【ラスト・パラダイス】 一人ぼっちのダンジョン攻略 少年は命がけのゲームを、孤独に戦いぬく

コボルトの谷

第３０話 情報収集 A

　僕は冒険者ギルドの二階にある情報屋を訪ねた。

「えっと、まず聞きたいのは、コボルトの谷のボスの出現条件です。────いくらになりますか？」

　ワールドニュースを読んで、プレイヤーによるNPCの殺人事件を知ったが……。
　まずは予定通りに、取得しようと思っていた情報から購入する。


「ボスの出現条件か……金貨１０枚になる。────聞くか？」

「……お願いします」

　僕は値段を聞き、高い！　
　────と思った。

　だが、出現条件を知らずに闇雲にプレイした場合の手間を考えると、妥当な値段かなとも思う。

　それに、それだけのお金を払っても、聞いておきたい情報だ。



「コボルトの谷のボスは、────勇者候補が谷に降りてから、５０キロメートル探索すると出現するそうだ。……谷から出たら、最初からやり直しになる。────気を付けな」


　────五十キロメートルか、結構長いな。

　一時間に歩きで５キロ進んでも、１０時間はかかる。
　ダンジョン内では、定期的に戦闘しながら移動することになるから、実際はもっとかかるだろう。
　

　探索に１５時間かかるとして、テントを使って一泊する必要はある。

　逆に言えば、一泊で良いとも言える。
　ソロでダンジョンに挑む、僕にとっては有り難い。
　

　そして────

　スライムの森は一度入ると出られない仕様だったが、コボルトの谷はどうやら違うらしい。

　一度入ると出られない仕様なら、情報屋は『谷から出たら』とは言わない。


　コボルトの谷は、恐らく出入り自由なのだろう。

　……その辺は、お金を出して聞かなくてもいいか。


　僕は情報屋に、金貨１０枚を支払って、次の質問に移る。






「僕以外のプレイヤー、えっと、勇者候補のダンジョン攻略は、どの程度進んでいますか？」

　これも、聞いておきたい情報だ。
　僕の目標は、最速で三つの初級ダンジョンをクリアすることだ。


　他のプレイヤーの進み具合は、参考までに知っておきたい。
　この先のダンジョン攻略を慎重に行くか、無理をするかの判断材料にする。


「…………他の勇者候補の情報か────そいつはちょっとばかし、高くなるぞ。金貨２５枚だ」


　……高すぎるだろ。
　と思ったが────

　僕はお金を払って、情報を聞いた。


　これまで『コボルトの谷』に降りたプレイヤーの冒険者チームは１１組ある。
　────１１組以外は、まだ谷に辿り着けていない。


　この村に滞在する勇者候補は、僕を含めて２２名。
　緊急離脱を使用済みの者は、１８名。

　宿代が払えず、広場で野宿をしている者が６名。
　
　死亡した者が１名。

　谷に降りたチームの冒険者はいずれも、ボスまで辿り着けていない。　



　情報屋から聞いた話をまとめると、こんな感じだ。

　
　……死者も出ているのか。　

　…………。


　死んだプレイヤーは、どうなるのだろう？

　ペナルティは────？


　所持金が半分とか？
　ステータスに暫く、デバフがかかるとか？
　ゲームデータがリセットされて、新規で最初からやり直しとか……？

　聞いてみよう。