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ギャル子と日常
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いつの間にか、小町と時子の周囲も賑やかになった。
昼食時の席には小町の幼馴染み、和花の他に新たに友理が加わる。今まではパソコン部の部室でぼっち飯だったらしい。
「お姉様、デザート、いかがですか?」
お弁当を食べ終わった所で友理がタッパーに入ったリンゴを差し出す。綺麗なウサギさんにカットされていた。
「これはどうも」
小町はリンゴに刺さった楊枝を摘まむ。
「みなさんも、どうぞ」
「「いただきます」」
時子と和花もリンゴに手を伸ばす。友理はニコニコしながら小町を見つめていた。
ずっと暗い顔をしていた友理はすっかり明るくなり、学校ではずっと小町にべったりだった。お姉様、お姉様と後をついて回っている。
「ところで結城さん、お姉様呼ばわりはやめて欲しいんですが……私達同い年なんですし……」
「嫌、です」
何度か呼び名を変えてもらおうとした小町だったが、友理は頑として譲らない。意外と頑固であった。
「ずいぶん懐かれたわねぇ」
「小町はヒーローだからね」
和花の言葉に時子が応じる。
そんな会話をしている所に食堂から帰ってきたヤンキー風少女・早知と、眼帯に包帯という中二病丸出しの渚が加わる。
「お、リンゴじゃねーか。もーらいっ」
「こら貴様っ、何を勝手に摘まんでいる」
と、早知の手を渚が掴む。
「別にいいよな? ユッキー」
「はい。中西さんも、どうぞ」
「クッ、ならば頂こうではないか」
そう言って渚もリンゴを摘まんだ。
この二人、何かといがみ合っているのだが、意外と馬が合うようで今では二人で食堂に連れ立っている。
そしていつものごとく皆でお喋りに興じるのだった。
放課後、小町と時子、そして新たに文芸部部員となった友理は部室に向かう。そして何故か渚も一緒についてくる。
そろそろ文化祭が近付いていた。部員の皆は文化祭で販売する文集の制作に取りかかっている。
小町はパソコンでお気に入り作家のレビューを綴り、時子は編集者として皆の文章をチェックする。友理はDTPソフトで文集のデザインを作成中だ。
そして渚は馬本と激論を交わしつつ、次回作の構想に協力するのであった。最近では自分でも小説を書き始めているらしい。その様子を馬本に片思い中の香織が悔しげな目で見つめている。
「中西さん、もういっそのこと文芸部に入ったらどうですか?」
「フッ、我は孤高の存在なのだ」
小町の言葉に渚は意味不明な返しをする。
部活が終われば校門で生徒会の仕事を片付けた和花と合流し、小町たちはファミレスへと繰り出す。
「いらっしゃいませ~って、またお前らか」
小町たちを迎えるのはここでバイトをしている早知である。
「さっちゃん、スマイルですよ」
「さっちゃん言うな。このメガネ」
「お店の売り上げに協力しているんですよ」
「別に売り上げが伸びたってバイト代は上がらねーんだが……それにお前らほとんどドリンクしか頼まねーじゃねーか」
「塵も積もればなんとやらです」
「はぁ……とにかく五名様ご案内いたします」
そして小町達はドリンクを飲みながらまたたわいのないお喋りをする。
これが最近の小町と時子の日常であった。
この友人と過ごす何でもない時間がいかに貴重なものか、大人になれば懐かしく振り返ることだろう。
小町と時子が探す幸せの青い鳥は、すでにここに舞い降りているのかもしれない。
昼食時の席には小町の幼馴染み、和花の他に新たに友理が加わる。今まではパソコン部の部室でぼっち飯だったらしい。
「お姉様、デザート、いかがですか?」
お弁当を食べ終わった所で友理がタッパーに入ったリンゴを差し出す。綺麗なウサギさんにカットされていた。
「これはどうも」
小町はリンゴに刺さった楊枝を摘まむ。
「みなさんも、どうぞ」
「「いただきます」」
時子と和花もリンゴに手を伸ばす。友理はニコニコしながら小町を見つめていた。
ずっと暗い顔をしていた友理はすっかり明るくなり、学校ではずっと小町にべったりだった。お姉様、お姉様と後をついて回っている。
「ところで結城さん、お姉様呼ばわりはやめて欲しいんですが……私達同い年なんですし……」
「嫌、です」
何度か呼び名を変えてもらおうとした小町だったが、友理は頑として譲らない。意外と頑固であった。
「ずいぶん懐かれたわねぇ」
「小町はヒーローだからね」
和花の言葉に時子が応じる。
そんな会話をしている所に食堂から帰ってきたヤンキー風少女・早知と、眼帯に包帯という中二病丸出しの渚が加わる。
「お、リンゴじゃねーか。もーらいっ」
「こら貴様っ、何を勝手に摘まんでいる」
と、早知の手を渚が掴む。
「別にいいよな? ユッキー」
「はい。中西さんも、どうぞ」
「クッ、ならば頂こうではないか」
そう言って渚もリンゴを摘まんだ。
この二人、何かといがみ合っているのだが、意外と馬が合うようで今では二人で食堂に連れ立っている。
そしていつものごとく皆でお喋りに興じるのだった。
放課後、小町と時子、そして新たに文芸部部員となった友理は部室に向かう。そして何故か渚も一緒についてくる。
そろそろ文化祭が近付いていた。部員の皆は文化祭で販売する文集の制作に取りかかっている。
小町はパソコンでお気に入り作家のレビューを綴り、時子は編集者として皆の文章をチェックする。友理はDTPソフトで文集のデザインを作成中だ。
そして渚は馬本と激論を交わしつつ、次回作の構想に協力するのであった。最近では自分でも小説を書き始めているらしい。その様子を馬本に片思い中の香織が悔しげな目で見つめている。
「中西さん、もういっそのこと文芸部に入ったらどうですか?」
「フッ、我は孤高の存在なのだ」
小町の言葉に渚は意味不明な返しをする。
部活が終われば校門で生徒会の仕事を片付けた和花と合流し、小町たちはファミレスへと繰り出す。
「いらっしゃいませ~って、またお前らか」
小町たちを迎えるのはここでバイトをしている早知である。
「さっちゃん、スマイルですよ」
「さっちゃん言うな。このメガネ」
「お店の売り上げに協力しているんですよ」
「別に売り上げが伸びたってバイト代は上がらねーんだが……それにお前らほとんどドリンクしか頼まねーじゃねーか」
「塵も積もればなんとやらです」
「はぁ……とにかく五名様ご案内いたします」
そして小町達はドリンクを飲みながらまたたわいのないお喋りをする。
これが最近の小町と時子の日常であった。
この友人と過ごす何でもない時間がいかに貴重なものか、大人になれば懐かしく振り返ることだろう。
小町と時子が探す幸せの青い鳥は、すでにここに舞い降りているのかもしれない。
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