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魔女という存在

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「ルルーナ嬢はね、を受けたなんだよ。」

彼女はルカを物凄い形相で睨み、またもルカの方に向かってこようとした。当然、二人に阻止されていたけれど。


「アンタっ、何なの?この腕輪でアンタが私に何かしたんでしょっ!早くこれを外して私を元に戻しなさいよっ。何で外せなくなってんのよ!」

彼女は左手をルカの方へと突き出しながら叫んでいる。

ルカの言葉で我を忘れてしまったかのような彼女は結局、私の問いには答えてくれない。しかもルカの発言から更に疑問が増えてしまっている。

ルルーナ嬢が魔女?しかも魔女の呪いを受けているって、一体。

この面子では一体、誰がこの場を取り仕切ってくれるのかしら?

このままでは収集がつかないと思うのだけれど。


「元に戻すも何も、がルルーナ、あなた本来の姿でしょうに。

まぁ、少し落ち着いたら?色々と説明が必要だからさ。」

「何ですって?アンタ、よくも私を騙したわねっ!何がサロント公爵の者として面倒を見るよ!この嘘つきっ!」


「ルーカス、態と煽るんじゃない。あ~、ルルーナ嬢、いやルルーナさんで良いかな?

。君は我がサロント公爵家が責任を持って面倒みよう。但し、対価は必要になるがね。」

え、オジ様でもそんな言い方するのね。今の顔はルカに似ているわ。やっぱり親子なのねぇ。

そんな事を考えていたら不意に視界が真っ暗になった。

「サーシャ、それ以上、父上を見つめないで。嫉妬で父上をどうにかしてしまいそうだから。」

ルカの手で目隠しをされて抱き寄せられたけれど、ちょっ見ていただけで嫉妬って、、、。


「んっ、んん。ルーカス、サーシャと戯れるのは後にしたまえ。というか、親の前で娘とイチャつくんじゃない。

ルーカス、サーシャはまだ何も理解が出来ていない。ちゃんと理解出来るように、一から説明してやりなさい。我々もまだ把握出来ていない事も多い。」


お父様の声に、ルカは小さく『チっ』と舌打ちをしながら私からそっと離れた。

ルカ、仮にも国王陛下に向かって舌打ちって、私と結婚したら義理の父にもなる人よ?

「ルルーナ、君は自分が魔女だという事を認めるかい?」

「・・・そうだったら何だっていうのよ。私の体に一体、何をしたのよ。」

ルルーナ嬢、えーと、私もの方が良いかしらね。ルカなんて呼び捨てになっちゃているけど。

ルルーナさんが不貞腐れたように言うけれど、自分の顔は見えないのに体の変化がよく分かるわよね。

確かに髪色も変わっているけれど肌かな?肌が衰えて手が老化しているのが分かるとか?


「うっさいわね!誰が老化してんのよ!体の中の魔力がおかしいって言ってんの!

何かに縛られているみたいに抑え込まれているっていうか、、、。

え、、、何?さっきから私を年増女扱いしたり本来の姿って、一体何の事を言って、、、?」



ありゃ、また声に出ちゃっていたのか。お母様の視線が痛いわ。


というか、自分の体の変化って内面の事を言っていたの?まさか、容貌が変わっている事に気づいてなかったの?


たぶんルカの部下だと思われる二人の内の一人が、懐から手鏡をそっと出してルルーナ嬢に手渡した。


「いやぁ~!!何コレ?なんで私の姿がっ、美女だけど、美女だけど何でいきなり歳を取ってんのよぉっ!」


自分で自分を美女だって言っちゃうんだ、しかも2回も言ったんですけど。


「だからそれが本来の姿だって言ったでしょ。でも思ったよりも見た目が若いと思ったよ、僕は。」


「ちょっと!どういう事よ、それっ。アンタ、本当に私に何したのよ!」


ルルーナさんが怒るのも分からなくもないよね。

17歳の見た目だったのが、今は美人ではあるけれど40歳前後くらいの見た目だ。
それでなくても女性にとって歳を取るとか容姿の衰えって非常に繊細な問題なのに。


「いや、僕は何もしていないよ。きっと契約には真の姿が必要だったんじゃないかなぁ?
だって見た目は少女でもも生きているんだから。」

「契約?」

「えっ?何百年?」


ルルーナさんと私は同時に言葉を発した。けれど、それぞれ気になった事が違うのは、ルルーナさんにとってはという言葉には違和感や疑問を感じる事はなかったという事だ。


「そう、ルルーナは魔女だからね。普通の人間とは歳の取り方が違うし、長生きな種族なんだよ。」


ルカはルルーナさんの言葉はサクっと聞き流し、私の方に向き直って答える。


「でも、魔女は200年ぐらい前にで死に絶えたんじゃないの?」


昔、サロント公爵家の話を聞いた時に誓約魔法の話が出た。魔女が使える古の魔法の一つだと聞いた。その事に興味を持って魔女について少し調べた事があった。

その昔、全ての人間は大なり小なり魔力を持って生まれていたらしい。

しかし魔法が使えるかどうかは、魔力の量とは比例しなかった。どんなに魔力量が多くても魔法を使えない人も居たし、少なくても魔法が使えるようになる人も居たそうだ。

結局、魔法を使えるのは一握りの人たちだけだったらしい。


その一握りの人たちの中で、魔法を物や人に付与したり契約魔法や呪いといった強い力を使える人たちがいた。それが魔女と呼ばれる人たちだった。

魔女は生まれた時から魔女であった訳では無いらしい。詳しい事は知らないけれど、魔法が使える人たちの中で、何かのタイミングで魔女の力が発現するのだとか。

そうして魔女となった人たちは体の仕組みが変わってしまうのか、それとも魔女の力がそうさせるのか、普通の人間より体が歳を取るスピードが遅くなり長命となる。それこそ何百年も生きる種族へと変化してしまうのだ。


しかし、長命とは言え、物理的な被害を受ければ死ぬし病気に罹っても死ぬ。

そうして200年程前にで、魔女は死に絶えたのだと伝えられていたのだ。

事実、それ以降、魔女という存在が公には確認される事は無くなった。

そうして魔女が居た、という痕跡は、幾つかの魔道具や魔法陣などと書物の中だけになった。
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