43 / 51
第36話 新しい旅立ちとやっぱり雑談
しおりを挟む
初めて大勢の視聴者を迎えた翌日。
旅に出る準備は既に先日整えているので、今日は朝食を食べて昼の弁当を作ったらすぐに冒険に出発する予定である。
今回は世界樹もどきとは垂直の方向にまっすぐ行った後は、興味の赴くままに好きな方向に行ってみようと思っている。
以前は場所を見失わないようにと、遠くに気になるものがあってもそちらへ足を進めることは無かったのだ。
「よし、出来たぞロボ」
今日は豪勢に、アニメに出てきそうなミートボールがたくさんのっかったスパゲティを作った。
ロボの分は大きな鍋一杯分の特大サイズだ。
まあ豪勢とはいうものの、ロボが大体毎日何かしら狩ってくるので毎日肉はそれなりな量食べているのだが。
それを食べ終えたら、大量に炊いた米をおにぎりにする。
そしてそれとは別に焼いた大量の肉に焼き肉のタレをかけていためる。
もうこれだけでたまらない匂いがする。
後はそれぞれに容器に入れて、容器に保存の魔法陣を書いて魔力を通しておけば、昼までいたむことのない弁当の完成だ。
「おわっ! ロボ、これは昼飯! 今食ったでしょうが!」
俺がおにぎりを包んで袋に詰めようとしていると、ロボが鼻で肉が入った容器を突いていた。
全く、油断も隙もない奴である。
なお、朝からずっと配信はつけっぱなしにしているので、この光景は生配信で地上のお茶の間に流れている。
:完全にペットじゃん
:うちの犬もあんなんだわ……
:あのサイズなのに萌えてしまった
:でっかい犬、良いな!
概ねロボは好評である。
まあよほど動物嫌いの人じゃないと、人間を嫌うことは出来ても動物を嫌って攻撃的なコメントを書くのは難しいからな。
その後荷物をロボに背負ってもらって俺も槍といっしょに担いで、出発の準備は完了だ。
「よし、それじゃあいってきまーす」
:いってらっしゃい
:気ぃつけてな~
:いてらー
:まあドローンもついていくんですけども
「そらそうね」
決めた方角への道をのんびりと歩き続ける。
ついでにせっかくなので、今回はドローンを高高度に飛ばして、空からの風景が見えるようにしてみた。
:うわ、大自然だ……
:あそこにいるの、世界樹に行った時のでかいのじゃね?
;こうやってみるとモンスターはダンジョン程多くないのか
:所々に群れがいる感じか
:凶暴なのはおらんのかね
「攻撃的なモンスターは、どうもあのダンジョンからの出口付近に近づかないみたいでな。だから俺もあそこに拠点をおいてるんだけど。だからこの前世界樹のドラゴンに近づかれたときはびっくりしたわ」
:あれは確かにびっくりする
:むしろびっくりしてないように見えたわ
:人型になるドラゴンとか、まさにファンタジーだなあ。
:あの後あのドラゴンさんとはなにか無いの?
「無い無い。またそのうち会いに行って色々聞いてみたいとは思ってるけど」
そんな話をしながら道を歩いていく。
今回は長い道のりだが、コメントがたくさん来ることで話が意外と途切れる暇が無い。
その中で、気になるコメントを見つけた。
:あ、そう言えばアメリカで探索者が深層突破したらしいよ
:日本も追いつくために大規模なパーティーで挑むって。その中にあの二人もいるらしいよ
:流石に実力不足だと思うけどねえ
:それが最近メキメキ実力上げてるんだよなダンスタ全員
「ちょっと待って、あの二人って誰? 俺が知ってる人の話だよな?」
その内容に心当たりが無かったので、ちょうど話の途中だったが中断して、その一連のコメントの方へと話を向ける。
:名前出しても良い感じ?
:この人配信のコメント欄でしか情報のやり取り出来ないし良いんじゃない?
:雨空かなたと八条寺茜。ジョンが助けた二人組
「ああ、その二人か。ってえ、あの二人もう深層に挑めるレベルになったのか?」
メチャクチャなレベリングと自己強化が出来る俺と違って、普通の探索者は地道にモンスターと戦って戦う方法を練習してスキルとレベルを挙げていくしか無い。
その中で、当時は下層ソロも若干怪しそうだった二人がこの二週間かそこらもない短い期間で深層に挑めるレベルまで鍛え上げてきたというのは相当に厳しい環境に自分たちを追い込んだのだろう。
「いやー、そうか。なるほどねえ」
さて、ここで少し悩む。
おそらく彼女らがそれほどまでに爆発的に成長したのは、強い意思と厳しい環境、命のかかる状況が噛み合った結果だろうという推測は出来る。
だが果たして俺はここでこれを口にしても良いものか。
それはつまり、強くなりたい者たちに『死にそうになるぐらい追い込めば成長が早まるよ』と伝えるということだ。
それでうまく成長してくれるならばそれでも良いが、下手に死地に追い込むような真似は若干気が引ける。
が、やはり俺にはそんなことは関係ない。
俺の望みは、一人でも多くの探索者がダンジョン内に拠点を築き、このダンジョンの先の世界に到達し、ここにも拠点を築いて生活を始めることだ。
故に、その過程で探索者がいくらか命を落としたところで俺が知ったことではない。
何よりちゃんと注意喚起はするし、それでもやろうという奴らがやって強さを得てくれればそれで良いのだ。
ということで、雨宮かなたと八条寺茜、もう俺の中では思い出になりかけていた二人が強くなったからくりについて話すことにする。
「二人がそこまで強くなった理由について心当たりがあるけど、聞きたい人いる?」
:聞きたい!
:そりゃ探索者なら全員そうなんじゃ?
:もしやなにかポーション系のアイテムあげたのか?
:むしろ聞きたくない人がいないのでは?
:なんかコツがあるのか!?
うん、大体全員が聞きたがっているようで安心した。
これなら伝えた俺に否はない。
まあもともと伝えた方法を使う決断をするのは使う本人なので俺が気にすることではないのだが。
「一つ目は、少しでも強い相手に挑んだことだろうな。これは考えればシンプルな話で、強さ5の相手と強さ10の相手のどっちと戦えばより成長できるかって話。ついでに言えば、自分より格上の敵だと成長幅は更にでかい」
:いや、それはちょっと
:理屈はわかるけどそれは無理だろ
:命は惜しいので……強くなりたくはあるけど
:安定して強くなれるならそっちで良いやってなるな
:格上挑戦はしないけどそれなりの相手と戦ってみるか
ここで昔の視聴者が少数だった頃の視聴者たちなら、もっと前向きになんとか格上の敵をうまく倒す方法を考えたりしてくれるんだろうけどな。
流石に俺が最初から言い続けて代わりつつあったあのレベルを求めるのは無理か。
「二つ目は意思の強さ。強くなりたい、って気持ちの強さだな。これ、不思議な話だけどほんとなんだよな。三つ目の、自分を如何に危険な状況に追い込んでそれに抗うか、っていうのともかかってくるけど、スキルのランクとか個人のレベルって、一定ごとに壁が存在してるんよ。そんでそれを地道に乗り越える人も居れば、一発でぶっ壊す人も居る。そんでその後者は大体、より厳しい状況、命がかかった状況で、『やられてたまるか』『負けてたまるか』『死んでたまるか』っていう強い感情の発露があったときに起こるんだ。逆に前者だと、途方もない時間がかかるか、一生超えられない可能性もある」
これは俺の経験則でもある。
ここで負けたら死ぬ、こんなところで死にたくない、意地でも勝ってやる。
そんな気持ちがスキルやレベルに乗っかって、限界を一つ乗り越えて強くなる。
探索者というのはそういうファンタジーの世界に生きているものなのだ。
:急に根性論みたいなことを
:流石にそんなことはないだろ
:それで強くなれるとしても流石に怖くてやりづらい
:命賭けるってことは、それで限界を乗り越えるってイメージなのか
:まさに命がけの成長って感じだな
「これは俺の経験則だから結構本気だぞ。それにちゃんと理屈もある。レベル100のやつが、いくらレベル1のスライム殴ったってレベルは上がらないだろ? レベル100からレベル上限という扉をこじ開けてレベル101になるには、相応の経験がいるだろ。それこそ死の淵からなんとか生還するとか、絶対勝てない格上を打倒する、とかな」
以前、確か素材買い取りショップの店長にも言った覚えがある。
そのときとは少しばかり言い方が違うが、今回も大勢に聞かせてやろう。
「探索者の諸君はさ、丁寧に丁寧に探索してるだろ。命を掛ける必要が無いように、自分たちでも倒せるモンスターを相手にしてさ」
でも、そんなんじゃないだろ。
冒険者っていうのは。
「命をかけて命の危機に抗うぐらいのことをしないと、肉体も、精神も、スキルも。一つの壁を乗り越えてはくれないだろ」
:言いたいことはわかる
:確かに安定して倒せるモンスターばっかり相手にしてるもんな
:それが壁を超えにくくしてたってことか
:いやでもそれで超えられないならそれでいいわ。流石に怖い
:ジョンはそれを乗り越えたのか。
「俺は超えたよ。何回も超えてる。それにそもそもさ、俺は思うわけよ」
ここからは完全な持論。
でも間違えていない自信もある。
それは、俺が幾度もの擬似的な死を経験して、そのたびにその死因に対する耐性を得てきたから。
「探索者化するって、多分肉体が環境に適応するようになる、ってことだと思うんだよな。打撃を受けまくってると打撃耐性スキルが取得できるし、血流しまくってると出血耐性スキルとか失血耐性スキルとかが獲得できる」
そう、そもそも耐性スキルのあり方自体が、それを示している。
そしてそれはきっと、攻撃系スキルでも、敵に攻撃が効かないから、効きにくいからこそ、より通用するようにとスキルが適応しランクが上がる。
そういう理屈が働いているのだと思う。
「ならさ、厳しい環境に身を置かないと、体はそれに適応してくれないでしょ。いつまでもぬるま湯の中にいたらさ」
そして最後に付け加える。
「ぬるま湯からいい加減立ち上がってみようや。冒険者諸君。このダンジョンは、君等が思う数十倍は、過酷だぞ。挑まなければ、乗り越えられない。そんな辛いことから逃げる子供みたいなままで良いんなら、いつまでも一人ぬるま湯の中で座り込んでいれば良いさ」
旅に出る準備は既に先日整えているので、今日は朝食を食べて昼の弁当を作ったらすぐに冒険に出発する予定である。
今回は世界樹もどきとは垂直の方向にまっすぐ行った後は、興味の赴くままに好きな方向に行ってみようと思っている。
以前は場所を見失わないようにと、遠くに気になるものがあってもそちらへ足を進めることは無かったのだ。
「よし、出来たぞロボ」
今日は豪勢に、アニメに出てきそうなミートボールがたくさんのっかったスパゲティを作った。
ロボの分は大きな鍋一杯分の特大サイズだ。
まあ豪勢とはいうものの、ロボが大体毎日何かしら狩ってくるので毎日肉はそれなりな量食べているのだが。
それを食べ終えたら、大量に炊いた米をおにぎりにする。
そしてそれとは別に焼いた大量の肉に焼き肉のタレをかけていためる。
もうこれだけでたまらない匂いがする。
後はそれぞれに容器に入れて、容器に保存の魔法陣を書いて魔力を通しておけば、昼までいたむことのない弁当の完成だ。
「おわっ! ロボ、これは昼飯! 今食ったでしょうが!」
俺がおにぎりを包んで袋に詰めようとしていると、ロボが鼻で肉が入った容器を突いていた。
全く、油断も隙もない奴である。
なお、朝からずっと配信はつけっぱなしにしているので、この光景は生配信で地上のお茶の間に流れている。
:完全にペットじゃん
:うちの犬もあんなんだわ……
:あのサイズなのに萌えてしまった
:でっかい犬、良いな!
概ねロボは好評である。
まあよほど動物嫌いの人じゃないと、人間を嫌うことは出来ても動物を嫌って攻撃的なコメントを書くのは難しいからな。
その後荷物をロボに背負ってもらって俺も槍といっしょに担いで、出発の準備は完了だ。
「よし、それじゃあいってきまーす」
:いってらっしゃい
:気ぃつけてな~
:いてらー
:まあドローンもついていくんですけども
「そらそうね」
決めた方角への道をのんびりと歩き続ける。
ついでにせっかくなので、今回はドローンを高高度に飛ばして、空からの風景が見えるようにしてみた。
:うわ、大自然だ……
:あそこにいるの、世界樹に行った時のでかいのじゃね?
;こうやってみるとモンスターはダンジョン程多くないのか
:所々に群れがいる感じか
:凶暴なのはおらんのかね
「攻撃的なモンスターは、どうもあのダンジョンからの出口付近に近づかないみたいでな。だから俺もあそこに拠点をおいてるんだけど。だからこの前世界樹のドラゴンに近づかれたときはびっくりしたわ」
:あれは確かにびっくりする
:むしろびっくりしてないように見えたわ
:人型になるドラゴンとか、まさにファンタジーだなあ。
:あの後あのドラゴンさんとはなにか無いの?
