美化係の聖女様

しずもり

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聖女召喚は成功した、、、ハズ?

初めての食べ物 side冒険者

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アサド村の宿屋には年に数回、依頼の途中で寄る事があった。アサド村は西の辺境の地の一歩手前の最後の宿屋だったからだ。

その先には勇者村と呼ばれる、初代勇者が生まれたと言われている村がある。初代勇者は魔王討伐後に再びこの村に戻って過ごしたと伝えられている場所だ。


嘘か本当か、今では村人全てが勇者の血をひく子孫だと村人たちは誇らしげに言っていた。


そんな村も今では20人ほどしか住んでいないそうで、自給自足をしながら偶に訪れる冒険者などを相手に勇者縁の土産物を売ったりしている。

俺も『勇者の書』を買って息子への土産にした事がある。速攻、落書きされて読まれる事なく終わったが。



その村の先の国境付近は少々厄介な魔獣が定期的に出現するそうで、見廻り討伐を兼ねた依頼が国から冒険者ギルドに年数回出されていた。



まだ魔獣の目撃証言は得られていない噂程度の話だが、最近アサド村を少し行った先の森にも魔獣が出ると言われている。今回の依頼はその森の調査も含まれていた。


夕方、アサド村に着いて調査は明日からだ、と宿屋の食堂で一緒に依頼を受けたジェリドと飲み始めた。


少し前に仲良くなった村人3人と楽しく飲んでいたところ、黒髪黒目の少女が料理を運んできた。黒髪は多くはないものの偶に見かける事はあった。しかし瞳まで黒いのは珍しい。


女将にリオと呼ばれた少女はロンに『お嬢ちゃん』と呼ばれて少しムッとしているようだった。


そうだな、この年頃は大人に見られたいもんだよな、と王都に住む娘を思い出して微笑ましく見ていた。



そのうちケニーたちが『もっと他の料理が食べたい。』などといつもの軽口を叩き始めたところ、リオと呼ばれた黒髪の少女が厨房に入って何やら作り始めた。


やがてパチパチと油がはねる音がし始めて、しばらくすると宿屋の女将のメアリーが口をモゴモゴさせながら黄色っぽい何かがのった皿をテーブルに持ってきた。



「じゃがいも?」


「初めて見る料理食べモンだな。」


俺たちは恐る恐る出された2枚の皿に手を伸ばした。


「!?」


「な、何だこりゃ?」


「う、うめぇ!」


じゃがいもを薄く切ったやつはパリパリした食感で塩味が効いていて美味い。もう一つの細長い棒みたいなじゃがいもの方も同じ塩味なのに食感がホクホクしていてまた美味しい。そして確かにエールをもっと飲みたくなる旨さ。


俺たちが奪い合うように飲みながら食べているとリオはまた何かを作っているらしい。今度も油を多く使っているようでジュワジュワと油が音を立てている。その内、いい匂いがしてきて何が出てくるのだろうと俺たちはソワソワしてきた。



そして出てきたのは『唐揚げ』と言う鶏肉の食べ物だった。熱々のそれを口に入れた瞬間、俺たちは固まった。

何だコレ?何だコレは!

噛んだ瞬間、肉汁がじゅわっと広がってニンニクとスパイスの効いた肉の味が口一杯に広がる。鶏肉なんて何度も食べているのにこんな美味しいモンだったのか?



俺たちはエールを飲むのも忘れて唐揚げを奪い合う様に食べた。エールは唐揚げを口一杯に頬張って飲み込む為のもんじゃねぇか?ってぐらいだった。


厨房を見れば女将さんたちも皆口をモゴモゴさせて食べている。客の前でいいのか?


その内、宿屋の主人兼料理人のジャックが小皿に何か液体を入れて持ってきた。その場で一つ唐揚げをフォークで刺して液体にちょっとつけて俺たちに食べて見せた。俺たちも真似して食べみる。コレはお酢か!うめぇな。



こんな美味しくて見た事も無い料理を次々と作るリオって娘は一体何者だ?


皆が美味そうに食べているのをニコニコ見ながら食べてる姿が可愛いな。お手伝いして褒められて喜んでる子どもみてぇだな。



「ねぇ、リオ。明日もなんか新しい料理を作って頂戴よ。」


「え?良いけど女将さんたちに聞いてみないと、、、。」


「是非作って頂戴!」


エミリーのおねだりに女将さんが食い気味に言っている。こりゃ明日の食事も楽しみだな。

と言うか今日の料理をここでしか食べらねぇのか?そんなの耐えられねぇぞ。ヤベェな。



それから唐揚げが王都まで知れ渡るのに2ヶ月もかからなかった事にもビックリしたがあちこちの村や町から新しい料理の噂が聞こえるようになる。その度にリオの顔と唐揚げを思い出したが、新しい料理にリオが関わっていたのかどうか俺は知らない。




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