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ゴブリンの巣穴

第44話 待ち伏せ A

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 ────日が落ちてきた。
 
 この辺りで、キャンプをするか……。

 背負っていたテントを、地面に降ろす。


 その隙を狙い────
 僕に向かって、矢が飛んできた。



 ────カァン!!

 僕は咄嗟に、その攻撃を盾で防いでいた。

 矢が盾に当たり、甲高い音が響く……。


 その時にはすでに、ダークショットの弾は完成している。


 ドウッ!!!


 僕はダークショットで、森の中から僕を狙ったモンスターを狙撃した。



 モンスターは、一撃で死亡────

 攻撃が命中した頭が、吹き飛んでいる。



 そいつの背丈は僕よりも小さく、緑色の肌をして、粗末な衣服を身に付けていた。

 ファンタジー世界で定番の魔物『ゴブリン』だ。

 ゴブリンの死体は、徐々に崩れて、塵になって消えた。

 
 そこに、弓が落ちている。

 僕はそれをアイテムボックスに回収し、テントを広げて眠りに就いた。


 ログアウトし、現実世界で一日を過ごし、再びログインする。

 



 テントの中で目を覚ました僕は、ステータスをチェックしHPとMPが全快していることを確かめる。

 それから、弓を装備して外に出た。

 昨日、ゴブリンがドロップして、僕が回収した装備品だ。

 このゲームでナイフと短剣は使ったことがあるが、弓は初めてだ。
 

 ちょっと試しに使ってみよう。

 僕の現在の『膂力』は、47ある。
 これだけあれば、弓の装備も可能だ。
 

 僕は森の木を狙い、弓を放つ────


 ヒュッ……  ドッ!


 ヒュッ……  ドッ! 



「おおっ!」

 良い感じに、木に当たった。

 ────ちょっと、気持ちいい。
 


 完璧に狙い通りではないが、木から外れることもない。

 ここから的の木までは、30メートルくらいだろうか?

 僕のステータスの『命中』は、55だ。

 高いのか低いのか、よく分からない数字だった。

 けど、まあ────
 この距離でこの命中度なら、実戦で使えるかもしれない。
 
 
「────でも、木と違って敵は動き回るからなぁ」

 動く敵に当てることが、出来るだろうか……?

 ……自信は無い。

 
 それに、もし僕に仲間が出来た場合の事を考えると弓はあまり使いたくはない。

 きっと、パーティメンバーに当ててしまうかも、とか心配しながら弓を射ることになる。

 そうなると、緊張感が全然違ってくる……。





 
「戦闘で弓を使うのは、どうだろうな────?」

 選択肢から除外はしないが、今すぐ採用は出来ない……かな。

 ゴブリンのドロップした弓の矢は、20本ある。

 使い切ると武器屋で矢を買い足して、補充しなければならない。

 
 ────ダークショットを使い慣れた僕にとって、その辺も不便なんだよな。






「────あっ! しまった」

 考え事をしながら弓を射っていると、狙いを大きく外してしまった。

 ヒュッ!

 ────ズブっ!!

 

「グギャっ!!」


 ん……?

 何かに当たったぞ。


「────痛ってぇ!!!!!!!!!!!!」

「ちくしょう! あの野郎……気付いてやがったのか!!」




 ……は?

 ────えっ、ええっ!?

 僕の放った弓矢は的にしていた木を外れて、そのまま森の奥に吸い込まれて行き……。

 どうやら、森の中にいた人に、刺さってしまったようだ。


 僕は咄嗟に『ヤバい、どうしよう。……謝らなきゃ!』と思った。そして、謝罪を口にしかけたが……何か変だと思い、止まる。

 『あの野郎……気付いてやがったのか!!』というセリフ────

 そして、森の中に二人の男が潜んでいたという、不可解な状況……。


 僕は一旦、様子を見ることにした。


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