「無い無い。またそのうち会いに行って色々聞いてみたいとは思ってるけど」
そんな話をしながら道を歩いていく。
今回は長い道のりだが、コメントがたくさん来ることで話が意外と途切れる暇が無い。
その中で、気になるコメントを見つけた。
:あ、そう言えばアメリカで探索者が深層突破したらしいよ
:日本も追いつくために大規模なパーティーで挑むって。その中にあの二人もいるらしいよ
:流石に実力不足だと思うけどねえ
:それが最近メキメキ実力上げてるんだよなダンスタ全員
「ちょっと待って、あの二人って誰? 俺が知ってる人の話だよな?」
その内容に心当たりが無かったので、ちょうど話の途中だったが中断して、その一連のコメントの方へと話を向ける。
:名前出しても良い感じ?
:この人配信のコメント欄でしか情報のやり取り出来ないし良いんじゃない?
:雨空かなたと八条寺茜。ジョンが助けた二人組
「ああ、その二人か。ってえ、あの二人もう深層に挑めるレベルになったのか?」
メチャクチャなレベリングと自己強化が出来る俺と違って、普通の探索者は地道にモンスターと戦って戦う方法を練習してスキルとレベルを挙げていくしか無い。
その中で、当時は下層ソロも若干怪しそうだった二人がこの二週間かそこらもない短い期間で深層に挑めるレベルまで鍛え上げてきたというのは相当に厳しい環境に自分たちを追い込んだのだろう。
「いやー、そうか。なるほどねえ」
さて、ここで少し悩む。
おそらく彼女らがそれほどまでに爆発的に成長したのは、強い意思と厳しい環境、命のかかる状況が噛み合った結果だろうという推測は出来る。
だが果たして俺はここでこれを口にしても良いものか。
それはつまり、強くなりたい者たちに『死にそうになるぐらい追い込めば成長が早まるよ』と伝えるということだ。
それでうまく成長してくれるならばそれでも良いが、下手に死地に追い込むような真似は若干気が引ける。
が、やはり俺にはそんなことは関係ない。
俺の望みは、一人でも多くの探索者がダンジョン内に拠点を築き、このダンジョンの先の世界に到達し、ここにも拠点を築いて生活を始めることだ。
故に、その過程で探索者がいくらか命を落としたところで俺が知ったことではない。
何よりちゃんと注意喚起はするし、それでもやろうという奴らがやって強さを得てくれればそれで良いのだ。
ということで、雨宮かなたと八条寺茜、もう俺の中では思い出になりかけていた二人が強くなったからくりについて話すことにする。
「二人がそこまで強くなった理由について心当たりがあるけど、聞きたい人いる?」
:聞きたい!
:そりゃ探索者なら全員そうなんじゃ?
:もしやなにかポーション系のアイテムあげたのか?
:むしろ聞きたくない人がいないのでは?
:なんかコツがあるのか!?
うん、大体全員が聞きたがっているようで安心した。
これなら伝えた俺に否はない。
まあもともと伝えた方法を使う決断をするのは使う本人なので俺が気にすることではないのだが。
「一つ目は、少しでも強い相手に挑んだことだろうな。これは考えればシンプルな話で、強さ5の相手と強さ10の相手のどっちと戦えばより成長できるかって話。ついでに言えば、自分より格上の敵だと成長幅は更にでかい」
:いや、それはちょっと
:理屈はわかるけどそれは無理だろ
:命は惜しいので……強くなりたくはあるけど
:安定して強くなれるならそっちで良いやってなるな
:格上挑戦はしないけどそれなりの相手と戦ってみるか
ここで昔の視聴者が少数だった頃の視聴者たちなら、もっと前向きになんとか格上の敵をうまく倒す方法を考えたりしてくれるんだろうけどな。
流石に俺が最初から言い続けて代わりつつあったあのレベルを求めるのは無理か。
「二つ目は意思の強さ。強くなりたい、って気持ちの強さだな。これ、不思議な話だけどほんとなんだよな。三つ目の、自分を如何に危険な状況に追い込んでそれに抗うか、っていうのともかかってくるけど、スキルのランクとか個人のレベルって、一定ごとに壁が存在してるんよ。そんでそれを地道に乗り越える人も居れば、一発でぶっ壊す人も居る。そんでその後者は大体、より厳しい状況、命がかかった状況で、『やられてたまるか』『負けてたまるか』『死んでたまるか』っていう強い感情の発露があったときに起こるんだ。逆に前者だと、途方もない時間がかかるか、一生超えられない可能性もある」
これは俺の経験則でもある。
ここで負けたら死ぬ、こんなところで死にたくない、意地でも勝ってやる。
そんな気持ちがスキルやレベルに乗っかって、限界を一つ乗り越えて強くなる。
探索者というのはそういうファンタジーの世界に生きているものなのだ。
:急に根性論みたいなことを
:流石にそんなことはないだろ
:それで強くなれるとしても流石に怖くてやりづらい
:命賭けるってことは、それで限界を乗り越えるってイメージなのか
:まさに命がけの成長って感じだな
「これは俺の経験則だから結構本気だぞ。それにちゃんと理屈もある。レベル100のやつが、いくらレベル1のスライム殴ったってレベルは上がらないだろ? レベル100からレベル上限という扉をこじ開けてレベル101になるには、相応の経験がいるだろ。それこそ死の淵からなんとか生還するとか、絶対勝てない格上を打倒する、とかな」
以前、確か素材買い取りショップの店長にも言った覚えがある。
そのときとは少しばかり言い方が違うが、今回も大勢に聞かせてやろう。
「探索者の諸君はさ、丁寧に丁寧に探索してるだろ。命を掛ける必要が無いように、自分たちでも倒せるモンスターを相手にしてさ」
でも、そんなんじゃないだろ。
冒険者っていうのは。
「命をかけて命の危機に抗うぐらいのことをしないと、肉体も、精神も、スキルも。一つの壁を乗り越えてはくれないだろ」
:言いたいことはわかる
:確かに安定して倒せるモンスターばっかり相手にしてるもんな
:それが壁を超えにくくしてたってことか
:いやでもそれで超えられないならそれでいいわ。流石に怖い
:ジョンはそれを乗り越えたのか。
「俺は超えたよ。何回も超えてる。それにそもそもさ、俺は思うわけよ」
ここからは完全な持論。
でも間違えていない自信もある。
それは、俺が幾度もの擬似的な死を経験して、そのたびにその死因に対する耐性を得てきたから。
「探索者化するって、多分肉体が環境に適応するようになる、ってことだと思うんだよな。打撃を受けまくってると打撃耐性スキルが取得できるし、血流しまくってると出血耐性スキルとか失血耐性スキルとかが獲得できる」
そう、そもそも耐性スキルのあり方自体が、それを示している。
そしてそれはきっと、攻撃系スキルでも、敵に攻撃が効かないから、効きにくいからこそ、より通用するようにとスキルが適応しランクが上がる。
そういう理屈が働いているのだと思う。
「ならさ、厳しい環境に身を置かないと、体はそれに適応してくれないでしょ。いつまでもぬるま湯の中にいたらさ」
そして最後に付け加える。
「ぬるま湯からいい加減立ち上がってみようや。冒険者諸君。このダンジョンは、君等が思う数十倍は、過酷だぞ。挑まなければ、乗り越えられない。そんな辛いことから逃げる子供みたいなままで良いんなら、いつまでも一人ぬるま湯の中で座り込んでいれば良いさ」
215
お気に入りに追加
1,120
あなたにおすすめの小説
【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~
椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。
しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。
タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。
数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。
すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう!
手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。
そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。
無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。
和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。
やがて神Sランクとなる無能召喚士の黙示録~追放された僕は唯一無二の最強スキルを覚醒。つきましては、反撃ついでに世界も救えたらいいなと~
きょろ
ファンタジー
♢簡単あらすじ
追放された召喚士が唯一無二の最強スキルでざまぁ、無双、青春、成り上がりをして全てを手に入れる物語。
♢長めあらすじ
100年前、突如出現した“ダンジョンとアーティファクト”によってこの世界は一変する。
ダンジョンはモンスターが溢れ返る危険な場所であると同時に、人々は天まで聳えるダンジョンへの探求心とダンジョンで得られる装備…アーティファクトに未知なる夢を見たのだ。
ダンジョン攻略は何時しか人々の当たり前となり、更にそれを生業とする「ハンター」という職業が誕生した。
主人公のアーサーもそんなハンターに憧れる少年。
しかし彼が授かった『召喚士』スキルは最弱のスライムすら召喚出来ない無能スキル。そしてそのスキルのせいで彼はギルドを追放された。
しかし。その無能スキルは無能スキルではない。
それは誰も知る事のない、アーサーだけが世界で唯一“アーティファクトを召喚出来る”という最強の召喚スキルであった。
ここから覚醒したアーサーの無双反撃が始まる――。
目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。
阿吽
ファンタジー
クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった!
※カクヨムにて先行投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる