上 下
21 / 21

第20話 大型ギルド施設

しおりを挟む
 数日探索をしてお金も出来たところで、俺は隣の市の大きなギルドへと出かけた。
 貯金と合わせてそれなりのお金も出来たし、実際に武器がどの程度の値段がするかを確認するためだ。

「でっか……」

 いつも行っているところとは違って、ギルドの隣に大きめの立体駐車場が設置してあったので、そこに車を止めて歩いて移動する。
 ギルドの前には医療施設やいくつもの食堂、レストラン、後は初めて見るが、ギルド外のアイテム買取ショップなんかも存在している。

 そのどれもが、ここのギルドの規模を示していた。

 地方に存在する冒険者が一挙に集う大型ギルド。
 流石に東京や大阪の中心となるギルドよりは規模は小さいが、それ以外であれば都会のギルドと比較しても負けることはない。

 それがここD市のギルドだ。
 ネットで調べたところここは完全にギルドを中心として発展した区画らしく、周辺の多数の建築物も相まっていきなり都会に紛れ込んだような気分になる。
 
 まあ実際は、ギルドを中心とした街づくりに際して、ギルド及び冒険者が利用するための施設と市民の住環境となる施設を完全に分けるような街づくりが行われたからなんだけど。
 この一帯だけ巨大なテーマパークになっているようなものだ。
 街中にはあるけど街からは切り離された場所がこのギルド及びその周辺の施設なのである。
 
 平日の昼間から結構ある人の波に乗って俺もギルドの正面から中に入る。
 
 1階部分はロビーではなく食事も出来るカフェスペースが広がっている。
 もちろん量は冒険者基準。
 
 加えてここのカフェでは、冒険者のパーティーメンバー募集が出来るらしい。
 説明を読む限りでは、専用のアプリに登録してパーティー、あるいは個人がそれぞれに募集をかけるようだ。
 パーティーは欲しい人材を求め、個人は自分の能力を提示することでパーティーからの声かけを待つ。

 パーティーも個人も自分たちの情報を提示して待つと同時に、提示された情報を吟味して信頼に足る味方を探す。
 今日一日メンバーがかけているので臨時のメンバーに加えたいという依頼もあれば、長期的に組むことを考えての募集もある。
 そこはそれぞれだ。 

 他にも結構色々ルールがあるらしいので、後で時間が出来たらアプリをインストールして調べてみようと思う。
 この仕組みについてはここだけでなく大きなギルドには大体あるようなので、いずれ使う機会もあるだろう。

 2階に上がるとロビーがあった。
 ここのギルドは、まあ予想していたが人が相当に多いようで、6ある受付全部に人がずらっと並んでいる。
 1人がステータスカードを受け取って奥のエリアに入っていったかと思えば、次の奴は武器と一緒にアイテムを提出する。

 俺は自分のところの過疎ったギルドしか知らないが、他所でも受付は全部一括して受けるような形になってるんだな。
 アイテム売却用の窓口とステータスカード関連の手続きわけた方が良い気がしないでもないが、何か理由があるんだろう。

 俺も一番人が少なかった列の後ろに並び、周りを見ながら順番が来るのを待つ。
 数分待っているとやがて俺の順番が回ってきた。

「おはようございます。他所のギルドから武器を買いに来たんですけど、手続きってどんな感じですか?」
「おはようございます。武器の購入となると、ショップエリアへの立ち入りですね? 少々お待ちください」

 いつもは坂井さんと藤澤さんの方から声をかけてくれるので、近づいた俺から話しかけたことに若干の違和感。
 でも普通に答えてはくれたし、周りを見ても親しげに会話をしているところもあるので、よく言われる都会は冷たいとかそういうことも無さそうだ。

「こちら立ち入り許可証になります。今日一日利用出来ますので紛失しないようにしてください」
「ありがとうございます」

 特にこれと言って会話もなく、ステータスカードを提示して許可証を受け取った。 

 館内マップによるとショップは3階部分にあるらしい。
 ショップ自体は一般人でも入ることが出来るが、その中で冒険者専用エリアと一般のエリアが別れているのがこうしたショップの通常らしい。
 
 というのも、武器なんかは安全を考えて一般人に販売できないが、フロンティア産の素材出できた衣服だったり薬草などの特に問題のないアイテムは一般人でも制限がかかっていないのだ。
 だからギルド内のショップでも、一般人を対象とした部分があるというわけである。

「広いなー」

 ショップ部分が広い。
 もうとにかく広い。
 
 いやむしろあっちが狭いのか。
 いつも行ってるギルドのショップがコンビニよりも狭い個人商店ぐらいの広さだとしたら、こっちは大きくはないがスーパー程度の広さは余裕である。
 棚も空きスペースはほとんどくな、色んなアイテム類がズラッと並んでいる。
 
 様々なタイプの鎧や衣服類、シャツやズボンからグローブや靴下、パンツまで一通りのものがある。
 他にはウエストポーチやリュックサックなどの備品も販売している。

 ポーションの類なんかも、頑丈なショーケースに陳列された状態ではあるが販売されているようだ。
 あれ一個数十万とかする希少品だって聞いたんだけどな。
 まあマジックバッグよりはまだ安いか。あっちはキロ10万だからものによっちゃあ億とか行くらしいし。
 それぐらいになってくると、定価販売よりもオークションを通した販売の方が値段がつくらしい。

 ショップの店員さんに許可証を提示して、武器などを並べている方のエリアに入れてもらう。
 武器類を見かけないと思ったが、武器はこっちのエリアに並んでいた。
 まあ一般人には見せられないか。

 一般のエリアの方も気になるが、取り敢えずこっちで武器を一通り見て回る。
 
「高いなー、やっぱ最低数十万がラインか……?」

 1人で店内を見て回る。
 途中で高そうな服を来た人がギルド職員らしき人から説明を受けているのを見かけた。
 あれが多分、ランクの高い冒険者につくというコンシェルジュみたいなものだろう。
 ショップ店員さんとは違う制服を着ているし。

 ネット掲示板を見ていたときにちらっとだけ見た知識だが、ランクの高い冒険者はギルドにとっても国にとっても有用な存在なので、探索をしているだけで補助金がおりたり、ギルド職員による細かいサポートが受けられたりするらしい。
 まあ今の俺には全く関係のない話である。

「そこまで行くともはやVIPみたいなもんだよな……」

 実際VIPか。
 凄腕の冒険者なら数千万は稼ぐし、トップクラスになるとドロップアイテム運にも左右されるが億単位になる。
 流石に実業家や企業の社長ほどの爆発的な稼ぎはないが、高収入な職業として認知される程度には冒険者は稼ぐのだ。

 俺も冒険に差し支えない程度には稼ぎたいものである。

「もうちょっと貯めてから来るべきだったかな……」

 そんなことを考えながら歩いていると、ショップの一角に密かに探していたものを見つけた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

朝起きたら、ギルドが崩壊してたんですけど?――捨てられギルドの再建物語

六倍酢
ファンタジー
ある朝、ギルドが崩壊していた。 ギルド戦での敗北から3日、アドラーの所属するギルドは崩壊した。 ごたごたの中で団長に就任したアドラーは、ギルドの再建を団の守り神から頼まれる。 団長になったアドラーは自分の力に気付く。 彼のスキルの本質は『指揮下の者だけ能力を倍増させる』ものだった。 守り神の猫娘、居場所のない混血エルフ、引きこもりの魔女、生まれたての竜姫、加勢するかつての仲間。 変わり者ばかりが集まるギルドは、何時しか大陸最強の戦闘集団になる。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

ブラフマン~疑似転生~

臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。 しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。 あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。 死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。  二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。  一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。  漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。  彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。  ――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。 意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。 「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。 ~魔王の近況~ 〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。  幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。  ——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...