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第35話 雑談-ダンジョンに対する思い
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「他に何か質問ある? 今なら時間あるから答えるよ」
強くなる方法についての簡単な講義が終わった後、夕食にするのにまだ時間があるので、更に質問を募集する。
:武器は見たから防具とか道具の解説
:魔法みたいなあれ、何?
:スキル、全部じゃなくていいので一部聞きたい
:実際のところレベルいくつ?
:他の探索者のサポートする気はないの?
:そう言えば地上で起きてること知ってる?
「あ、そう言えば地上の話とか聞いてなかったな。いやまあ別に聞きたいかと言われるとそんなに、だけど……。誰か深いところに拠点作れたとかじゃない限りはあんまり興味無いかな」
地上でどんな動きがあった、こんな動きがあった。どこそこのクランがどのボスを倒した、どこそこのクランが壊滅した。あの国が大規模な支援を打ち出した、あっちの国の探索者が──
そんな情報は、普段からそういった界隈を注視しているからこそ意味があるのであって、今現在ダンジョンに潜って他に興味を持っていない俺からしてみれば、聞いたところで、「ふーん」となってしまう程度のものでしかないのだ。なにせ地上でどれほどの偉業だろうと、俺からすれば容易く成し遂げられることに過ぎないのだから。
「あ、じゃあこんな話を一つ、しようか」
そこで、せっかくだから、より探索者や国に頑張ってもらえるように、と一つ情報を開示することにする。
「ダンジョンの中には、階層丸ごと安全地帯な階層が時々あるんだ。その階層が全てのダンジョンで同じなのか、ダンジョンによって違うのかはわからんけどな。だから、そこまで人が到達出来れば、そこに拠点を築くことも夢じゃない」
:ファッ!?
:すーぐそういう大事な情報垂れ流す!
:これまた大手クランのスポンサーの株が跳ねるぞ
:安全地帯ってどの程度なの? モンスターが出ないの? 水とかは?
:そういうところに拠点作っていけば、どんどん探索進みそうだな。
:いやいやお前ら騙されるなよ ダンジョンに安全地帯とかあるわけないわ
:運良く襲われなかっただけだろうな。 それか騙そうとしてるか
全く、せっかく良いことを教えてやったというのに、それでも馬鹿にして疑う者がいるのだから面倒くさい。確かに聞かされた側からすれば疑ってかかるのが当然かもしれないが、こちらは真面目に話しているのである。
いや、こういうところで短気を起こしては駄目だ。コミュニケーションとはそういうものである、という認識でちゃんと話そう。
それに彼らが俺を疑うのは間違いではない。
仮に俺が嘘を言っていたり、あるいは気付かないままに事実とは違うことを言ってしまって彼らがそれを信じてしまえば、最悪の場合彼らを死に至らしめる可能性だってあるのである。
それぐらいなら、疑ってくれたほうがマシだ。
とはいえ、あまり強い言葉で否定されるとこっちも言い返したくなってしまうのだが。
取り敢えず落ち着いて、説明を続けることにする。
「これは真面目な話だ。その階層ではモンスターの出現は無かった。草と木は生えてるけど、特殊なものじゃなくて地上の植物と同じだった。水は川が流れてたな。後は地上の動物種がちょこちょこいたし魚も昆虫もいた。俺が確認したところはそんな感じ」
確かに俺も初めてみたときは、何か幻影系の魔法を受けているのかと疑った。
そこに存在したのは、ダンジョン内にも関わらず、地上と変わらない自然だったのである。
更に天上部には模擬太陽らしき大きな魔石がついており、それが動きながら地面を照らすことで地上のように時間が流れているのを体感できた。
つまり、青空が見えないという点を除けば、全く地上と同じような生活が出来る環境にあったのである。
動物もイノシシや鹿、野兎等ほとんど脅威にならない動物や、昆虫に川には魚も住んでいた。
それらを捕まえるすべがあれば、というかその層まで到達できるということは必然深層を突破しているということなので、イノシシや鹿の一匹二匹捕まえられるだろう。
後は解体する技術さえあれば、しばらくの食事には困らない。
実際にスキルで分身した俺の分身体で食べてみたが、特に体に異常は起こらなかった。
その時は塩のみで食べたので、良くも悪くも普通の食事、野生の味だった。
だからこそ俺は、あそこがダンジョン探索の一つの拠点になり得るんじゃないかと思っている。
「まあでも、探索者としては俺が言ってるからってそのまま信じるのは無しだな。本当に俺が運良く生きて通れただけで、実は地面に擬態したモンスターがいて、上を通った瞬間にバクっといかれるような階層だったのかもしれないし。その当たりの調査は、実際に安全そうな階層を見つけた人たちでやってほしい。俺もそこまでは責任を負わないからな」
とはいえ、警告を忘れない。
本当に俺が運が良かっただけという可能性もあるのである。
それに当時はまだ気配探知系の能力が無かったので、しっかりとサーチ出来ていないのだ。
今なら確実にわかるのだが、あえてそこまで行くのがめんどくさい。
:無責任、に見えて常識的なこと言ってやがる
:実際疑うのは当然
:せっかく話してもらって疑うのは心苦しいけど
:そんな場所があるなら、探索者が大勢到達できれば村みたいなの出来そうやな
:前線拠点、って感じ?
:モンハンの村みたいな規模か。なんかワクワクするな
お、最後のその感想。
それこそまさに、俺がダンジョン探索に対して求め、楽しんでいるものだ。
「今誰かワクワクする、って言ってくれたけどまさにそうだよな。新しい場所に自分たちの拠点を築いて、生活して、そこから更に探索を広げて。現実じゃあ有り得ないような開拓だからこそ、ワクワクするし憧れる。アメリカじゃないけど、フロンティアスピリッツってやつか。新しいものを切り開いて、そこに自分たちの手で村を作って、更に先へ」
そしてそうやって生活をしていると、だんだんその中でも役割分担が出来てくるのでは無いだろうか。
探索を行う者、狩りを行って食料を提供する者、家やテントなど住む場所を管理、提供する者、皆の道具の修理など補佐を行う者。
そうやって小さな村が出来て、そこから更に先へと進んで拠点を建てて、また先へと進んで。
そうやってダンジョンという未知を開拓していくのだ。
そしてダンジョンの一番底につけば、今度はこちらの世界が待っている。
今俺が、たった一つの拠点を中心に冒険をしているのと違って、あちこちに村が出来て、その村の間を探索者や交易用の馬車が行き交ったりして。
そんな世界こそ、まさに俺が望んでいるものだ。
そういう場所でこそ、冒険をしてたまに村に立ち寄って。
そんな生活をしてみたい。
「ふふっ」
:どうした急に
:思い出し笑いか?
:めっちゃいい笑顔で笑うやん
:なんか良いこと思いついたんかね
:それより他の質問も答えてくれー
中世的な、現代社会より穏やかで、されど人の社会が自然の中に存在する世界を想像して少しばかり笑ってしまった。
それが視聴者たちには奇妙な思い出し笑いに見えてしまったらしい。
まあ実際いきなり笑ったことに間違いはない。
「いや、つい思い浮かべたら、すごく楽しそうでな。いつか、この今俺がいる世界にも探索者が来て、拠点を作ってあちこちに村を作って、そこで市場が開かれたりそこから旅立っていくやつがいたり。逆に狩りから帰ってきたやつが、大物を皆に自慢したり。そういう光景を想像して笑ってしまった」
いつか、俺が生きているうちに、そして元気でいるうちに。
そんな光景を見ることが出来たなら、俺はきっと大満足だろう、
多くの冒険、多くの知らない景色もそうだが、そんな人間の小さな営みを見てみたいと思ってしまうのが俺なのだ。
「他の質問もじゃあ答えるか」
:アーカイブに無かった武器の解説!
:俺はレベルで
:まじか。じゃあ俺はスキルのうち一番クラスが高いやつのランクで
:便利な魔法具とか使ってるのがあれば
:実際トップ層の攻略組どう思う?
:どうやってそんな強くなったのか
:地上に戻らないらしいけど、大事な人とかいないの?
おお、やはり聞きたいことはたくさんあるようで質問がどんどん集まってくる。
「えーと、アーカイブに無かった武器はめんどくさいからまた今度まとめてやる! で俺のレベルか。レベルは今2358だね」
:ン?
:なにか異次元の数字が聞こえた気がするな
:あれトップ層でも60とかそんなんじゃなかった?
:むしろ上限100じゃないのか
:取り敢えずギャグとして受け取っておくわ。
やっぱりあんまり信用されてないな
「いやいや、深層の更に下に100層ぐらいあるんだぞ? むしろそこを突破するのにレベル100ぐらいじゃあ足りないだろ」
ちなみにダンジョンにおけるレベルは、素の能力の上昇に直結するので、レベル1のマッチョな男より、レベル30の女性の方が力があったりする。
ただ、あくまで倍率なだけで素体の力の影響が大きいので、同じレベルならばより元から鍛えている方が力が強くなる。
他にも出血などに対する耐性などが、レベルが上がるほどに高まるようになっているようで、レベルが高い人間の方が同等の大怪我でも死ににくかったりもするらしい。
「そんでスキルな。スキルで一番クラスが高いのは『魔力操作』の英雄級がSS+まで成長してる」
:もう疑う気にもならんけど、スキルってそんな成長するのか
:EとかFで色々言ってる俺達はうごごごご……
:トップギルドでもCとかだろ。SS+って一体どういうレベルなんだよ
「こればっかりはいかに修羅場を超えたからだから、レベルと同じで俺が高いのは当たり前と言えば当たり前よ。それで便利な道具と言えばこれだな」
そう言って、武器を生み出すのとは反対側につけているブレスレットを示す。
「これ、実はマジックバッグと同じ機能になってて、ものを入れたり取り出したり出来るんだよ。これ自体もただのブレスレットでかさばらないからめっちゃ便利だし、容量もめちゃくちゃでかい」
このブレスレットはかなり深い層でボス戦後の宝箱から発見したのだが、本当に重宝している。
:ブレスレット型のマジックバッグとかあるんか
:深層探索に夢が広がるなあ
:早くそれが見つかるところまで行きたいわ
:マジックバッグもそうだけど物流に革命が起こるよなこういうの
「で、トップ層の攻略組はもう普通に頑張ってくれ、としか思わんな。後はできるだけ早く、安全地帯に拠点を作って、俺が遊びに行けるような状態になってほしいな、とも思うし、俺においついてこっちの世界に拠点作ってほしいとも思う。まあ要するに頑張れってことで」
:などと無理難題を言っています
:あとどれだけかかると……
:100層は深すぎるんだよなあ
:まあ当面無理だろ
:そういうなら手伝うか自分で護衛して連れていけば良いのに
「それはしないって決めてるからな。で強くなった方法については……まあまた今度。ちょっとあれな方法だし」
:あれ?
:もしかして人を○すとか?
:おい
:迷惑かけるような方法じゃないよな?
ああ、そういう言い方になってしまっていたか。
だが流石にそうではない。
人を害するような方法ではないのは断言できる。
「全然そんな人には迷惑はかけてないから。で、最後に大事な人、か。そりゃもちろんいるけど、会わなくても互いに大事に思ってるのはわかってるからなあ。そんな頻繁に会わなくても大丈夫。どうせこの配信もみてくれてるだろうし」
はい、そんなわけで今日の配信は終わり! と勢いよく言って配信を切る。
ちょっと質問に答えるつもりが予想以上に時間がかかってしまった。
いつもより夕飯の時間が遅くなってしまう。
「悪いなロボ、今から作るから」
『バウッ』
ロボに急かされながら、俺は夕飯作りに取り掛かった。
強くなる方法についての簡単な講義が終わった後、夕食にするのにまだ時間があるので、更に質問を募集する。
:武器は見たから防具とか道具の解説
:魔法みたいなあれ、何?
:スキル、全部じゃなくていいので一部聞きたい
:実際のところレベルいくつ?
:他の探索者のサポートする気はないの?
:そう言えば地上で起きてること知ってる?
「あ、そう言えば地上の話とか聞いてなかったな。いやまあ別に聞きたいかと言われるとそんなに、だけど……。誰か深いところに拠点作れたとかじゃない限りはあんまり興味無いかな」
地上でどんな動きがあった、こんな動きがあった。どこそこのクランがどのボスを倒した、どこそこのクランが壊滅した。あの国が大規模な支援を打ち出した、あっちの国の探索者が──
そんな情報は、普段からそういった界隈を注視しているからこそ意味があるのであって、今現在ダンジョンに潜って他に興味を持っていない俺からしてみれば、聞いたところで、「ふーん」となってしまう程度のものでしかないのだ。なにせ地上でどれほどの偉業だろうと、俺からすれば容易く成し遂げられることに過ぎないのだから。
「あ、じゃあこんな話を一つ、しようか」
そこで、せっかくだから、より探索者や国に頑張ってもらえるように、と一つ情報を開示することにする。
「ダンジョンの中には、階層丸ごと安全地帯な階層が時々あるんだ。その階層が全てのダンジョンで同じなのか、ダンジョンによって違うのかはわからんけどな。だから、そこまで人が到達出来れば、そこに拠点を築くことも夢じゃない」
:ファッ!?
:すーぐそういう大事な情報垂れ流す!
:これまた大手クランのスポンサーの株が跳ねるぞ
:安全地帯ってどの程度なの? モンスターが出ないの? 水とかは?
:そういうところに拠点作っていけば、どんどん探索進みそうだな。
:いやいやお前ら騙されるなよ ダンジョンに安全地帯とかあるわけないわ
:運良く襲われなかっただけだろうな。 それか騙そうとしてるか
全く、せっかく良いことを教えてやったというのに、それでも馬鹿にして疑う者がいるのだから面倒くさい。確かに聞かされた側からすれば疑ってかかるのが当然かもしれないが、こちらは真面目に話しているのである。
いや、こういうところで短気を起こしては駄目だ。コミュニケーションとはそういうものである、という認識でちゃんと話そう。
それに彼らが俺を疑うのは間違いではない。
仮に俺が嘘を言っていたり、あるいは気付かないままに事実とは違うことを言ってしまって彼らがそれを信じてしまえば、最悪の場合彼らを死に至らしめる可能性だってあるのである。
それぐらいなら、疑ってくれたほうがマシだ。
とはいえ、あまり強い言葉で否定されるとこっちも言い返したくなってしまうのだが。
取り敢えず落ち着いて、説明を続けることにする。
「これは真面目な話だ。その階層ではモンスターの出現は無かった。草と木は生えてるけど、特殊なものじゃなくて地上の植物と同じだった。水は川が流れてたな。後は地上の動物種がちょこちょこいたし魚も昆虫もいた。俺が確認したところはそんな感じ」
確かに俺も初めてみたときは、何か幻影系の魔法を受けているのかと疑った。
そこに存在したのは、ダンジョン内にも関わらず、地上と変わらない自然だったのである。
更に天上部には模擬太陽らしき大きな魔石がついており、それが動きながら地面を照らすことで地上のように時間が流れているのを体感できた。
つまり、青空が見えないという点を除けば、全く地上と同じような生活が出来る環境にあったのである。
動物もイノシシや鹿、野兎等ほとんど脅威にならない動物や、昆虫に川には魚も住んでいた。
それらを捕まえるすべがあれば、というかその層まで到達できるということは必然深層を突破しているということなので、イノシシや鹿の一匹二匹捕まえられるだろう。
後は解体する技術さえあれば、しばらくの食事には困らない。
実際にスキルで分身した俺の分身体で食べてみたが、特に体に異常は起こらなかった。
その時は塩のみで食べたので、良くも悪くも普通の食事、野生の味だった。
だからこそ俺は、あそこがダンジョン探索の一つの拠点になり得るんじゃないかと思っている。
「まあでも、探索者としては俺が言ってるからってそのまま信じるのは無しだな。本当に俺が運良く生きて通れただけで、実は地面に擬態したモンスターがいて、上を通った瞬間にバクっといかれるような階層だったのかもしれないし。その当たりの調査は、実際に安全そうな階層を見つけた人たちでやってほしい。俺もそこまでは責任を負わないからな」
とはいえ、警告を忘れない。
本当に俺が運が良かっただけという可能性もあるのである。
それに当時はまだ気配探知系の能力が無かったので、しっかりとサーチ出来ていないのだ。
今なら確実にわかるのだが、あえてそこまで行くのがめんどくさい。
:無責任、に見えて常識的なこと言ってやがる
:実際疑うのは当然
:せっかく話してもらって疑うのは心苦しいけど
:そんな場所があるなら、探索者が大勢到達できれば村みたいなの出来そうやな
:前線拠点、って感じ?
:モンハンの村みたいな規模か。なんかワクワクするな
お、最後のその感想。
それこそまさに、俺がダンジョン探索に対して求め、楽しんでいるものだ。
「今誰かワクワクする、って言ってくれたけどまさにそうだよな。新しい場所に自分たちの拠点を築いて、生活して、そこから更に探索を広げて。現実じゃあ有り得ないような開拓だからこそ、ワクワクするし憧れる。アメリカじゃないけど、フロンティアスピリッツってやつか。新しいものを切り開いて、そこに自分たちの手で村を作って、更に先へ」
そしてそうやって生活をしていると、だんだんその中でも役割分担が出来てくるのでは無いだろうか。
探索を行う者、狩りを行って食料を提供する者、家やテントなど住む場所を管理、提供する者、皆の道具の修理など補佐を行う者。
そうやって小さな村が出来て、そこから更に先へと進んで拠点を建てて、また先へと進んで。
そうやってダンジョンという未知を開拓していくのだ。
そしてダンジョンの一番底につけば、今度はこちらの世界が待っている。
今俺が、たった一つの拠点を中心に冒険をしているのと違って、あちこちに村が出来て、その村の間を探索者や交易用の馬車が行き交ったりして。
そんな世界こそ、まさに俺が望んでいるものだ。
そういう場所でこそ、冒険をしてたまに村に立ち寄って。
そんな生活をしてみたい。
「ふふっ」
:どうした急に
:思い出し笑いか?
:めっちゃいい笑顔で笑うやん
:なんか良いこと思いついたんかね
:それより他の質問も答えてくれー
中世的な、現代社会より穏やかで、されど人の社会が自然の中に存在する世界を想像して少しばかり笑ってしまった。
それが視聴者たちには奇妙な思い出し笑いに見えてしまったらしい。
まあ実際いきなり笑ったことに間違いはない。
「いや、つい思い浮かべたら、すごく楽しそうでな。いつか、この今俺がいる世界にも探索者が来て、拠点を作ってあちこちに村を作って、そこで市場が開かれたりそこから旅立っていくやつがいたり。逆に狩りから帰ってきたやつが、大物を皆に自慢したり。そういう光景を想像して笑ってしまった」
いつか、俺が生きているうちに、そして元気でいるうちに。
そんな光景を見ることが出来たなら、俺はきっと大満足だろう、
多くの冒険、多くの知らない景色もそうだが、そんな人間の小さな営みを見てみたいと思ってしまうのが俺なのだ。
「他の質問もじゃあ答えるか」
:アーカイブに無かった武器の解説!
:俺はレベルで
:まじか。じゃあ俺はスキルのうち一番クラスが高いやつのランクで
:便利な魔法具とか使ってるのがあれば
:実際トップ層の攻略組どう思う?
:どうやってそんな強くなったのか
:地上に戻らないらしいけど、大事な人とかいないの?
おお、やはり聞きたいことはたくさんあるようで質問がどんどん集まってくる。
「えーと、アーカイブに無かった武器はめんどくさいからまた今度まとめてやる! で俺のレベルか。レベルは今2358だね」
:ン?
:なにか異次元の数字が聞こえた気がするな
:あれトップ層でも60とかそんなんじゃなかった?
:むしろ上限100じゃないのか
:取り敢えずギャグとして受け取っておくわ。
やっぱりあんまり信用されてないな
「いやいや、深層の更に下に100層ぐらいあるんだぞ? むしろそこを突破するのにレベル100ぐらいじゃあ足りないだろ」
ちなみにダンジョンにおけるレベルは、素の能力の上昇に直結するので、レベル1のマッチョな男より、レベル30の女性の方が力があったりする。
ただ、あくまで倍率なだけで素体の力の影響が大きいので、同じレベルならばより元から鍛えている方が力が強くなる。
他にも出血などに対する耐性などが、レベルが上がるほどに高まるようになっているようで、レベルが高い人間の方が同等の大怪我でも死ににくかったりもするらしい。
「そんでスキルな。スキルで一番クラスが高いのは『魔力操作』の英雄級がSS+まで成長してる」
:もう疑う気にもならんけど、スキルってそんな成長するのか
:EとかFで色々言ってる俺達はうごごごご……
:トップギルドでもCとかだろ。SS+って一体どういうレベルなんだよ
「こればっかりはいかに修羅場を超えたからだから、レベルと同じで俺が高いのは当たり前と言えば当たり前よ。それで便利な道具と言えばこれだな」
そう言って、武器を生み出すのとは反対側につけているブレスレットを示す。
「これ、実はマジックバッグと同じ機能になってて、ものを入れたり取り出したり出来るんだよ。これ自体もただのブレスレットでかさばらないからめっちゃ便利だし、容量もめちゃくちゃでかい」
このブレスレットはかなり深い層でボス戦後の宝箱から発見したのだが、本当に重宝している。
:ブレスレット型のマジックバッグとかあるんか
:深層探索に夢が広がるなあ
:早くそれが見つかるところまで行きたいわ
:マジックバッグもそうだけど物流に革命が起こるよなこういうの
「で、トップ層の攻略組はもう普通に頑張ってくれ、としか思わんな。後はできるだけ早く、安全地帯に拠点を作って、俺が遊びに行けるような状態になってほしいな、とも思うし、俺においついてこっちの世界に拠点作ってほしいとも思う。まあ要するに頑張れってことで」
:などと無理難題を言っています
:あとどれだけかかると……
:100層は深すぎるんだよなあ
:まあ当面無理だろ
:そういうなら手伝うか自分で護衛して連れていけば良いのに
「それはしないって決めてるからな。で強くなった方法については……まあまた今度。ちょっとあれな方法だし」
:あれ?
:もしかして人を○すとか?
:おい
:迷惑かけるような方法じゃないよな?
ああ、そういう言い方になってしまっていたか。
だが流石にそうではない。
人を害するような方法ではないのは断言できる。
「全然そんな人には迷惑はかけてないから。で、最後に大事な人、か。そりゃもちろんいるけど、会わなくても互いに大事に思ってるのはわかってるからなあ。そんな頻繁に会わなくても大丈夫。どうせこの配信もみてくれてるだろうし」
はい、そんなわけで今日の配信は終わり! と勢いよく言って配信を切る。
ちょっと質問に答えるつもりが予想以上に時間がかかってしまった。
いつもより夕飯の時間が遅くなってしまう。
「悪いなロボ、今から作るから」
『バウッ』
ロボに急かされながら、俺は夕飯作りに取り掛かった。
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