1 / 24
只今、婚約破棄が言い渡されました。
しおりを挟む
王家主催の夜会の日、私をエスコートする予定だった婚約者は、約束の時間には来なかった。
まぁ、仕方が無い。よくあるって程では無いけれど、それなりにこういう事は過去にも何度もあった事だ。
それでも一言、連絡をくれても良いと思う。そうすれば父や叔父様なり、従兄弟なりに代わりにエスコートして貰えば良い話だからだ。
けれど、連絡無しでは代わりを頼む事は難しい。当たり前だが身内とは言え、夜会当日、いや、直前に頼むのは無理だろう。
彼らだって夜会に出席するならば、エスコートする相手を決めていない、なんて事はないのだから。
それで急遽、エスコートをしてくれる相手となると・・・・。
この後の事を考えると、少し憂鬱な気持ちになってしまう。
そんな気分だったからこんな事になってしまったのだろうか。
「エリザベス・マコーナル公爵令嬢!
貴女はこのロッテン侯爵家が三男、マシューの最愛の人、ルルーナ・バーグ男爵令嬢を陰でずっと虐めていたそうだな。
そんな心根の腐った女など、私の伴侶には相応しく無い!
よって今、この場で婚約破棄を言い渡す!」
夜会が始まって早々の侯爵令息の婚約破棄の宣言に、その場の招待客は、驚きと呆れで辺りはしん、と静かになる。
これから起こる事を見逃さないように、そして聞き逃さないように。
それはそうだ。王家主催の夜会で、招待された者が、王族たちの前で、しかも夜会が始まって直ぐに、婚約者に婚約破棄を言い渡したのだ。
良くは無いが、まだ王族の誰か、その縁戚に当たる者ならばまだ分かる。
しかし、言い出したのはこの国の王族とは、かなり遠い昔に王族の親戚か何かが、侯爵家の者と結婚したかもね?ぐらいの間柄でしかない。
国王陛下や王妃は勿論、その子どもたちとも夜会や茶会でちょっと話したぐらいだ。但し、ロッテン侯爵やその嫡男が、だ。
ロッテン侯爵家の三男のマシューは特に可もなく、不可もなくの成績だった筈だ。そんな男が王家の覚えが良い訳が無い。
まぁ、上位貴族だけあって、マシューも見目だけは良かったが。
それがいきなり王家の夜会をぶち壊す行為をしたのだ。直ぐ様、衛兵に拘束されてもおかしくは無い状態だった。
招待されていた貴族たちは、一体、どうなる事か、と困惑と好奇の目で中央に居る当事者たちを見つめていた。
「エリザベス、何とか言ったらどうなんだ!
全面的に罪を認めて、この場で謝罪するならば、当家からの慰謝料請求は無しにしてやってもいいんだぞ。
一応は10年も私の婚約者をしていたのだからな。」
マシューがとことん上から目線で言っている。
どうして私の婚約者は・・・・。
会場の中央に輪を描くように、ぽっかりと空いた空間で起こる断罪劇。その騒動の中に居る婚約者を見つめて、私は小さくため息を吐く。
目の前で起こっている出来事に頭の中は真っ白だ。
何か言わなくては、とそう思うのに、どう言葉にして対処して良いのかが分からない。
そうして婚約者をもう一度見つめれば、彼は口角を少し上げて笑ったのだ。目は笑ってなどいなかったけれど。
もう一度、私はため息を吐いた。今度は大きく。
だから、何で、どうしてこうなった!?
一体、誰が、この騒動を治めてくれるのか?
小さく手を振る婚約者に、心の中で激しく罵りたい!
だから!
どうして!
王女が主催する夜会で、私の婚約者が婚約破棄なんて馬鹿やらかした奴らと一緒にいるのよ!?
まぁ、仕方が無い。よくあるって程では無いけれど、それなりにこういう事は過去にも何度もあった事だ。
それでも一言、連絡をくれても良いと思う。そうすれば父や叔父様なり、従兄弟なりに代わりにエスコートして貰えば良い話だからだ。
けれど、連絡無しでは代わりを頼む事は難しい。当たり前だが身内とは言え、夜会当日、いや、直前に頼むのは無理だろう。
彼らだって夜会に出席するならば、エスコートする相手を決めていない、なんて事はないのだから。
それで急遽、エスコートをしてくれる相手となると・・・・。
この後の事を考えると、少し憂鬱な気持ちになってしまう。
そんな気分だったからこんな事になってしまったのだろうか。
「エリザベス・マコーナル公爵令嬢!
貴女はこのロッテン侯爵家が三男、マシューの最愛の人、ルルーナ・バーグ男爵令嬢を陰でずっと虐めていたそうだな。
そんな心根の腐った女など、私の伴侶には相応しく無い!
よって今、この場で婚約破棄を言い渡す!」
夜会が始まって早々の侯爵令息の婚約破棄の宣言に、その場の招待客は、驚きと呆れで辺りはしん、と静かになる。
これから起こる事を見逃さないように、そして聞き逃さないように。
それはそうだ。王家主催の夜会で、招待された者が、王族たちの前で、しかも夜会が始まって直ぐに、婚約者に婚約破棄を言い渡したのだ。
良くは無いが、まだ王族の誰か、その縁戚に当たる者ならばまだ分かる。
しかし、言い出したのはこの国の王族とは、かなり遠い昔に王族の親戚か何かが、侯爵家の者と結婚したかもね?ぐらいの間柄でしかない。
国王陛下や王妃は勿論、その子どもたちとも夜会や茶会でちょっと話したぐらいだ。但し、ロッテン侯爵やその嫡男が、だ。
ロッテン侯爵家の三男のマシューは特に可もなく、不可もなくの成績だった筈だ。そんな男が王家の覚えが良い訳が無い。
まぁ、上位貴族だけあって、マシューも見目だけは良かったが。
それがいきなり王家の夜会をぶち壊す行為をしたのだ。直ぐ様、衛兵に拘束されてもおかしくは無い状態だった。
招待されていた貴族たちは、一体、どうなる事か、と困惑と好奇の目で中央に居る当事者たちを見つめていた。
「エリザベス、何とか言ったらどうなんだ!
全面的に罪を認めて、この場で謝罪するならば、当家からの慰謝料請求は無しにしてやってもいいんだぞ。
一応は10年も私の婚約者をしていたのだからな。」
マシューがとことん上から目線で言っている。
どうして私の婚約者は・・・・。
会場の中央に輪を描くように、ぽっかりと空いた空間で起こる断罪劇。その騒動の中に居る婚約者を見つめて、私は小さくため息を吐く。
目の前で起こっている出来事に頭の中は真っ白だ。
何か言わなくては、とそう思うのに、どう言葉にして対処して良いのかが分からない。
そうして婚約者をもう一度見つめれば、彼は口角を少し上げて笑ったのだ。目は笑ってなどいなかったけれど。
もう一度、私はため息を吐いた。今度は大きく。
だから、何で、どうしてこうなった!?
一体、誰が、この騒動を治めてくれるのか?
小さく手を振る婚約者に、心の中で激しく罵りたい!
だから!
どうして!
王女が主催する夜会で、私の婚約者が婚約破棄なんて馬鹿やらかした奴らと一緒にいるのよ!?
42
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
婚約者をないがしろにする人はいりません
にいるず
恋愛
公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。
ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。
そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。
婚約破棄ですか。お好きにどうぞ
神崎葵
恋愛
シェリル・アンダーソンは侯爵家の一人娘として育った。だが十歳のある日、病弱だった母が息を引き取り――その一年後、父親が新しい妻と、そしてシェリルと一歳しか違わない娘を家に連れてきた。
これまで苦労させたから、と継母と妹を甘やかす父。これまで贅沢してきたのでしょう、とシェリルのものを妹に与える継母。あれが欲しいこれが欲しい、と我侭ばかりの妹。
シェリルが十六を迎える頃には、自分の訴えが通らないことに慣れ切ってしまっていた。
そうしたある日、婚約者である公爵令息サイラスが婚約を破棄したいとシェリルに訴えた。
シェリルの頭に浮かんだのは、数日前に見た――二人で歩く妹とサイラスの姿。
またか、と思ったシェリルはサイラスの訴えに応じることにした。
――はずなのに、何故かそれ以来サイラスがよく絡んでくるようになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる