出して微笑ましく見ていた。
そのうちケニーたちが『もっと他の料理が食べたい。』などといつもの軽口を叩き始めたところ、リオと呼ばれた黒髪の少女が厨房に入って何やら作り始めた。
やがてパチパチと油がはねる音がし始めて、しばらくすると宿屋の女将のメアリーが口をモゴモゴさせながら黄色っぽい何かがのった皿をテーブルに持ってきた。
「じゃがいも?」
「初めて見る料理だな。」
俺たちは恐る恐る出された2枚の皿に手を伸ばした。
「!?」
「な、何だこりゃ?」
「う、うめぇ!」
じゃがいもを薄く切ったやつはパリパリした食感で塩味が効いていて美味い。もう一つの細長い棒みたいなじゃがいもの方も同じ塩味なのに食感がホクホクしていてまた美味しい。そして確かにエールをもっと飲みたくなる旨さ。
俺たちが奪い合うように飲みながら食べているとリオはまた何かを作っているらしい。今度も油を多く使っているようでジュワジュワと油が音を立てている。その内、いい匂いがしてきて何が出てくるのだろうと俺たちはソワソワしてきた。
そして出てきたのは『唐揚げ』と言う鶏肉の食べ物だった。熱々のそれを口に入れた瞬間、俺たちは固まった。
何だコレ?何だコレは!
噛んだ瞬間、肉汁がじゅわっと広がってニンニクとスパイスの効いた肉の味が口一杯に広がる。鶏肉なんて何度も食べているのにこんな美味しいモンだったのか?
俺たちはエールを飲むのも忘れて唐揚げを奪い合う様に食べた。エールは唐揚げを口一杯に頬張って飲み込む為のもんじゃねぇか?ってぐらいだった。
厨房を見れば女将さんたちも皆口をモゴモゴさせて食べている。客の前でいいのか?
その内、宿屋の主人兼料理人のジャックが小皿に何か液体を入れて持ってきた。その場で一つ唐揚げをフォークで刺して液体にちょっとつけて俺たちに食べて見せた。俺たちも真似して食べみる。コレはお酢か!うめぇな。
こんな美味しくて見た事も無い料理を次々と作るリオって娘は一体何者だ?
皆が美味そうに食べているのをニコニコ見ながら食べてる姿が可愛いな。お手伝いして褒められて喜んでる子どもみてぇだな。
「ねぇ、リオ。明日もなんか新しい料理を作って頂戴よ。」
「え?良いけど女将さんたちに聞いてみないと、、、。」
「是非作って頂戴!」
エミリーのおねだりに女将さんが食い気味に言っている。こりゃ明日の食事も楽しみだな。
と言うか今日の料理をここでしか食べらねぇのか?そんなの耐えられねぇぞ。ヤベェな。
それから唐揚げが王都まで知れ渡るのに2ヶ月もかからなかった事にもビックリしたがあちこちの村や町から新しい料理の噂が聞こえるようになる。その度にリオの顔と唐揚げを思い出したが、新しい料理にリオが関わっていたのかどうか俺は知らない。
その先には勇者村と呼ばれる、初代勇者が生まれたと言われている村がある。初代勇者は魔王討伐後に再びこの村に戻って過ごしたと伝えられている場所だ。
嘘か本当か、今では村人全てが勇者の血をひく子孫だと村人たちは誇らしげに言っていた。
そんな村も今では20人ほどしか住んでいないそうで、自給自足をしながら偶に訪れる冒険者などを相手に勇者縁の土産物を売ったりしている。
俺も『勇者の書』を買って息子への土産にした事がある。速攻、落書きされて読まれる事なく終わったが。
その村の先の国境付近は少々厄介な魔獣が定期的に出現するそうで、見廻り討伐を兼ねた依頼が国から冒険者ギルドに年数回出されていた。
まだ魔獣の目撃証言は得られていない噂程度の話だが、最近アサド村を少し行った先の森にも魔獣が出ると言われている。今回の依頼はその森の調査も含まれていた。
夕方、アサド村に着いて調査は明日からだ、と宿屋の食堂で一緒に依頼を受けたジェリドと飲み始めた。
少し前に仲良くなった村人3人と楽しく飲んでいたところ、黒髪黒目の少女が料理を運んできた。黒髪は多くはないものの偶に見かける事はあった。しかし瞳まで黒いのは珍しい。
女将にリオと呼ばれた少女はロンに『お嬢ちゃん』と呼ばれて少しムッとしているようだった。
そうだな、この年頃は大人に見られたいもんだよな、と王都に住む娘を思い出して微笑ましく見ていた。
そのうちケニーたちが『もっと他の料理が食べたい。』などといつもの軽口を叩き始めたところ、リオと呼ばれた黒髪の少女が厨房に入って何やら作り始めた。
やがてパチパチと油がはねる音がし始めて、しばらくすると宿屋の女将のメアリーが口をモゴモゴさせながら黄色っぽい何かがのった皿をテーブルに持ってきた。
「じゃがいも?」
「初めて見る料理だな。」
俺たちは恐る恐る出された2枚の皿に手を伸ばした。
「!?」
「な、何だこりゃ?」
「う、うめぇ!」
じゃがいもを薄く切ったやつはパリパリした食感で塩味が効いていて美味い。もう一つの細長い棒みたいなじゃがいもの方も同じ塩味なのに食感がホクホクしていてまた美味しい。そして確かにエールをもっと飲みたくなる旨さ。
俺たちが奪い合うように飲みながら食べているとリオはまた何かを作っているらしい。今度も油を多く使っているようでジュワジュワと油が音を立てている。その内、いい匂いがしてきて何が出てくるのだろうと俺たちはソワソワしてきた。
そして出てきたのは『唐揚げ』と言う鶏肉の食べ物だった。熱々のそれを口に入れた瞬間、俺たちは固まった。
何だコレ?何だコレは!
噛んだ瞬間、肉汁がじゅわっと広がってニンニクとスパイスの効いた肉の味が口一杯に広がる。鶏肉なんて何度も食べているのにこんな美味しいモンだったのか?
俺たちはエールを飲むのも忘れて唐揚げを奪い合う様に食べた。エールは唐揚げを口一杯に頬張って飲み込む為のもんじゃねぇか?ってぐらいだった。
厨房を見れば女将さんたちも皆口をモゴモゴさせて食べている。客の前でいいのか?
その内、宿屋の主人兼料理人のジャックが小皿に何か液体を入れて持ってきた。その場で一つ唐揚げをフォークで刺して液体にちょっとつけて俺たちに食べて見せた。俺たちも真似して食べみる。コレはお酢か!うめぇな。
こんな美味しくて見た事も無い料理を次々と作るリオって娘は一体何者だ?
皆が美味そうに食べているのをニコニコ見ながら食べてる姿が可愛いな。お手伝いして褒められて喜んでる子どもみてぇだな。
「ねぇ、リオ。明日もなんか新しい料理を作って頂戴よ。」
「え?良いけど女将さんたちに聞いてみないと、、、。」
「是非作って頂戴!」
エミリーのおねだりに女将さんが食い気味に言っている。こりゃ明日の食事も楽しみだな。
と言うか今日の料理をここでしか食べらねぇのか?そんなの耐えられねぇぞ。ヤベェな。
それから唐揚げが王都まで知れ渡るのに2ヶ月もかからなかった事にもビックリしたがあちこちの村や町から新しい料理の噂が聞こえるようになる。その度にリオの顔と唐揚げを思い出したが、新しい料理にリオが関わっていたのかどうか俺は知らない。
12
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる